私は先日、江東区新砂の物流関連会社で講演を行った。
「ロジスティクス営業(物流営業)」に関する2日間の講義(研修)である。
顧客とのリレーションに基づいた「ルーティン」を尊重するが、それに甘んじていては収益の落ち込みが避けられない。
年々、顧客が倒産や統合(再編)で減り、予算が縮小(削減)や廃止で減るので当然だろう。
そこで、顧客へのソリューションに踏み込んだ「超ルーティン」を重視する。
慣れ親しんだルーティンをはみ出すわけだ。
既存顧客の担当者(窓口・現場)に対する「顔出し⇒御用聞き⇒見積書・仕様書対応」と異なり、営業活動にともなうストレスが大きくなる。
たいていはそれを嫌がり、怖がり、ブレーキを踏む。
会社はじり貧・・・。

⇒2011年6月2日「物流会社で講演・営業研修…セミナーアンケート」はこちら。

⇒2011年6月3日「お客さまに役立ちたい…課題解決営業への転換を決意」はこちら。

このブログは引き続いて…。
受講者から寄せられた研修の感想を紹介しよう。
和田創研のアンケート用紙は簡易であり、文字を書けるスペースは限られている。
そこに細かい丁寧な文字でびっしりと記されていた。

5人目。
30代・男性、物流、営業開発・マネジャー。
「正直なところ、いままでは自社のことを知ってもらおう、分かってもらおうという思いだけでお客さまと会っておりました。
この提案営業研修で、それが全面否定された感じがあります。
第一に“金持ちと接触する”、第二に“相手のことを理解する”という鉄則を大切にしなければならないと、十分に腑に落とせました。

一番印象に残った言葉にも記載しましたが、一番感銘を受けたのは『できることはもうやらない』という言葉でした。
私は常日頃、自分自身のスキルアップを心がけてきました。
また、日々勉強との思いで仕事に取り組んでおりました。
しかし、まず『できることからやろう』=『できることしかやらない』という現実になっておりました。
そうした働き方では自分が“それまで”どまりになるということを、このお言葉で教えていただいたように思います。
昨日の自分より今日の自分、今日の自分より明日の自分…。
どん欲に変わっていかなければ能力開発は決して叶わないということを、学んだお言葉でした。

自分が置かれている環境や状況を十分に理解し、少しずつですが今日の研修で学ばせていただいたことを実行し、わが社を愛していただける存在にします。
かならずや、お客さまより『変わったね』と言っていただけるよう、私は頑張ります。
このたびはまことにありがとうございました」。
一番印象に残った言葉は「できることはもうやらない」。

以上。
まことにありがとうござました。
2日間の研修を通じ、彼の頭がフル回転していたことがはっきりと伝わってくる。
大きい、そして深い学びである。
こうしたアンケートが寄せられるから、過酷な講師稼業をやめられない。
これこそ、私が最大の喜びとするところだ。

営業ができることでお茶を濁していたら、成績はじりじり下落する。
ゆえに、企業も業績がじりじり低下する。

できることとは、勝手を知った既存顧客を回ること。
営業ストレスのほとんどない「ルーティン」に留まっては、じり貧から抜け出せない。

私が職業人生でもっとも大切にしてきたのは、「できることはもうやらない」との誓いである。
これを守って働くなら、おのずと職能強化、キャリアアップ、自己実現につながる。
そう、楽観的に考えた。
実際、私は仕事に関する本を読むなどの「勉強」はまったくやったことがない。
それでも何とかいまの位置に立つことができた。

私は経営コンサルタントとして多くの会社を訪れた。
すると、「失敗を恐れるな。」のようなスローガンをときどき見かける。
これでは社員の意識も行動も変わらない。
社長に「失敗を増やせ。」に改めるべきだと進言してきた。
たいてい目を白黒する。
会社が振るわない道理である。

ところが、私も同じ間違いを犯していたと気づいた。
還暦間近では手遅れである。
「できることはもうやらない」は不可。
「できないことをやる」はOK。

きっかけは、井上雄彦の「手に負えないことをやる」という言葉を知ったことだった。
「できることはもうやらない」と「できないことをやる」はちょっとした違いだが、私は凡人、井上雄彦は超人。
「手に負えないことをやる」は名言である。

⇒2011年3月9日「井上雄彦、人気漫画家の創作を支える信念」はこちら。

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