世界フィギュアスケート選手権2011(モスクワ大会)。
昨季の世界王者・高橋大輔は大会を前にし、「プライドはいらない。がむしゃらに…」と語った。
この言葉には今季に対するベテランの反省が込められている。

高橋大輔は、2010年バンクーバー冬季五輪(オリンピック)で銅メダル、その後の世界フィギュアスケート選手権2010(トリノ大会)で金メダルを獲得した。
大きな目標を成し遂げ、今季はモチベーションを上げられなかった。
年齢的にも燃え尽きた感覚が残ったのでなかろうか。
有力選手が相次いで引退し、男子シングルでもっともポピュラーな存在になっていた。

「試合の勝敗にこだわるのでなく、自分の演技を楽しもう…」。

高橋大輔は、前半のグランプリ(GP)ファイナルで4位に終わり、巻き返しを誓った全日本選手権で3位に留まった。
そうか、ファンは競技と演技の間で格闘する姿に感動し、自分を応援してくれたのだと気づいた。
また、そうでなくては結果も残せない。
いつしか戦う気持ちをなくしていた・・・。

⇒2011年4月26日「高橋大輔は2位じゃダメなんでしょうか」はこちら。

高橋大輔は全日本選手権での低い評価(判定)を踏まえ、ショートプログラム(SP)もフリースケーティングもそれぞれの振付師とプログラムの修正を図った。
同時に、技術上の問題点の解決に取り組んだ。
勝敗のカギを握るであろう4回転ジャンプは成功率がかなり高まった。
世界王者として連覇のかかる大会を前に、燃える思いがようやく戻ってきた。

高橋大輔は後半の四大陸選手権で優勝を飾り、調子が上向いていた。
大会の延期はさらなる立て直しの時間を与えたことだろう。

高橋大輔は気持ちを前面に押し出して滑る選手である。
4月上旬、被災者支援のチャリティショーに出演してスイッチが入った。
彼はもちろん金メダルを目指して世界フィギュアに出場する。
が、それにも増して今大会における日本勢の優勝を切望している。
小塚崇彦よりパトリック・チャンのほうをライバル視しているはずだ。

◆書き加え1(4月26日)

先日、公式練習を終えた高橋大輔は今シーズンで一番いい状態と力強く語った。
自分の曲に合わせ、ジャンプ、ステップ、スピンなどを入念にチェックした。
モスクワ入りし、気持ちが劇的に高まった。
手応えを感じているようだ。

男子シングルでは4回転ジャンプを完璧に決められた選手が表彰台の一番高いところに立つのでは・・・。
大会直前、高橋大輔が優勝候補に浮上した。
卓越したスケーティングに4回転ジャンプを加えたカナダのパトリック・チャンは脅威である。
次いで、小塚崇彦、織田信成。
そこに、フランスのブライアン・ジュベールが絡む展開か・・・。
世界フィギュアスケート選手権2007(東京大会)で優勝を飾ったベテランである。

◆書き加え2(4月27日)

このブログはだいぶ前に書いた。

たったいま男子シングルのSPが終わった。
日本勢、とくに高橋大輔に勝ってほしいと考えていた私は言葉を失った。
パトリック・チャンがスケーティングもジャンプも完璧な出来で、目を疑う高得点をマークした。
歴代最高!
高橋大輔と13点近い大差がついた。
フリーで致命的なミスがなければ、そのまま表彰台の頂点へ。
彼の失敗を願うわけにもいかない・・・。

高橋大輔はとにかく確実に丁寧に滑った。
私は、ここまで安全運転にこだわった彼の演技に驚いた。
全体にスピード感が殺された。
昨年の世界王者として、苦しむ日本にどうしても勝利を届けたい。
そうした思いが痛いほど伝わってきた。

結局、織田信成は2位、高橋大輔は3位、小塚崇彦は6位。
全員が最終組でフリーを滑る。
2位以下は混戦。
頂点が難しくても、2選手は表彰台にのぼってほしい。

パトリック・チャンは20歳と若く、2014年ソチ冬季五輪(オリンピック)で優勝候補の筆頭となりそうだ。

◆書き加え3(4月28日)

私は、カナダのパトリック・チャンがSPで圧巻の演技を見せ、しかも隙がなかったので、日本勢の逆転は可能性がゼロに近いと思っていた。
最終組の最初(19番目)に登場し、SPに続いてフリーも歴代最高得点をマークし、この時点で金メダルは決まった。
驚異の 280点超え!

パトリック・チャンはきのうと違い、表情も動きも硬さが感じられた。
しかし、貯金を背景に、余裕を持って滑った。
結局、2位と得点差を広げた。
2010年バンクーバー冬季五輪(オリンピック)における韓国のキム・ヨナがそうだった。
ぶっちぎり!

SP2位の織田信成は20番目に登場した。
パトリック・チャンの直後で非常に滑りにくかっただろう。
とてもよかった。
が、また跳びすぎをやらかした。
この時点でメダルがするりと逃げた。
何ともったいない・・・。
これではファンが離れてしまう。
織田信成は情緒が不安定で、感情の起伏が激しい。
デリケートなフィギュアスケートでは相当なマイナス要因である。
例えば、滑走順を決める抽選での反応でさえそうだ。
一喜一憂しすぎる。
彼が上を目指すうえで最大の課題でなかろうか。

SP3位の高橋大輔は22番目に登場した。
が、冒頭の4回転ジャンプを踏み切ろうとして中断した。
スケートシューズのかかとのビスが抜け、エッジが外れた。
ベテランにして世界の舞台で信じられないアクシデントが起こった。
この時点でメダルは厳しくなった。
高橋大輔は途中からやり直し、最後まで滑り切った。
前年の世界王者、日本のエースとしてのプライドと意地、そして自分を応援してくれるファンへの責任感だ。

SP6位の小塚崇彦は23番目に登場した。
日本勢の2人がメダルから脱落した直後なので、想像を絶するプレッシャーがかかったのでないか。
小塚崇彦は冒頭の4回転ジャンプを決めて勢いに乗った。
ほぼノーミスで終えた。
彼にしては珍しく感情をあらわにして佐藤信夫コーチと抱き合った。
コーチも我を忘れていた。
佐藤信夫は根が熱血なのでは…。

小塚崇彦は日本全体の期待、さらに織田信成と高橋大輔の無念も背負って滑った。
演技に魂がこもっていた。

私は正直、諦めかけていた。
が、小塚崇彦は銀メダルをつかんだ。
そして、日本に唯一のメダルをもたらした。
よくやった!
全日本王者がフロック(まぐれ)でないことを証明した。
何より小塚崇彦はたくましさが備わってきた。

インタビューでは「来年は金メダル・・・」と、明確な目標を口にした。
これまでの彼に見られなかった積極性である。
日本のエースになれ。

                      ◇◆◇

フィギュアスケート男子・高橋大輔に関するブログは以下のとおり。

⇒2011年4月26日「高橋大輔は2位じゃダメなんでしょうか」はこちら。

⇒2011年2月20日「高橋大輔、金メダル宣言…世界選手権東京大会」はこちら。

⇒2010年12月7日「高橋大輔は心に訴えない…内臓を揺さぶる泥臭さ」はこちら。

⇒2010年10月25日「浅田真央を気づかう高橋大輔と村上佳菜子」はこちら。

⇒2010年4月16日「妹真央を兄大輔が気遣う春の園遊会」はこちら。

⇒2010年3月26日「高橋大輔、日本男子初の金メダル!」はこちら。

⇒2010年3月4日「あきれた浅田真央と高橋大輔の言葉!」はこちら。

⇒2010年2月19日「高橋大輔、4回転失敗も銅メダル!」はこちら。

⇒2010年2月19日「高橋大輔、攻めか守りかメダル予想」はこちら。

⇒2010年2月17日「男子フィギュアSP、高橋3位、織田4位」はこちら。

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