コンサルタントは本を書いたらおしまいだ。
再建系はとくに…。
仕事は、当事者との対峙というより対決、対決というより格闘に近い。
コンサルタントが試行錯誤の末に築きあげた成果創出のノウハウを外へ出してしまったら、自分が不要になる。
おまんま(御飯)の食い上げだ。
1990年代後半以降、出版社からの執筆依頼をどれほど断っただろう。

概して、再建系のコンサルタントはかなりの場数を踏まないと、なかでも“修羅場”をくぐり抜けないと、自分なりのやり方を固められない。
こうすれば数字を上向かせられるという“勝ちパターン”である。
あるいは、当事者をこの土俵にのぼらせれば取りこぼさないという“十八番(おはこ)”である。
私自身、「営業再建屋」としての信念を持てるようになるまでに歳月を要した。
職業特性上、それはさすがに本に書けない。

コンサルタントはクライアントで目に見えた成果を上げられるなら、そもそも仕事に困らない。
要は、収益をよくする。
実績の積み重ねがものをいう商売だ。

コンサルタントが本を書いているとしたら、次のどちらかでなかろうか。
結果に直結するこれといったノウハウを持っていないか、持っているノウハウをほとんど出していないか。
なお、技術革新の著しい分野では短期間でノウハウが陳腐化する可能性があり、そうなると出しても自分の仕事にダメージは少ないかもしれない。

また、戦略系のコンサルタントは戦略の立案が見込める。
それに対し、私のような行動系のコンサルタントは行動の代行が中心になる。
現場での具体的な「打ち手」を公にしたら、ほかの人でもそれなりに行える。
しかも、それはシンプルなほど有効だ。
当事者に高度なことをやらせる必要はなく、基本中の基本を徹底させるだけでよい。

にもかかわらず、コンサルタントが本を書くとしたら、自分のPR、そして収入の増加が目的だろう。
前者は仕事を増やすためだ。
受託した業務をこなすなかでノウハウが深まる。
後者は本業の収入不足を補うためだ。
この商売を軌道に乗せるまでは仕事がなく、あったとしても安い。
食べていくのは容易でない。

私は駆け出しの頃、知名度と認知度を向上する必要があり、本を書いた。
が、あくまで著者として…。
コンサルタントとして本を書いたことはない。

私は営業の立て直しに絞り込み、そのノウハウを実行することで生計を立てている。

                       ◇

私が還暦を迎えた今年から開催する「丸の内経営サロン」。
講演やセミナー、研修で大勢を対象にしてきた私が、いつかやってみたかった2〜6名を対象にした私塾である。
「コンサルティング感覚」を最大の売りとしており、したがってパンフレットに「同業者はご遠慮ください」と記している。
先に述べた理由からだ。

                       ◇

経営を取り巻く環境は厳しさを増すばかり。
ほとんどの企業が余力を失った。
無駄な出費など、とんでもない。

コンサルタントは成果を創出する力量が一段とシビアに問われている。

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