私は40年近く前に、東京の墨田川高校から富山の魚津高校へ移り、周りの反応の凄まじさに戸惑った。
東京からの「転校生」というだけで、これほどまでに注目されるとは・・・。
高校2年の夏休み明けだ。
魚津高校はそれなりの進学校だから、進路がおおよそ固まる頃合いである。
大半の生徒は大学に進学し、しかもその半数は東京に出たのではないか。

私は、神に誓う。
「東京生まれ」と言ったこともなければ、「東京育ち」と言ったこともない。
東京からの転校生にすぎない。
ところが、周りに強固な“思い入れ”があり、それを口にすることがはばかられる雰囲気が漂っていた。
昔は、田舎はどこも同じだったろう。

余談だが、徳島の城北高校から東京の墨田川高校へ移ってまもなく、クラスメートの女の子2人が大学見学を兼ねて上京し、自宅に訪ねてきた。
私が数か月で転校した後の話である。
東京は、日本中の圧倒的な憧れの的だった。

話を、富山の魚津高校に戻す。
約40年を経たいまでも、忘れられない2つの出来事がある。
一番の友人と雑談していたとき、「なまっているぞ」と叱られた。
彼には、それがどうしても許せなかった。
東京人らしくあれということだったと思う。
彼は現役で「東京大学」に合格した。
入試が中止になった翌年なので、2年分の難関である。

また、私が明治大学に合格し、上京が近づいた頃、ある友人が「帰省ですね」と言ってきた。
なるほど、そういう受け止め方になるのか。

2人の表情が脳裏に焼き付いている。
当時、地方の若者にとり、「東京」は特別な響きを持つキーワードだった。

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