ビジネスセミナーでは主催者が参加者にアンケートを記入してもらっている。
内容と講師に対する評価を切り分けて設けるところもある。
それにより内容の有益度、講師の人気度をより明確につかむ。

私はきのう、こうしたセミナーアンケートの実態と絡めながら、講師は講義の内容と表現、中身と伝え方、この両方に並々ならぬ情熱と手間を注がなくてはプロとしてやっていけないと結論づけた。

さて、きょうは評価の対象となる「内容」と「講師」とは何かについて述べたい。
先に結論を示す。

内容とは、知識でなく「知恵」。
学校や図書から与えられた知識でなく、自分の経験を通じてつかみ取った知恵である。
私が講師を務める営業の分野はとくに…。
なお、知識系のセミナーが成立しやすいジャンルがないわけでない。
が、競争が激しいし、講師料も安い。

講師とは、教えるのでなく「考えさせる」。
教育は、教えて育てるという意味でなく、教えたら育たないという略字である。
教育は、学ぶ人に不親切でなくてならない。
自ら考えられる人をつくりたくなければ、どんどん教えるに限る。
講師は仕事を長く保てるメリットが大きい。

HRDや自前の施設を持つ大手企業のなかに、これに近い状態のところが少なくない。
あれだけ社員を研修漬けにして業績が悪いのは、教育を取り違えているからだろう。
私がコンサルタントとして多くの企業を訪れた経験では、知識が増えると行動が減りやすい。
皆が細かな理屈ばかり言い合い、果敢な挑戦を止めている。
ジリ貧から永久に抜け出せまい。

話を戻す。
要は、講師は自らの知恵を伝え、参加者に自らの行動を考えさせること。
よりより行動への気づき、もしくはそのきっかけを持ち帰らせるのが講師の使命であり、プロの条件である。

社内講師は別にし、教える講師は食べていけなくなる。
決まりきった知識の習得は本を用いるのが断然効率的である。
話を聞くスピードは、講師が話すスピードになる。
本を読むスピードは、その数倍である。
しかも、話は内容が消えていくが、本は内容が記されている。
セミナーに参加するには、本の20倍前後の受講料を払ったうえ、仕事を休まなくてならない。
年々世知辛くなるなか、派遣する企業も参加する個人もためらう気持ちが強く働こう。
さらにeラーニングの普及が追い討ちをかける。
何せ教えるのを得意とする。
フェイス・トゥ・フェイスの講義の価値は何かを考えなくてなるまい。

講師を目指す人はとにかく行動を重んじ、経験を積むのが先決だろう。

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「和田創 プロ講師養成塾」シリーズは以下のとおり。

⇒2010年5月11日「次世代が育たない…プロ講師養成塾」はこちら。

⇒2010年5月12日「セミナーアンケート…プロ講師の常識」はこちら。

⇒2010年5月13日「プロ講師の心得…講義の内容と表現の評価」はこちら。

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