私は、クライアントにおける営業力の強化を実現すべく努力してきた。
が、耳慣れた「営業力強化」という言葉は非常にあいまいだ。
その意味をはっきりさせなくては、単なる「労働強化」で終わる。

私がこだわってきたのは、「営業生産性」の向上である。
それを可能にする営業とはどのようなものかを指導してきた。
なぜなら、それなしに高収益体質への転換を果たせないと信じるからだ。

そして、もっとも有効な手法として、私が根づかせてきたのが「提案営業」である。
研修では、受講者が現実の営業活動と絡めながら「ソリューション」を身につける。
勉強でなく仕事という位置づけだ。
有力顧客へ大型案件を仕掛けて刈り取る。

きわめて乱暴な数式だが、「業績=商談単価×商談件数×商談成功率」と表せよう。
この3要素のうち、商談件数は労働時間に比例する。
私が重視するのは、商談単価と商談成功率である。
それは営業部門における生産性の追求にほかならない。

しかし、ほとんどの企業では「営業生産性」という概念が見向きもされない。
とりわけメーカーは工場については生産性向上の号令をかけるが、営業についてはその執念を燃やすことがない。

また、「業績=製品力×営業力」という数式も成り立とう。
売りモノと売り方の掛け算だ。
生産と販売は経営の両輪なのに、社長が「営業」に愛情や関心を持っていない。
例えば、提案営業が「経済合理性」に立脚することさえ知らない。
永久に勘頼み・経験頼りから抜け出せない道理である。

いまや提案営業の導入を通じて営業生産性の向上を図ることは、経営上の重要課題だ。
それを達成した暁には会社の繁栄と社員の幸福が実現する。

さらに、社会の変化も営業生産性の向上を強く求めている。
共働きが普通となり、家事を分担しない夫は許されない。
若い世代では当番で夕食をつくったり、子どもを風呂に入れたりする。
社員が仕事と家庭の両立を図れる職場づくりが急務である。

ところで、長時間労働といえば、営業の代名詞のようになっている。
形ばかりの「営業手当」をあてがわれ、引き換えに夜遅くまで縛られる。

管理者、とくに拠点長は長く働く部下を可愛がりやすい。
それだけで「あいつは頑張っている」と錯覚しがちだ。
こうした上司が、営業が帰りにくい雰囲気をつくる。
それで業績が思わしくなければ自分の信頼は失墜し、部下の士気は低下するのに…。

実は「ワーク・ライフ・バランス」への真剣な取り組みが、営業生産性の劇的な向上をもたらす。
ならば、流動性の高い営業部門において優秀な人材の確保にもつながろう。
長時間で低賃金の労働環境を改めずして、勝ち残りへの好循環は生まれない。

なお、管理者は会議で収益の向上について話し合う場合に労働時間の短縮とセットにせよ。
でなくては、締め括りはいつも同じになる。
「頑張ろうっ!」。
不毛の努力を強いるな。
「営業生産性を高めずに収益を伸ばそうとしたら、労働時間を長くするしかない」との共通認識を持つことが大事。

私がさまざまな企業に伺い、目の当たりにしてきたのは、営業パーソンの涙ぐましい頑張りである。
だが、グラフを見よ。
頑張った結果がこのザマだ。
「頑張るのでなく、変わろう」。

私が九州生産性大学で指導する「提案営業マネージャー養成コース」では、会社の繁栄のために社員の幸福を犠牲にすることはしない。
どちらも貪欲に叶えるのだ。
トップの求心力と社員の我慢により業績を支える経営はもはや限界に達した。

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