3連休の初め。大型台風の影響か、あいにくの雨模様。周りは静かである。
さて、この3日間、反響の大きかったブログを再録したい。
きょうは、2007年6月11日(月)、12日(火)より。

                    ◆◆◆

日本のビジネスパーソンには、経営学者「ドラッカー」の信奉者が非常に多い。
ダイヤモンド社から出されたドラッカーの単行本や選書は、ベストセラーやロングセラーになっている。
学者の著作だから、読むには相当な理解力が必要だろう。売れやすい本とは思えない。
にもかかわらず、ダイヤモンド社の刊行分だけで4百万部を超えるとか…。
私は不勉強だから、1冊も読んでいない。
したがって、その思想・学説・人物に関して不明だ。
しかし、若い頃に、私の脳と心に深く刻まれたドラッカーの言葉がある。
いつ頃か、何の雑誌か、まるで記憶にない。うろ覚えなので、不正確極まりない。
「企業の内部にはコストしかない。プロフィットはすべて企業の外部にある」。
ドラッカーに無知の私が、一節のみ取りあげて言及するのは不適切かもしれない。
でも、今日に至るまで、この言葉を引きずりつづけている。
実際、私の仕事と人生を変えた、最大の“教え”である。
誤解がないように、説明を補足したい。
この言葉がきっかけとなり、自分なりの“気づき”を得たという意味である。
私はフリーランスのプランナーだったので、職場で上司や先輩などから“教わる”機会がなかった。
この言葉に照らして、自分の働き方や生き方を問い、考え、律し、定めていった。
したがって、自分の「解釈」が妥当だと主張しているわけではない。
さて、私がこの言葉から学んだこと―。
「自分は放っておけ。周りに尽くせ」。
自分に向かう時間を大幅に減らし、顧客や世間、周囲に向かう時間を大胆に増やす。
とくに自分や自社に関する“堂々巡り”の思考を断固排する。
仕事において、私は顧客の繁栄や幸福を案じ、それを追い求めて寝つかれなくなることがしばしばだ。
「得ることを考えるな。与えることを行え」。
私は、いわゆるライフプランやキャリアプランなどをつくったことがある。けれどまったくズレていた。
勉強でも仕事でも、自分が“得る”目標を定め、得る計画を立てていた。想像を絶するバカとはこれ。
そう、個人か企業か問わず、周りに“与える”目標を定め、与える計画を立てればよい。そしてひたすら“行う”。
どの道、人間社会では、得ようとして得られるはずもない。大多数が得ようとしているのだから…。
得ようとして得られるなら、私たちはとっくに豊かさと幸せをつかんでいる。
「商談はするな。相談に乗れ」。
私は、営業活動では「商談」を後回しにし、ボランティアやプレゼントを先行させている。
顧客の経営や業務のヒントとなる情報などの“おみやげ”を提供することから入る。
当然、会社案内や製品カタログ、商品パンフレットなどの販売ツールは持ち歩かない。
それにより、とかくギクシャクしがちな営業活動の導入部分がスムーズになる。
私の学びを1冊にまとめたものが『提案営業成功の極意』。ドラッカーからもらった本である。
「顧客が欲する商品を売るな。顧客に役立つ商品を売れ」。
私は、現役の営業担当者として、販売に興味がなく、役立ちにしか関心がない。
したがって、顧客の要望やニーズを拒むことがある。それにより、私が手にした“ごほうび”は重い。
私の学びをまとめたものが「和田創 営業格言 Weekly」。
…もう、際限がないので、列挙はやめる。
こうした気づきの結果の一つが、1995年2月から歯を食いしばってきた「営業実践大学」の開催と、その継続であったように思う。
私の憶測にすぎないが、この言葉は、頑張っているのに恵まれない職業人、頑張っているのに儲からない経営者に対する、ドラッカー流の皮肉たっぷりの忠告なのではないか。
「いい加減、目を覚ませ」。
何が凄いといって、先の短い言葉に包含された「真理」の大きさと深さ、つまり普遍性だ。
一般に、著名な学者や経営者などの名言は、すでに大勢に行き渡っている。
だから、それを知っていても、どうということはない。
しかし、それに学べたならば、仕事や人生が一変する。
私は、ドラッカーの“一節”と巡り合うことで、“百冊分”は学んだ気がしている。
膨大に授かった。「運命」が別物に…。
人は、平坦な道ばかり歩めるわけでない。
わが身を顧みて、幾度か浮き沈みを経験した。苦しいとき、さらにつらいときがあった。
働き方や生き方に揺れる私を支え、「迷い」を振り払う拠りどころとなったのが先の言葉である。
小銭を数えながら考えたことがある。
「かすみを食べて生きていけたら、どんなにいいだろう」。
だが、現実には、住む家、着る服、食べる物が必要になる。私はコストそのものだ。これはどうにもならない。
人は、周りによってしか救われない。
自分が苦しいとき、つらいときでさえ、顧客や世間、周囲の幸せと豊かさに尽くしていく気持ちを忘れない。
…それにしても、ドラッカーの教えは、がっかりするほど単純で明快である。だれも突けない核心を、ずばり突いているからだろう。
無限の知恵が込められており、それらは私たちの気づきをいまかいまかと待っているかのようだ…。
あやふやな記憶に基づいて書き進めてきて、ふと思った。
先の言葉がドラッカーでないとしたら、私は大バカである。
そのときは、どうか笑ってください。そして許してください。

                    ◆◆◆

以上、両日のブログをすっきりと整理した。
まもなく出す本に収録するつもり。

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