私は、体力が充実していた40代半ばから50代初めにかけ、公開セミナーや企業研修の講師として、全国を奔走していた。
当時は、年間で 200回に迫る。移動日を含めると、気分としては「毎日」である。旅がらす。
しかも丸1日の講義であり、しゃべり詰めというより、私の場合は怒鳴り詰めであった。かつては「鬼の講師」だったので。2時間の講演はまずない。
1カ月に28日か29日という非常事態が、2〜3回あったと記憶している。
疲労の限界を超えて“仮死状態”になる。
余談ながら、この頃に信頼を寄せる方から「創生水」を教えられ、私はおおいに助けられた。
そうした事情で、私がこだわらざるをえない商売道具がバッグである。それも2タイプが必要になる。
第1は、スーツやワイシャツ、ネクタイ、下着など、おもに衣類を収める「キャリーバッグ」。
出張期間は2〜3日、4〜5日、1週間ほど。
私は、都心でのセミナーや研修でも、会場近くの都市ホテルにかならず前泊する。
なお、1週間を超える場合には、移動先でキャリーバッグごと交換してしまう。
第2は、教材や資料、名刺、筆記具、クスリなど、おもに講義関連物を収める「ビジネスバッグ」。
移動時は、キャリーバッグの取っ手に絡めて載せている。
つねに2タイプを組み合わせて用いる。
出張では、どうしても第1のほうが重要になる。まずはハード仕様。やがてソフト仕様。
いったいどれくらいのブランドや商品を試しただろう。
やはり実際に使ってみないと、適・不適は分からない。何かに歓喜・満足したら、何かに困惑・失望する、その繰り返し…。
私は結局5〜6年を経て、パラゴン社の「パスファインダー」にたどり着いた。長旅といえる。
講師は、不意の病気、当日の不調、会場の不備、事後の疲労などを想定し、通常の出張と比較にならないほど多様で細々としたものを用意している。
さらにノートパソコンも必須なので、重装備になる。これらの荷物を取り出しやすく、収め切らなければならない。
バッグの内側と外側に、大方の用途に応えうる「ポケット」を備えるパスファインダーは、突出して使い勝手がよい。こうした機能性に加え、耐久性も申し分がない。
表参道に直営店がある「トゥミ」に憧れがないわけでないが、私にマッチしない。あれは上質なスーツケースである。
将来、仕事の性格や内容が変われば、買うかもしれない。
いまウィキペディアで調べて分かったのだが、パスファインダーとは「開拓者」「先駆者」という意味らしく、それを使いこなす私は相当かっこいいのではなかろうか。口笛を吹いてみたい気分である。
私はセミナーや研修の移動の合間を縫い、積極的に営業活動も行っている。当然、パスファインダーがお供することになる。
そして、訪問先でしばしば間違われる。
「先生、海外出張ですか」。
…たかがバッグと言うなかれ。
それは職業講師の私にとり、プライドそのものだ。
明日はりそな総研と営業実践大学の公開セミナーがあるため、私は東京駅近くのホテルに宿泊する。
当然、パスファインダーのキャリーバッグを引きずっていく。
…ゴロゴロ、ゴロゴロ。

Copyright ©2007 by Sou Wada

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