私はNHK朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」が気になって仕方がない。
仕事に追われっ放しなので、時間をずらしたりチャンネルを変えたり、さらに週末の一括放送を織り交ぜながら、なるべく見逃さないようにしている。

番組で描かれているのは、私が35年近く前に経験した結婚生活に酷似していた。
村井茂(水木しげる)は生活を支えるために必死で働く。
貯金は1円もなし。
札入れは画面に登場しない。
頼みの小銭入れにもろくなカネが入っていない。
そういえば、空っぽのシーンがあった。
愕然とする村井布美枝…。
ゼロだと、妻はやり繰りしようがない。
口に入れるものを買えないわけで、どのように凌いだのか不思議である。

私との決定的な違いは、漫画家は連載やシリーズなどで仕事がそれなりに継続したことだ。
フリーランスは収入が保障されず、しかもわずかだ。
いくらか安定していたのが救いである。
ところが、プランナーの私は一本一本の勝負だった。
しかも、アイデアを売ること自体が社会的に認知されておらず、食べていけるはずがなかった。
嫌いでないが、好きでない。
ほかに自分がやれそうな仕事が見つからなかったのだ。

私は結婚当初は共働きだったので、小銭もない生活はなかったろう(不確か)。
それ以前の、長い同棲期間も含めて…。
ときどき二人で外食したくらいだ。
といっても近所…。

しかし、子どもが生まれてからは私一人の稼ぎになり、極貧状態に陥ったのでないか。
昨年、消えた年金を調べるうちに、この頃に国民年金が払われていないことを知った。
妻(前妻)が猶予申請を出していた。
払えればかならず払っている。

厳しい生活を強いられていたのは疑いようがないが、記憶がまるでない。
人は苦しいことを案外、忘れてしまう。
妻はときどき粉ミルクを使っていた。
一度、ミルク代がバカにならないと言ったことは覚えている。
このときは小さい粉ミルクを買ってきた。
やはりぎりぎりだった。

ゲゲゲの女房で描かれているのは、社会の底辺で懸命に生きる新婚まもない夫婦の姿だ。
が、二人に暗さはみじんもない。
仕事に精魂を込める夫と、それに敬意を払う妻の信頼のきずなが固いからだろう。
互いにプライドを忘れない。
人は覚悟を決められるなら困難を乗り越えていける。
また、日本は経済が右肩上がりで、国民が将来に希望を持っていたことも関係しているのでは…。
貧しさのなかにも明るさがあった。

私の新婚生活についても同じだ。
失うものがなく、前へ突き進むしかなかった。
何も考えず、何も案じず、ひたすら働いた。
つきあいと同棲が長く、私を理解していたこともあり、妻は腹が据わっていた。
何も嘆かず、何も騒がず、黙ってついてきた。

ささやかな幸福でおおいに満たされた時代である。

                      ◇◆◇

ゲゲゲの女房に関するブログは以下のとおり。

⇒2010年5月8日「ゲゲゲの女房…蘇る前妻との初デート」はこちら。

⇒2010年5月19日「松下奈緒、ゲゲゲの女房を好演する」はこちら。

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