「I’m deeply sorry」。
トヨタ自動車の豊田章男(とよだ・あきお)社長は先頃、米議会の公聴会でそう陳謝した。
「sorry」という言葉は命取りになりかねないと指摘されているが、トヨタは百も承知。
そうでもしなければ一連の騒動は収束に向かわないとの経営判断だろう。

トヨタでは遺憾の意を表す「残念」と説明するが、米国では自らの非を認める「謝罪」と受け取られる。
訴訟社会では不利になるため、「sorry」はめったに使われない。
トヨタを相手取った集団訴訟がさらに増えそうだ。
もし敗訴するなら、日本の常識ではありえない巨額を支払わなくてならない。

トヨタはリコール費用に加え、訴訟費用が膨らむ。
すでに品質と安全性への信頼の失墜、ブランドイメージの低下などで新車販売が減少し、売り上げが下降している。
それにともない、値引きが拡大し、利益が圧迫されている。
収益に赤信号が灯る。
株価はどこまで下落する?

自動車発祥の国アメリカ。
ゼネラル・モーターズにかわり世界の頂点に立ったトヨタは猛烈なバッシングを受けている。
豊田章男社長は針のむしろに座らされ、集中砲火を浴びた。
当然、言い分はあるはず。
しかし、独り責任を負う。
公聴会で真相の究明と経営の改革に取り組むと約束した。
今回の非常事態は創業家出身でなければ乗り切れないだろう。

私は、トヨタの対応が鈍かった、とくに社長の会見が遅れたと思う。
閉鎖的・封建的な企業体質も一因。
が、ことの重大性を認識してからは豊田章男社長が自ら矢面に立っている。
きのうも中国で記者会見を行った。
リコール問題でトップが登場するのは異例だ。

トヨタは急成長のほころびが一気に表面化した。
だとしても、米国でのトヨタ叩きには謎が多い。
例えば、当初問題とされたフロアマットのずれはクルマの不具合によるものなのか…。

私はホンダのオデッセイとニッサンのエルグランドを除き、レクサスを含むトヨタ車を乗り継いできた。
これまでに経験した不具合はガラスのビビリの1回であり、故障は1度もない。
信頼性は非常に高い。
十年程突っ走ってきたトヨタにとり、足元を見詰め直し、次なる成長の基盤を固めるとてもよい機会となった。

私はテレビで公聴会の様子を見て思った。
豊田章男社長は誠実だった。
世界に報道されたようなので、日本人や日本企業に一層の安心感を持ったのでは…。
率直に詫びる民族はそれほど多くない。

                       ◇

柔道の谷亮子(たに・りょうこ)が民主党の小沢一郎(おざわ・いちろう)幹事長と面会し、苦難にあえぐトヨタ自動車に対する支援を要請した。
そうか彼女は社員だった。
五輪メダリストを引っ張り出すとは、トヨタはよくよく困っている?

                       ◇

トヨタ自動車のリコール問題に関するブログは以下のとおり。

⇒2010年1月29日「トヨタ車の品質・安全神話が崩壊」はこちら。
⇒2010年2月8日「リコールトヨタ販売激減、株価急落」はこちら。

トヨタディーラー(チャネル)の統合・再編に関するブログは以下のとおり。

⇒2008年5月21日「トヨタディーラーは3系列へ再編」はこちら。
⇒2008年11月19日「トヨタディーラー再編」はこちら。
⇒2009年1月21日「豊田章男氏のもとディーラー再編!?」はこちら。

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