月曜日、グランドプリンスホテル赤坂1階ロビーのカフェラウンジで『月刊ビジネスサポート』の取材を受けた。
民間信用調査機関の東京商工リサーチが発行する中小企業経営者向けの月刊誌である。
テーマは「営業強化・再建」

私は思い出した。
十年以上前、渋谷の松濤1丁目に住んでいた頃はそれなりに取材が入った。
ところが、横浜の港北ニュータウンに越して来てからはぱったりと取材が途絶えた。
ほんとうに久し振り。
よくよく景気が悪いのだろう。

さて、多くの企業が極度の業績不振に陥っている。
そして、会社と社員を守り抜かなければならない社長は頭を抱え込んでいる。
この業績は乱暴だが、以下の数式で表せよう。
「業績=商品力(売りモノ)×営業力(売り方)」。
したがって、社長は業績不振から抜け出すため、この2つを高めるよう力を尽くすことになる。

ところが、いまや商品力はおおよそ横並びである。
私は先日、大手メーカーでの「提案営業研修(導入講座)」において、研究開発や技術を含む製造関係者へ質問を投げかけた。
「ライバル社と比較し、自社の商品力をどう評価するか」。
挙手による確認だが、意外な反応。
「強い」は0割。「横並び」は9割。「弱い」は1割。
ちなみに、同じ会社で別の日に営業関係者へ投げかけた質問の反応。
「強い」は0割。「横並び」は8割。「弱い」は2割。
それとあまり変わらない。
私は製造関係者の集まりなので、「強い」は2〜5割を予想していた。
何と正直な人たちだろう。

私は、大手企業の中興の祖を思い浮かべた。
当時、十余年に及ぶ業績低迷に苦しんでいたオーナー系の会社で、初代サラリーマン社長が誕生した。
創業一族から経営が離れた瞬間である。
新社長は早速、「商品本位制から商談本位制へ」とスローガンを掲げ、短期間で営業変革を成し遂げた。
それだけでない。全社改革へ導いた。
つくっている当事者が「商品は横並び」と認める以上、商談つまり営業方法による差別化を図っていくしかない。
その決意を、社長はスローガンという形で端的かつ明確に伝えたのだ。
全役員・全社員を巻き込んだ「提案営業研修」の実施である。
そのお手伝いをできたことが、の誇り。

確かに今日でも、苦労の末に画期的な製品や技術、サービスを生み出せることがある。
しかし、すぐにライバルが追随したり模倣したりする。
そうなると、競争優位は一瞬で消えてしまう。

私はいま中堅・準大手企業の社長を対象とした都心での「個別経営相談」に力を入れている。
崖っぷちに立たされた製造業のトップがこう漏らした。
「弊社は、製品はまあまあなのですが、営業が弱くて…」。
私は尋ねた。
「その製品をつくりあげるのにどれくらいの歳月がかかりましたか」。
「そうですね、十年、二十年…」。
「では、営業を強くするのに同じくらいの歳月がかかると考えてください」。
その途端、社長の顔が青ざめた。

簡単に営業を鍛えられると勘違いしている社長が多すぎる。
そんな魔法みたいな処方は残念ながらない。
最低限の期間は必要だ。
すでに述べたとおり、業績は商品力と営業力の掛け算である。
つまり、業績を決定づける両輪。
ゆえに、営業を強くするには、商品を強くするのと同じくらいの愛情、手間、カネをかけてほしい。
私は、数十年に及ぶ営業軽視のツケが回ってきたのだと思う。
世の中、すべて因果関係から成り立つ。

遠慮なく言えば、営業のイロハの「イ」も知らない社長だらけ。
知らないだけなら許せるが、間違った命令や指示を出している。
気の毒なのは、それに従い、地獄の苦労を舐めさせられる営業関係者…。
その挙げ句、責任を取らされる。
追い風が後押しする好況期ならやっていけても、逆風に立ち向かう不況期ではどうにもならない。
業績不振を乗り切る第一歩は、社長が営業の基本を正しく理解すること。
それが『月刊ビジネスサポート』の取材に対する私の答。
営業の考え方もやり方もこれまでとまったく逆にする。

余談―。
私は取材を受けていて、ふと思った。
下期入りしてから、経営がぎりぎりの企業が急増している。
「与信管理」の重要性が高まるはずだから、東京商工リサーチや帝国データバンクなどは売り上げが急伸しているのでなかろうか。

                       ◇

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