NHK朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」。
きのうのブログで、番組公式サイトに掲載されていたクランクアップ前日の松下奈緒のインタビューを取りあげた。
きょうのブログはそれに続いて…。

⇒2010年9月27日「松下奈緒が『ゲゲゲの女房』を振り返った」はこちら。

さて、ヒロイン・村井布美枝役の松下奈緒、そして夫・村井茂(水木しげる)役の向井理。
あくまで「ゲゲゲの女房」のファンとして、二人の演技について率直に述べた。
私は素人にすぎず、「演技評価」は行えない。

先のインタビューによれば、松下奈緒は朝ドラの経験を通じて演技に対する考え方が変わった。
それまで、このシーンはこう演じると決めていた。
が、その場の空気に身を任せることがあってよい。
両方のメリハリが大切だと…。

キャリアが別次元なので当たり前とはいえ、ベテランが絡むシーンで力量の差が歴然とした。
非常に乱暴な言い方になるが、風間杜夫と古手川祐子はへたに演じた。
大杉漣と竹下景子はうまく演じた。
4人の役どころが関係しているのは承知。

風間杜夫と古手川祐子は松下奈緒を引き立てるために…。
大杉漣と竹下景子は松下奈緒を教え導くために…。
私は、若いヒロインに対するベテランの心配りを感じた。
いずれも主役を演じた実績を持つ俳優である。
やはり「へたに」「うまく」は語弊がある。
前の二人は主役を支え、後の二人は主役を励ました。

NHKの朝の顔、看板ドラマ番組「ゲゲゲの女房」において、松下奈緒と向井理は頑張った。
二人の最大の魅力は素人っぽさだった。
それが村井布美枝と村井茂のおおらかな生き方とマッチしていた。

いまや10代どころか幼少期から専門的な訓練を受け、さらに経験を積んでいる役者が珍しくない。
彼らはそれに人生をかけている。
松下奈緒も向井理も役者に憧れ、役者を目指してきた人とは明らかに違う。
松下奈緒は必死だったと振り返っており、そこにうそはない。
が、私はどこかに余裕を感じた。

私は、向井理のほうが演技としてはいくらか上だったと思う。
本人のキャラクターが水木しげるの役づくりに有効だった可能性はあるが…。
また、主役と準主役の立場や責任の違いも関係していよう。
決して気楽と言わないが、重圧は別物である。

役者は役柄と台本を与えられる。
そして、考えて演じる。
必須だ。
しかし、それが視聴者に伝わったら一流でない。
実際、考えて演じるだけだと、つくりものになってしまう。
私はときどき松下奈緒に演技を見せられている気分になった。
人は考えると、周囲に緊張感をばら撒く。
役者が考えたら、視聴者はくつろげない。

松下奈緒は“華”そのもの。
努力で身につけられるわけでなく、先天的な要素が大きい。
このブログで述べたとおり、彼女の本質はスターである。
それが「ゲゲゲの女房」で一気に開花した。

⇒2010年9月25日「ゲゲゲの女房エンディング…松下奈緒&向井理」はこちら。

私は朝ドラを見て、これは大物が登場したと興奮した。
しかも、女優としては異例の長身だ。
目立つ。
さらに、役柄と演技の幅が限られる。
つくる側は今後、主役以外に松下奈緒を起用しにくい。
ところが、制作費の削減によりドラマは本数が減少し、仕事はそうそうない。
演技を究めるには場数が欠かせないし、さまざまな役柄をこなさなくてならない。
前途は多難だろう。

松下奈緒は多彩な才能を有する。
女優として大成できるかという問題もさることながら、本人がその道にエネルギーを傾けるかは微妙である。
「ゲゲゲの女房」のヒロインに対する自己評価はどうなのだろう?
彼女は聡明であり、意外な判断を下すかもしれない。
それは向井理も同じだ。

私は、彼女のいろいろな道を思い浮かべてみた。
選択肢は多いが、どれも掘り下げが大変だ。
松下奈緒は広さに対し、深さに欠ける。
自分がもっとも魅力を発揮できる領域をどうつくっていくのか、私は興味がある。
それとも持ち前の度胸と根性で切り開き、成し遂げるのか?

かたや向井理はつかみどころがない。
成り行きに任せてきたように見えなくもない。
専門的な論文を書いたり、バーテンダーや店長を務めたり、路上でスカウトされたり…。
役者へのこだわりはいかばかり。
松下奈緒ほどでないが、才能は幅広い。
が、願望と目的志向の強い彼女と対照的である。
それとも“どん欲さ”が表に現れないだけなのか?
オーケーストアのカード野菜をメーンに、ときどきカード魚を添えた食事だった(信憑性なし)。

◆書き加え1(9月29日)

「ゲゲゲの女房」は、演じる側からすれば、それほど簡単でなかろう。
高名な漫画家の妻が書いた自伝が原案だ。
しかも、健在。
また、朝ドラとしては深い内容を持つ。
夫婦と家族の成長物語であり、人生そのものに通じる。

松下奈緒も向井理も結婚を知らない。
ただ、「ゲゲゲの女房」のストーリーは、役者としての経験の浅い二人に味方した。
村井茂と村井布美枝の夫婦は、不自然でぎこちない関係からスタートしたからだ。
よそよそしく、噛み合わない。

そう演じたのか、そうなったのか…。
両方だろう。

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