「和田創 プロ講師養成塾」シリーズ。
これまでにも取りあげたが、「セミナーアンケート」について述べよう。
その意図や目的が十分に理解されていないからだ。

長い期間、相応の収入を得てプロ講師としてやっていく。
そう真剣に願うなら、自らの使命をわきまえ、自らの価値を高めていかなくてならない。
講師道は険しく、奥深い。

さて、だれに対する使命、価値なのか。
むろん「顧客」である。

講師にとり、セミナーに参加する個人が顧客になるが、それに加えてセミナーに派遣する企業が顧客になる。
私が講師を務めてきたビジネスセミナーでは、カネを払うのは後者である。

企業は自力で従業員をどうにもできなくて困った末に、外部の公開セミナーを利用することが多い。
環境が劇的に変化する今日では、こうした傾向が一段と強まっている。
すなわち、社長は社員に、上司は部下に変わってほしくて送り込んでくる。

ところが、人は変わりたくない。
自分を否定しなくてならないからだ。

セミナーアンケートでは、評価が参加者に限られる。
最大の欠陥だ。
それは、派遣者の評価と正反対になるかもしれない。
私のような変革・再建系の講義では、むしろそうした可能性のほうが大きい。
私に対する厳しい評価は、参加者に対する厳しい講義を証明するものだ。

私の講演やセミナーについて述べれば、参加者のレベルが高いほど、地位が高いほど評価が高くなる。
これははっきりしている。
人材の育成を目論む以上、それは望ましいことだ。
私は講義に自信を持っており、セミナーアンケートを気にしない。

当然、講師への評価には受講者の意識と能力のレベルが反映される。
それは“裏返し”なのだ。
私の講演やセミナーについて述べれば、同一会場でまったく正反対の感想や意見が寄せられる。
例えば、当たり前といった声と、ついていけないといった声が混在する。

人を評価することは、自分が評価されることだ。
それに気づかずにアンケート用紙に記入する参加者がいる。
能天気だ。
アンケートは講師にとり参考にする程度でよい。
私はもっぱら参加者を評価するためにアンケートに目を通している。

最近、参加者に好かれようとする講師が増え、それにともなってプロとして食べていける人が減った。
次世代がほとんど育っていない。
自らの使命と価値をはき違えているからだ。
私自身は参加者に嫌われつつ、それでもアンケートの“平均スコア”を上げようと努めている。

しかし、もっとも重視すべきは、だれの感想や意見かということだ。
講師は参加者の底上げに努めるにしろ、自分の頑張りではどうにもならない人がかならず含まれる。
意識や能力の高い人に評価されるように注力する。
これは、なかでも営業系のプロ講師としてやっていくうえで急所になろう。

ビジネスセミナーの顧客はおもに派遣者である。
目の前にいる参加者でない。
だれが自分を食べさせてくれるか、冷静に考えるべきだ。

プロ講師にとり最大の収入源は企業研修である。
人気の講師なら8割以上を占めるはずだ。
そして、それは公開セミナーがきっかけになることも少なくない。
休憩時間や終了時に、「このセミナーをうちに来てやってもらえないか」。
参加者に社長など取締役クラスが混じっていたのだ。
そうした受託につながるかどうかは、企業の上層部がどう評価するかにかかっている。
通常の参加者とは異なった観点から判断が下される。

講師が、意識と能力の劣る社員から高い評価を得ることに意味はない。
この点を理解せず、「仕事がない」とこぼしたり悩んだりしていないか…。

“自社(自分)都合”の話をしよう。
好かれようとする講師は競争が激しい。
食べるのが難しい。
サラリーマンの給料も取れない講師が大半である。

嫌われる講師を目指しなさい。
専門用語で「差別化」という。
この程度のことに気づけないなら、プロ講師に向いていないのでは…。

企業は成長が止まり、業績が沈み、行き詰まりが鮮明だ。
今後ますます、講師は嫌われるほど仕事が増える。

和田創、大噴火プロフィール

和田創、大噴火営業変革講演

                      ◇◆◇

「和田創 プロ講師養成塾」シリーズは以下のとおり。

⇒2010年5月11日「次世代が育たない…プロ講師養成塾」はこちら。

⇒2010年5月12日「セミナーアンケート…プロ講師の常識」はこちら。

⇒2010年5月13日「プロ講師の心得…講義の内容と表現の評価」はこちら。

⇒2010年5月14日「教えたら育たない…教育を解釈する」はこちら。

⇒2010年5月27日「講師とは自己否定である…プロ養成塾」はこちら。

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