月曜日、ケーキを4つ買った。
1つは、前の妻に供えるため。
命日なのだ。
わが人生0692学生時代まれに奮発し、二人で国電西荻窪駅そばの「こけし屋」に入った。
極貧の私にとり贅沢だ。
妻が飲んだコーヒーにびっくり。それが「ウィンナーコーヒー」だった。
妻はストレートコーヒーに、チーズ系やクリーム系のケーキを添えることもあった。
甘いものが苦手な私を前に、はにかみながら、しかしとてもおいしそうに食べた。
40年近く前の記憶がよみがえってきた。
ひょっとしたら私も2〜3回、ケーキ以外を食べたか。
サバランやタルト?
それとも妻に勧められ、妻のケーキをスプーンで一口か二口食べたか。

私は再婚してしばらくし、いまの妻に誕生日を尋ねた。
一度もお祝いをしていなかったことに気づいたからだ。
仕事に追われっ放しで、自分のバースデーを含め、そうしたことに至って無関心。
わが人生0693そして、妻の返事に飛び上がりそうになった。
前の妻が亡くなった日と同一。
このことを当時、母に話したらやはり非常に驚いていた。
いまだに不思議…。

3つは、妻のバースデーを祝うため。
会社だけでなく自宅でも仕事を行い、家事と合わせ、早朝から深夜まで働いている。
私と同様、年中無休に近い状態だが、私より頑張る。
ささやかな感謝の気持ちだ。
自慢するほどのことでない。

                       ◇

前の妻は、三鷹市の杏林大学医学部付属病院で息を引き取った。
9月14日に主治医から「3カ月の命」と宣告され、ちょうど3カ月後だった。
わが人生0694妻は若く、3人の子どもは幼かった。
受け止める力はないと考え、私は事実を伝えなかった。
妻の父も同じ考えだった。

病状は急速に悪化していった。
私は当然、がんが治るという前提で接した。
が、頭のいい妻は察していたと思う。

妻は、末期の痛みを和らげるため、かなりの量のモルヒネを投与されており、頭はボーっとしていたはず。
それでも私が子どもを連れずに一人で尋ねると、快活に話をした。
わが人生0695私に言い残したかったのかもしれない。
この頃はプランナーから著者や講師といった“先生商売”への転換を目指しはじめた時期と重なり、精神的にも肉体的にも経済的にも次第に苦しくなっていた。

妻が繰り返したのは、「お父さんは、持っているエネルギーが凄いのよ」。
自分ではあまり意識していなかったが、私のパワーを幾度も指摘した。
二人部屋のときには、隣の年配の女性にもそう語っていたらしい。

わが人生0696「お父さんは凄い、凄い、凄い…」。
亡くなる直前まで、自分のことは置き、私を褒めちぎった。

その私は還暦が迫り、衰えが目立つ。
エネルギーもしぼんでしまった。
これまでを振り返り、二人の妻の大きな励ましに支えられ、何とかやってこられた。

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