半世紀ぶりの早慶優勝決定戦を自らが先発して勝利で飾った翌日、11月4日。
斎藤佑樹は早稲田大学野球部で1位指名を受けた大石達也と福井優也とともにプロ野球ドラフト会議後初の会見を行った。
世間では「ドラ1トリオ」。
6球団の指名を受けた大石達也が中央、4球団の指名を受けた斎藤佑樹が向かって右側、1球団の指名を受けた福井優也が向かって左側に座った。
なるほど、この場ではキャプテン(主将)は無関係である。
かたわらに座っていた應武篤良(おうたけ・あつよし)監督は複雑な胸中を語った。
3球団に息子を取られたというさみしい気持ちと、プロ球団に生徒(選手)が入れたといううれしい気持ち。
別れがつらいと…。
手塩に掛けて育ててきた。

⇒2010年11月3日「斎藤佑樹は輝かしいスター、大舞台が似合う」はこちら。

とはいえ、当日夜の報道番組ではやはり主役は斎藤佑樹だった。
視聴率を競うマスコミは人気にシビアである。
また、スポーツニュース以外でも取りあげられるのは、国民の注目の大きさを物語っている。
NHK「ニュースウオッチ9」に生出演した斎藤佑樹は1年目の目標を記すように渡された色紙に「一生懸命」と書いていた。
興味津々だった番組の司会者も一瞬、拍子抜けした表情を見せた。
私も正直、おかしかった。
そして、斎藤佑樹らしいと思った。
奇をてらわない。
彼は「一所懸命」という言葉(表記)も知っていたはずだ。
「息の長い選手になりたい」。
合わせて、「怪我(けが)をしないようにしたい」と口にした。

斎藤佑樹は堅実な投手を目指している。
獅子奮迅の活躍はできないかもしれないが、コンスタントに勝利を積み上げていくのでないか…。
自己分析がしっかりとできている。
それぞれの野球人生だ。

⇒2010年11月3日「早慶優勝決定戦、斎藤佑樹と大石達也は登板?」はこちら。

私が斎藤佑樹を見て思い浮かべたのは、やはりドラフト1位指名の中央大学の沢村拓一である。
こちらは読売ジャイアンツ(巨人)。
スマートでクールな斎藤佑樹に対し、とにかく熱い。

沢村拓一は少年時代から熱烈な巨人ファンだった。
ドラフト直前、巨人以外は入団拒否の姿勢を鮮明にした。
かたや斎藤佑樹は「12球団どこでも」。
沢村拓一はその巨人からドラフト会議で指名を受けても表情をまったく変えなかった。
が、単独入札が確定した瞬間、大粒の涙をこぼした。
そして、白い歯を見せ、満面の笑みに変わった。

「大学を経由してプロへ行くなら、すぐに活躍しないと。18番がほしい」。
気性がはっきりと出ている。
いきなり自分を追い込んだ。
凄まじい気迫である。
私は彼の投手としての力量を判断できないが、スカウトの目に狂いがなければ、1年目に大活躍を見せるのでは…。
爆発力がありそう。
同時に無茶をし、故障をしてしまう危険性をはらんでいる。
監督やコーチが、彼のはやる気持ちにブレーキをかけることが大事になる。

私の率直な印象は、公家の斎藤佑樹と武士の沢村拓一。
外見も性格も対照的だ。
二人は東京六大学野球と東都大学野球を代表するエース。
所属が違うので、対戦はない(全国大会などのイベントでは不明)。
プロ野球でもリーグが違うが、いまでは「日本生命セ・パ交流戦」が催される。
日本ハムファイターズ・斎藤佑樹と読売ジャイアンツ・沢村拓一との対決はおおいに盛り上がる。
楽天イーグルス・田中将大との対決に劣らず…。

中央大学野球部の高橋善正監督はプロ野球出身で巨人でも活躍した。
高校時代は無名だった沢村拓一はその指導を受け、メキメキと力をつけていった。
4年生では大学ナンバーワン投手と評されるまでに…。

今季もぶっちぎりの独走が予想された読売ジャイアンツは投手陣が崩壊し、4連覇を逃した。
勝てる試合をたくさん落とした。
低迷する巨人戦生中継の視聴率をテコ入れするなら斎藤佑樹しかいない。
しかし、チーム事情により現時点での実力を優先せざるをえなかった。
巨人は、開幕から先発ローテーションの柱になれる投手がほしかった。

清武英利球団代表は沢村拓一の気性を考えたうえで「15番」を与えた。
永久欠番「14番」、伝説の速球投手・沢村栄治を超えろ。
エースナンバー「18番」は自分の力でつかみ取れ。
そんな願いが込められている。

沢村拓一はこの背番号をつけ、中央大学野球部OBの阿部慎之助捕手のミットへ時速 157キロメートルの剛速球を投げ込むことになる。

◆書き加え1(11月5日)

沢村拓一は鍛え上げられ、完成度が高い。

斎藤佑樹はプロ入り後の伸び代が大きい。
直球の速度も変化球の切れも増しそうだ。

私はもちろん公家でも武士でもなく雑草。
スポットライトを浴びることの少なかった沢村拓一に親近感を持つ。
斎藤佑樹は住む世界が異なり、憧れの対象かなぁ。

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