私は火曜日に富山第一ホテルで北陸経済研究所が主催する「北経研経営セミナー」の2010年度の皮切りの講師を仰せつかった。
光栄の至り。
演題は、「営業変革勝ち残りセミナー」。
対象は、富山県を中心に北陸4県の地場企業の経営トップと営業幹部。
上層部に限定したため、参加者は多くなかった。
しかし、現状に強い危機感、次世代へ深い愛情を持つ方々の集まりだったため、互いに濃密な時間を共有することができた。
受講態度は非常に真剣であり、講師として一段と熱が入った。
主催者と参加者に対し、心より感謝したい。

私は普段、講師紹介で「明治大学中退」と名乗っている。
学歴とは学業に関する経歴であり、明治大学は学び遂げられなかったので中退になった。
したがって、最終学歴は「富山県立魚津高校卒業」。
当日は地元でのセミナー。
私はいつも厳しい口調で講義を進めているが、どうしてもリラックスしてしまう。

ところで、宿泊ホテルがセミナー会場と同一であり、朝はゆっくりできる。
そこで前夜、富山駅の近くで、かつての両親の実家、滑川市天望町に暮らす妹と久し振りに食事をともにした。
ホタルイカほか海鮮を用いたメニューが中心の、地元の居酒屋。
妹は3人の子どもが大学進学で次々と親元を離れた。
寂しかろう。
2時間、会話が弾み、私は一安心。

                       ◇

北経研経営セミナーは夕方に終わった。
私は富山駅で帰りの切符を求めようとして、糸魚川付近の強風のためにダイヤが大幅に乱れていると告げられた。
「特急はくたか」は運休状態。
参ったなぁ…。

私はやむをえず、行けるところまで行こうと各駅停車に乗った。
一駅ずつ長い停車。
途中、魚津駅(うろ覚え)で、まもなく入線する特急列車が先に出発するとアナウンスがあった。
私はほとんど信じておらず、そのまま各駅停車に残った。
乗客の大半がホームに降り立って、反対側に入線する特急列車をずっと待っている。

出張の多い私は過去に幾度かトラブルを味わっており、長期戦を覚悟していた。
各駅停車はがらがら。
このチャンスしかないと思い、Tシャツとジーンズ、皮ジャンにささっと着替えた。
何と大胆な…。
が、手慣れたもの。
実は、丸1日のセミナーで汗まみれになり、体調を崩しそうだった。
先週から風邪気味だった。

かなり遅れて到着した特急列車に乗り換えたが、隣の黒部駅で長らく停車した挙げ句、運転打ち切り。
やっぱりな…。
JRが直江津駅まで振り替え輸送のバス便を用意してくれたが、私は疲労がピークに達しており、この上の長時間移動に耐えられない。
幸いにも黒部駅前の「ホテルアクア黒部」に空室があり、宿泊することにした。

私が黒部に降り立ったのは三十数年振り。
楽譜取次の松沢書店の一員として、北陸出張でレコード楽器店を毎月訪ねていた。
その駅前にこんな立派なホテルができていたことに驚いた。
至って快適。

黒部はYKK(旧吉田工業)のお膝下である。
不遇の父は同社に拾ってもらい、嘱託として女子寮の寮長を長年務めた(不確か)。
隣の生地駅か。

ふと思った。
昔、地元の人は吉田工業を「チャック」と呼んでいた(不確か)。
あちこちの家庭で内職をやっていた。
富山県民の真面目かつ豊富で安価な労働力に恵まれたから、同社の基盤が築かれたのでなかったか。

私が黒部駅に降り立った頃は暗闇に包まれ、街を見通せなかったが、とても懐かしい気持ちに浸れた。
自分の思い出より、父の姿が浮かんできた。

家族を支えるため、どん底の境遇で頑張りつづけた父に感謝したい。

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