きのう大雪の影響で東海道新幹線に大幅な遅延が発生した。
私は福岡へ2泊3日の出張。
午後6時半に西鉄グランドホテルのロビーで待ち合わせの約束が入っており、それに遅れるわけにいかない。
夕食を兼ね、あすの経営層向けの講演会の打ち合わせを行う。
新幹線は通常どおり運行されるだろうか。

年末にパソコンが破損し、データが消滅した。
私はそれによる仕事の遅れをなかなか取り戻せない。
書き溜め記事が中心のこのブログは実質休止。

以下に、「日本製品、世界シェア急降下のなぞ」と題する2010年4月14日のブログを収める。

                      ◇◆◇

世界市場で日本製品がシェアを一段と低下させている。

中国やインドなどの新興国では顕著な経済成長につれ、中間所得層が台頭している。
10億人に迫る勢いとか…。
かたや、欧米などの先進国では深刻な経済停滞にともない、低所得層が拡大している。

その結果、これまでより所得水準が低い層が消費を牽引するようになった。
ボリュームゾーンが下方へシフトし、しかも膨張している。
彼らの最大の特徴は、製品への要求がきわめてシビアなこと。
性能や品質についてはそこそこでいいと考える代わりに、価格については妥協しない。
これまでと購買性向が大きく異なる。

しかし、日本製品は「オーバースペック」がアダとなり、そうした需要を取り込めない。
これがシェア低下の主因だろう(といっても、大きな一因)。
それは日本メーカーの地位低下につながっている。
過去の栄光となった家電メーカーが分かりやすい例。

実は、だいぶ前から何が何でも高機能というモノづくりを疑問視する声は上がっていた…。
なぜ、そうなってしまうのか?
私は、日本人の「国民性」が根っこにあるように思う。

第一は、改善が得意。
真面目かつ地道に働く民族であり、粘り強く努力を積み重ねられる。
日本は戦後、アメリカ製品を取り入れ、それをブラッシュアップすることで「メイド・イン・ジャパン」の称号を獲得した。
細やかな改善をお家芸とし、源流をたどれば“稲作文化”では…。
かつて松下電器(松下電器産業。現パナソニック)は「マネシタ電器」と揶揄されたが、それは成功したメーカーにたいてい通じる。
日本は製品の性能や品質でアメリカを凌駕し、圧倒した。
世界第1位となったトヨタ自動車が分かりやすい例。

第2は、戦略が苦手。
戦略とは「捨てること、切ること」である。
だが、そのためには考え抜かなくてならない。
また、それは失いそうでとても怖い。
公平かつ均等に目配りする民族であり、何事も優先度を曖昧にしたがる。
何かを捨てたり切ったりすることを嫌い、源流をたどれば“和の文化”では…。
議論や衝突が避けられないからだ。
オリンピックの派遣選手におけるメダル獲得率の低さが分かりやすい例(よく比較されるのは韓国)。

日本が莫大な借金を背負った一因は、歴代の政権が総花的にカネを使ったからだろう。
広辞苑によれば、総花とは「すべての関係者の機嫌をとるために万遍なく利益・恩恵を与えること」とある。
限られた財源で行えることは限られる。
にもかかわらず、捨てられず切られず、もろもろが既得権益と化していった。
「財政破たん国家」の仲間入りはすぐそこ…。

オーバースペックは開発が楽であり、販売が無難である。
多様なニーズを網羅しており、極端な外れがない。
が、そうした発想の延長線で幅広いユーザーを取り込もうとすると、グローバル競争ではシェアをどんどん落としていく。

私は、日本メーカーは弱体化が避けられず、凋落を止められないと思う。
モノづくり日本は世界において地盤沈下が進むはず。

                       ◇

参考までに「ボリュームゾーン爆発、勢力地図一変!」を掲げる。
2009年10月8日のブログだ。

中国やインドなどの新興国の高度成長にともない、中間所得層のボリュームゾーンが十億人に達しそうな勢いである。
爆発的膨張!
メーカーはこの市場の取り込みを図ることが、グローバル経済において競争優位を築くうえで絶対条件になってきた。
だが、そのためには常識から外れたロープライス(低価格)で製品を提供しなくてはならない。
何割安でなく、何分の一の値段。
まさに「価格破壊」である。
この流れはクルマのほか、主要なデジタル家電に急速に波及しつつある。
特筆すべきは、新興国に留まらず、不況に苦しむ先進国の市場でも受け入れられていること。
日本を含め、低所得層が増大しているのだ。

製品の超低価格化は、基本的かつ本質的な機能のほかはすべて切り捨てることによってしか実現できないはず。
ところが、日本の製造業はハイクオリティの追求をモノづくりの金科玉条としてきた。
それが世界中から「メイド・イン・ジャパン」に対する絶大な信頼を勝ち得ることにつながった。
が、ときに日本人にとってさえオーバースペック。
きのうの成功要因はきょうの失敗要因になりやすい。
日本は、製品への高評価がアダとなり、21世紀に台頭したボリュームゾーンの獲得で大きく出遅れた。
巻き返しは容易でない。
まして円高が加わると、戦いが一層不利になる。

なお、日本のメーカーが超低価格品の市場を重視すると、生産は新興国へシフトせざるをえない。
工場の海外移転や生産の海外委託が増加し、国内の生産は縮小する。
部品調達も世界全体に拡大せざるをえない。
国内の部品メーカーは猛烈な逆風に見舞われ、淘汰されるところが出てこよう。
また、先進国の失業率は10パーセントが当たり前だが、日本のそれも上昇していく?

今後、格安の製品を開発・投入できないメーカーは、世界市場での地位とシェアを著しく落とす。
日本の製造業は2010年代、凋落傾向が鮮明になるのか。
短期間で勢力地図が劇的に塗り替えられそう。
クルマと家電はどこが勝者となる?

⇒2009年10月30日「過去の栄光…自動車メーカー凋落!」はこちら。

⇒2009年10月8日「ボリュームゾーン爆発、勢力地図一変!」はこちら。

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