平成22年度前期・朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」。
きょうが最終回。
半年に及ぶ放送を終了した。
ヒロイン・村井布美枝を演じた松下奈緒、その夫・村井茂(水木しげる)を演じた向井理など出演者にお疲れさまと申しあげたい。

私が知る朝ドラのなかで文句なくナンバーワン!
比べられるシリーズを思い浮かべられない。
還暦直前に言うのも気が引けるが、私にとり「人生の教科書」だった。
単に面白いシリーズ、気になるシリーズならいくつかあった。
しかし、内容の深さにおいて「ゲゲゲの女房」は群を抜く。
それは夫婦、そして家族が心を一つにし、力を合わせて生きていくことの意味と価値を、現在の私たちに問いかけている。
私は結婚後の半生と重ね合わせたり照らし合わせたりするうちに、すっかり番組の虜になっていた。
自分なりの学び、さらに気づきを得られた。

「ゲゲゲの女房」では、あえて年齢相応のメイクにこだわらなかった。
私は一時、若すぎるのではという印象を持った。
が、すぐに思い直した。
主役二人の役者としてのキャリア、そして持ち味を考慮して判断を下した?
視聴者の違和感がかえって大きくなっただろう。
それ以前に、「ゲゲゲの女房」は“青春物語”である。
歳月の経過ほどには出演者が老けていかなかった。
青春は年齢でない。
これでよかった。

また、終わり方は秀逸である。
感動の涙を期待した視聴者を見事に裏切った。
気合を入れて最終回に臨んだ人は拍子抜けしたはずだ。
私もその一人。

安来の父・飯田源兵衛(大杉漣)の葬儀で流された涙は描かれなかった。
代わりに、偉大な父に対する感謝の念が、久し振りに揃った家族の笑顔のなかに浮かび上がった。
脳梗塞で体が不自由になった源兵衛は生前、ラッパを吹き分けて家族に用事を伝えていた。
そのラッパは、若くして逝った次男・飯田貴司(星野源)が幼い頃親しんだものだ。
もう少し待っていろという合図だったのか。

「お父さん、みんな笑って暮らしとるよ」。
布美枝は天国の父に語りかけた。

村井茂と村井布美枝。
武良茂と武良布枝。
二人で漫画に打ち込み、妖怪とともに歩んだ半生・・・。
こんな夫婦はそうそうおらんぞ。

ラストシーンは白い光に包まれた命の森。
生と死を超越した世界。
そこには二人が育んだ鬼太郎や妖怪たちがいた。
この朝ドラのオープニングにつながる。
そう、終わりは始まり。
あすはすぐそこ…。

なお、番組の早い段階で亡くなった祖母・飯田登志(野際陽子)が最後まで「ゲゲゲの女房」の語りを担当した。
家族から「おばば」と呼ばれていた。
「おばけ」でないぞ。
天国からずっと布美枝らを見守っているかのよう…。

私は思う。
松下奈緒の本質は役者でなくスターである。
「ゲゲゲの女房」が国民的人気を博するうえで、彼女が果たした貢献は絶大だった。
武良布枝の原案、山本むつみの脚本の魅力が土台だったとしても…。

⇒2010年7月16日「木村拓哉…スターと役者の違い」はこちら。

役者が職業なのに対し、スターは存在である。
彼女が目立ちすぎるという評価は意味をなさない。
松下奈緒は当面、主役以外は務まらないだろう。
共演者を飲み込んでしまう。
放つオーラがまぶしい。

この朝ドラに関連して一つ残念なのは、山本むつみの脚本が発売されなかったこと。
私個人はノベライズ(小説化)されたものよりもシナリオのほうがほしかった。
「ゲゲゲの女房」のストーリーやシーン、出演者や演技などを思い返しながら楽しめた。
読む側のイマジネーションが膨らむ余地が断然大きい。

NHKに望みたい。
私のユーチューブの動画を著作権侵害でグーグルに通報している場合でない。
ぜひ「ゲゲゲの女房 脚本版」を刊行してもらいたい。

⇒2010年9月22日「NHKより著作権侵害の申し立て、動画消滅」はこちら。

                       ◇

以下のブログ(最初の原稿)に大幅な加筆を施した。
武良布枝は我慢の人でなく覚悟の人だった。
私はNHK「スタジオパークからこんにちは」を見て、深い感銘を受けた。

⇒2010年9月24日「水木しげる夫妻(武良茂・布枝)の自然体」はこちら。

以下のブログ(最初の原稿)にかなり手を加えた。

⇒2010年9月24日「ゲゲゲ松下奈緒から、てっぱん瀧本美織へ」はこちら。

「ゲゲゲの女房」の関係者全員にだんだんと申しあげたい。

来週からさみしくなるなぁ、ちょっこし、と私。
そげですね、と妻・・・。

◆書き加え1(9月25日)

私は妻に、武良家の緑色の餃子をつくってもらうことにした。
夫、そして水木プロダクションのアシスタントの激務を支えつづけた例の料理。
やり繰り上手の布美枝が編み出した。

NHK「ゲゲゲの女房」公式サイトにレシピが載っている。
「野菜たっぷり 太った餃子」。
松下奈緒の味をご家庭で! 
何を言ってるんだ。

◆書き加え2(9月25日)

私は思い出した。
いまの妻も前の妻も家計が苦しいとき、近所の八百屋で売れ残りの野菜を安く分けてもらったり、くず野菜をただでもらったりした。
店主がよけといてくれた。
妻の必死さが相手を動かし、それで家族は命をつないできた。
財布どころか小銭入れにカネがほとんど入っていなかったのだから…。

◆書き加え3(8月25日)

「ゲゲゲの女房」のオープニング。
紙芝居とそれに見入る子どもたちのモノクロ写真は毎回、懐かしさと温かさを感じる。
貧しい時代だった。
タイムスリップし、私はあのなかに溶け込みたい。

紙芝居屋が新潟・直江津の真行寺幼稚園の広場(正確には真行寺の境内)に拍子木を打ち鳴らしながらやってくるのが楽しみだった。

◆書き加え4(9月25日)

長女・村井藍子(青谷優衣)と次女・村井喜子(荒井萌)は、両親が見合いの5日後に結婚したことを親戚から聞かされ、驚いた。
子どもは親のことを何も知らない。
親はたいてい胸に収めておくから当然だ。

夫婦は不思議…。
二人にしか分からないことがある。
周りから窺い知れないことがある。
それが絆を一層強くする。

私はいまごろになって親に尋ねたいことがいっぱい出てきたが、それは叶わない。

◆書き加え5(9月25日)

エンディングの森のシーンを引き取るように、いきものがかりによる「ゲゲゲの女房」の主題歌「ありがとう」が流された。
人生の希望を託して…。

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