私はプロ講師の道を歩んで15年以上になる。
この間、参加者のセミナーに対する評価が年々厳しくなってきた。
私自身は大歓迎である。
かなりの金額を払い、貴重な時間を費やしているのだから当然だろう。

さて、セミナーアンケートについて、きのうに続いて述べたい。
おもだったビジネスセミナー会社は参加者の満足度を把握し、その講義の改善に役立てたり継続を判断したりする材料としている。
ついては、内容に対する評価と講師に対する評価を区別しているところがある。
より厳密に行うためだ。
しかし、参加者の側はなかなか切り分けが難しい。
講師の側もいま一つピンと来ない。

そこで、私は一応こう考えることにした。
前者がコンテンツを対象とし、後者がコミュニケーションを対象とする。
すなわち、講義の内容と表現。
中身と伝え方というふうに…。

大学の教授などに目立つが、中身に力を入れたとしても、伝え方に注意が回らない。
学生はケータイを覗いていたり眠っていたりする。
いくらかでも伝わってこその教育である

私は40年前に明治大学経営学部に入学した。
5年間で授業に出席したのは数えるほどだが、あまりのつまらなさに呆れ返った。
とにかく退屈…。
高校の授業の延長にすぎず、胸がまったくときめかなかった(これと中退は無関係)。

実は、ビジネスセミナーにおいて中身と伝え方は講義の両輪である。
これがうまく回ったとき、参加者から高い評価が得られる。
むしろ、中身に注ぐより大きなエネルギーを伝え方に注ぐくらいの気持ちでのぞまなくてはプロとしてやっていけない。

話せば分かると考えるのは素人の証拠。
ならば、社長と社員、上司と部下、夫と妻、親と子、恋人や友人同士の意思疎通に破綻は生じない。
伝えて伝わるのはまれであり、しかも一部に留まる。
この認識がプロ講師の出発点である。
そのため、インストラクションのあり方にさまざまな創意を加え、工夫を施すことになる。

参加者のなかには両方の評価をしっかりと下せる人もいる。
多くのセミナーを受けていたり、冷静な判断力を有していたり…。
が、それは少数であり、概して両者は影響しあう。

また、全体的な感想や意見は、とくに講師の評価に引っ張られやすい。
正確に述べるなら、講師の印象に引っ張られやすい。
要は、人間的な好き嫌い。
失礼な言い方になるが、参加者のレベルが低いほど、当人の感情にアンケートが左右される傾向が強くなる。

それゆえ、講師が手っ取り早くスコアを上げるには、参加者に好かれればよい。
しかし、後日述べるとおり、こうしたものに一喜一憂するようではプロになれない。
この仕事を見くびってもらっては困る。

余談だが、社内講師へのアンケート評価は当てにならない。
同じ会社で働く身内に対し、辛辣な感想や意見は差し控える。
彼らが上司になるかもしれず、人事部に配属されるかもしれない。
社内講師は大勢いるが、プロ講師に転じて成功する人はほとんどいない。
例外として活躍している人はたいてい伝え方がうまくて成功しているが、いまは中身にも掘り下げが求められるようになった。
単なる“教え上手”では食べていけなくなりつつある。

内容と表現がともに一定の水準に達し、初めてプロ講師として第一歩を踏み出せると心得よ。

高額のビジネスセミナーに関しては、一度で打ち切られる講師が大半である。
ほとんどが消える。
プロへの道は想像を絶するほど険しい。
私は若い世代に頑張ってほしい。

◇◆◇

「和田創 プロ講師養成塾」シリーズは以下のとおり。

⇒2010年5月11日「次世代が育たない…プロ講師養成塾」はこちら。

⇒2010年5月12日「セミナーアンケート…プロ講師の常識」はこちら。

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