ゲスト2未曾有の経済危機をどう乗り切るか?
水曜日夜間、私が理事長を務める「NPO法人営業実践大学」で 第151回公開講座を行った。
ゲストの古波倉正嗣氏(ヒューマンキャピタル・イニシアティヴ代表)による「最適な打ち手を導く問題解決技法」
不況下にタイムリーな実践講座である。

私はとても興味深く拝聴した。
あっという間に時間が過ぎ、定刻をオーバー。
参加者の一人として問題解決に関する深い気づきを得ることができた。
また、研修講師として講義とワークショップの進め方に関するヒントを得ることができた。
心より感謝したい。

当日は時間がきわめて限られていたこともあるだろう。
受講風景2先生は例題用紙を配布すると説明もそこそこに、参加者へ演習に入るよう指示した。
そこには長らく地元で弁当屋を営む老夫婦の深い苦悩が綴られていた。
どう問題を解決するか、まずは各人で考え、次いで3〜4人一組のグループで話し合う。

与えられた時間はごくわずか。スピードを重視せざるをえない。
かならず締め切りに追われる、実際の仕事の感覚に近い。
したがって皆、真剣、必死。
人はぎりぎりの状態に追い詰められると、自分の抱える弱点が露呈しやすい。見えてくるのは、問題解決を阻害する心の曇りや偏り、そして思考の癖や枠…。
私たちはいつのまにか経験や慣行に囚われ、常識や固定観念に縛られている。
すなわち、昨日の奴隷。
なかなかよくできたワークショップである。

冒頭、問題解決の知識や手法、技術に関する講義がまったくなかったところが素晴らしい。
名刺交換1それを先に教えると、演習でとんでもない事態が起こる。
頭をまっさらにして真に有効な問題解決策を創造することが大事なのに、知識や手法、技術に拘束されてしまう。
もっとも愚か、まさに本末転倒。
だが、こうした点にきちんと気づいている指導者はきわめて少ない。
そもそも研修などで知識や手法、技術を教えたがる人は、大胆な問題解決の実績をほとんど残していないはず。

先生の講座の最大の狙いは、凝り固まった頭をもみほぐすこと。
それも参加者自身の“気づき”を通じて…。
脳の柔軟性を取り戻させるウォーミングアップなのだ。
これなくして、いいプランは思い浮かばない。

なお、この問題解決とは、広い意味の「ソリューション」にほかならない。
ゲスト1営業が行うそれは、自社の営業担当者の立場を離れ、顧客の購買・調達・仕入れコンサルタントの役割に徹することにより初めて可能となる。
私たちは顧客から大勢のなかの一業者と見なされるのでなく、信頼の置けるコンサルタントと認められなければ、満足のいく成績を残せない。

先生の講座に接し、私が再認識したこと。
顧客(老夫婦)に対する愛情がソリューション(コンサルティング)の出発点。
これが欠けているから、リアリティのある「イマジネーション」が沸かない。
そして、イマジネーションが欠けているから、ダイナミックな「クリエーション」が浮かばない。

残念ながら、当日の参加者に共通していたのは、老夫婦(顧客)に対する「愛情不足」。
当然、よい知恵など生まれない。
従来の意識や発想の延長線で、弁当の売り上げ回復をどう図るかというレベルに留まった。
受講風景3問題の本質的な解決に至らない。
ソリューションとしては落第!

愛情が希薄だから窮屈な仕事になりさがる。
これは「企画」なのだが、楽しみながら行うことを決して忘れてならない。
仕事をこなそうとすると、人は脳が萎縮するようにできている。
創造は不可能。

古波倉正嗣氏の講座は、問題解決のあり方、そして問題解決に携わる人(スタッフやコンサルタント)への“問題提起”なのである。
例えば、地場企業の再建や商店街など地方の活性化を考える際に役立つ。
名刺交換2その指導に当たる商工会や商工会議所の職員にもぜひ受講してもらいたいと思った。
また、研修漬けで頭も心もガチガチになった大手企業の社員を再生するのに効く。

先生はお若い。
すでに中小企業大学校や企業などで豊富な指導実績を持つ。
近い将来、社会人教育や経営指導で間違いなくブレイクする。あちこちの大学や大学院からお呼びがかかるだろう。
私はそのセンスと力量、なかでも気づきを促していく手腕に感服した。
非常にエキサイティングな講座だった。
皆さま、どうか「古波倉正嗣(こはくら・まさつぐ)」氏の名前を記憶に刻んでほしい。
日本と日本人が元気になるには、こうした人に活躍してもらわなくてはなるまい。

Copyright ©2008 by Sou Wada

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