バンクーバー冬季五輪(オリンピック)第7日。
フィギュアスケート男子フリーは、ショートプログラム(SP)上位24選手が出場して行われた。
そして、日本の3選手はそれぞれが頑張った。

SP3位の高橋大輔は22番目(第4グループ)に登場。
ちなみに、2006年トリノ五輪金メダルの荒川静香は21番目。
SP3位だった。
滑走順としてはとてもよい。
2002年ソルトレイクシティ五輪4位の本田武史は、高橋大輔は今季一番の状態と太鼓判を押していた。
しかし、直前の公式練習で4回転ジャンプを2回とも失敗し、私は嫌な予感…。
それでも高橋大輔は4回転にこだわった。
演技構成点はエフゲニー・プルシェンコを上回るはずで、それが成功するなら栄冠をつかめるからだ。
実際、2008年2月の4大陸選手権で4回転を決めた高橋大輔がマークしたフリーと総合の得点はいまだに破られていない。
3回転ジャンプに留めればメダルが確実なのに、今季未成功の大技に挑むのは賭けだった。
残念ながら不安は的中し、冒頭の4回転で大きく転倒。
直後のトリプルアクセルとダブルトーループの連続ジャンプ、トリプルループを決めて立て直した。
が、総じてジャンプに安定感を欠いた。
華麗で情熱的なステップとスピンもいつもほどの冴えが見られず、本来の力を出し切れなかった。
観客はスタンディングオベーションで渾身の演技を称えた。
SPは90.25点(自己ベスト)。
フリーは156.98点。
総合は247.23点。
2選手の滑走を残して2位。
次のアメリカのジョニー・ウィアが高橋大輔を下回り、この時点でメダルが確定した。
結局、3位で銅メダルを獲得した。
おめでとう!
競技後のインタビューでは、「涙は、安心感と嬉しさで出てきてしまいました。男子初のメダルを誇りにしたい」と語った。
そして、表彰台でも涙…。
長くて辛い復帰の道のりが心に浮かんだのでないか…。

SP4位の織田信成は20番目(第4グループ)に登場。
初出場のオリンピックの雰囲気に飲まれたのか、SPでは硬さが目立った。
しかし、フリーでは落ち着いて演技を始めた。
が、最初の4回転を回避したことが響いたのか、なかなか勢いに乗れない…。
後半のジャンプで手をつき、直後に演技を中断した。
何と靴ひもが切れてしまったのだ。
信じられないアクシデント!
再開したものの、減点。
気を取り直し、力を振り絞り滑り終えた織田信成に、観客が大きな拍手でねぎらった。
感動的なシーン。
私自身は、織田信成のスタイルとチャップリンのイメージがどうも重ならない。
演技や動きを美しく見せるためのスリムなスラックス(ズボン、パンツ)がしっくり来ない。
織田信成の持ち前の柔軟性とスピード感をもっと生かせる曲がなかったか。
SPは84.85点。
フリーは153.69点。
総合は238.54点で7位入賞。
織田信成は目の前にぶら下がるメダルに手が届かなかった。
競技後のインタビューでは悔し涙が止まらず、言葉が出てこない。
お疲れさま。

SP8位の小塚崇彦は13番目(第3グループ)に登場。
トリプルアクセルで転倒したが、自身初の4回転に成功した。
SPは79.59点。
フリーは151.60点。
総合は231.19(自己ベスト)で8位入賞。
最終の第4グループ6選手を残して2位。
この時点で入賞が確定した。
競技後のインタビューでは、「オリンピックで4回転を跳べてよかったです」と満面の笑みを浮かべた。
お疲れさま。
リコール問題に苦しむトヨタ自動車にとり久々に明るい話題となった。

アメリカのエバン・ライサチェク。
2009年の世界王者。
SPは90.30点で2位。
フリーは167.37点。
合計は257.67点で1位。
逆転の金メダル。
確実性を重視した、すきのない完璧な演技。
4回転を跳ばないチャンピオンが生まれた。

ロシアのエフゲニー・プルシェンコ。
2006年トリノ五輪の覇者。
SPは90.85点で1位。
フリーは165.51点。
合計は256.36点で2位。
大波乱の銀メダル。
3年間のブランクの影響が土壇場で出たのか、技の精度を欠いた。
本来の調子と程遠い出来栄え。
エバン・ライサチェクの高得点でプレッシャーがかかった?
オリンピック連覇は夢とついえた。
が、表彰台で勝者を称えた。
立派な態度だ。

男子フィギュア日本初の五輪メダルの色は「銅」になった。
高橋大輔にとり4回転を跳ばない金メダルではプライドを持てなかったのだろう。
それは競技者が決めることだ。
試合終了後のインタビューでは、最初からやると決めていたことを明かした。

実は、女子フィギュアを含め、日本勢のメダルは、1992年アルベールビル五輪の伊藤みどりの銀、2006年トリノ五輪の荒川静香の金に次いで3人目。

なお、バンクーバーオリンピックで日本勢が獲得したメダルは、スピードスケート男子500メートル2位の長島圭一郎、3位の加藤条治に続いて3個目となった。
かなりの健闘といえよう。

スピードスケート女子1000メートルで小平奈緒(こだいら・なお)が76秒80で5位に入賞した。
3位とはわずか0秒08差。
相沢病院の所属。
日本選手団最年少15歳の高木美帆は完走した35選手で最下位となり、ほろ苦い五輪デビューとなった。
大舞台の怖さが分かったろう。
幕別町立札内中学校に在学。
2014年ソチ五輪のエースだ。

カーリング女子の日本は昨季世界選手権優勝の中国に完敗した。
連敗で1勝2敗。

                       ◇

以下は、「高橋大輔、攻めか守りかメダル予想」と題する今朝のブログ。

バンクーバー冬季五輪(オリンピック)、フィギュアスケート男子シングル。
ショートプログラム(SP)を終えた段階の得点では、メダル争いは上位3選手に絞られたように思えなくもない。
4位とは差が開いたからだ。

ロシアのエフゲニー・プルシェンコは王者の貫録。
90.85点で首位。
細かく見れば、3年間のブランクが感じられる。
滑りに2006年トリノ五輪のときの切れがない。
しかし、4回転ジャンプが安定しており、フリーでミスを犯すとは考えにくい。
高く、遠く、早い。
優勝候補の筆頭だ。
アメリカのエバン・ライサチェクは90.30点で2位。

対する日本。
関大大学院所属の高橋大輔(たかはし・だいすけ)は90.25点で3位。
プルシェンコとは0.60点、ライサチェクとは0.05点の差。
オリンピックの大舞台で有力選手がミスを犯すなか、高橋大輔は落ち着いており、堂々としていた。
世界一と評されるステップに加え、ジャンプも好調。
自己最高点をマークした。
表現力はもともと抜群だ。
右ひざ前十字靱帯断裂の大けがと辛いリハビリを乗り越えた経験が強じんな精神力をもたらしたのか。
きょうのフリーの演技が非常に楽しみだ。
有給休暇を取り、テレビにくぎ付けになるファンもいる。

が、高橋大輔は難しい判断を迫られる。
実は、男子はオリンピックで一度もメダルを取っていない。
フリーには、日本勢にとり初のメダル獲得がかかっている。
エフゲニー・プルシェンコは、「4回転を跳ばなければ、男じゃない」と言い切り、メダル圏内のライバルを挑発した。
4回転勝負に持ち込めば、メダル争いで有利になるからだ。

フィギュアスケート男子シングルは、ショートプログラムとフリーに1日の間隔が空いたことで“心理戦”の様相を帯びてきた。
高橋大輔は考えを整理し、演技に臨まなくてなるまい。
守りの3回転で銀メダルを狙う、悪くても銅メダルを取るという選択も…。
確実性を重視するのだ。
何せフリーは、高橋大輔が強みとする表現のウエイトが大きい。
そして、高得点でエフゲニー・プルシェンコにプレッシャーをかける。
ひょっとすると…。

私は思う。
4回転ジャンプは練習でほぼ成功するレベルでなくては、本番で使うのは危険だ。
失敗すれば、すべてのメダルを失う。
恐らくもっともいけないのは、迷いだ。

上位3選手が揃ってのインタビューで、高橋大輔は4回転へのこだわりを口にした。
リスクを承知で、あくまで頂点「金メダル」を目指すようだ。
4回転を跳ばない王者はイメージできないのか。
賭けに近いが、攻めに徹する。
その心意気やよし。
皆で声援を送ろう。

なお、関大所属の織田信成(おだ・のぶなり)は84.85点で4位。
厳しいとはいえ、金メダルはぎりぎり射程圏内。
一か八かの大勝負をかけざるをえない立場であり、いい意味での開き直りが可能だ。
織田信長の末裔・織田信成は一発逆転の“天下獲り”を目論む。
戦国模様の男子フィギュアで風雲児となれるか。

                       ◇

バンクーバー冬季五輪に関するブログは以下のとおり。

⇒2010年2月13日「バンクーバー五輪開幕、日本メダル予想」はこちら。
⇒2010年2月14日「モーグル上村愛子、ソチ3位へ挑戦?」はこちら。
⇒2010年2月16日「男子5百歓喜、長島銀、加藤銅メダル」はこちら。
⇒2010年2月17日「男子フィギュアSP、高橋3位、織田4位」はこちら。
⇒2010年2月18日「日本電産・永守重信、メダルに報奨金」はこちら。
⇒2010年2月19日「高橋大輔、攻めか守りかメダル予想」はこちら。

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