先だって、首都圏の一部上場企業から「営業立て直し」のコンサルティングに関する相談が寄せられた。
東京駅歩0分の「丸の内経営サロン」で2時間の予定が3時間以上に及んだ・・・。

バブル崩壊後の日本経済の低迷を横目に、同社は高収益を上げた時期が続いた。
しかし、まれな成長分野ゆえに新規参入が相次ぎ、かれこれ5〜6年は業績が落ち目になっている。
ここ2〜3年は非常に厳しい。
先方は中期経営計画(パワポでつくったきれいな資料であり、肝心のスピリッツがこれっぽっちも込められていない)に合わせ、3年程度の指導を打診してきた。
しかも、私がかなりの日数、職場に張り付くスタイルだ。
いまの私には要望に見合うだけのスケジュールを取れない。

トップや当事者など、クライアントが本気になるという前提で述べれば、そんなことをしなくても収益は十分に伸ばせる。
私は必要性がないと断言した。
先方がこだわるやり方は時間もかかるし、したがって費用も膨らむ。
暇なコンサルタントにとり最高のクライアントだろう。

先方は、指導を受けることが“目的”になっているようで、私の話に耳を貸さない。
理由は、これまでそうしてもらったから。
コンサルタントに対する「依存心」が極端に強い。
その癖、成果が上がっていないと愚痴ばかり。
不振企業に共通する典型的なパターンであり、業績をよくするのはコンサルタントだと勘違いしている。
自分たちに決まっている。

私は話を聞いていて、絶望的な気分になってきた。
社員のそばにいて、コンサルタントが事細かな指示を与えてほしいという。
要は、「ああやれ」「ここやれ」。
それでは社員がまるで育たない。
当然、管理者はもっと育たない。
社員と管理者を信じておらず、無能と決めつけている。

コンサルタントを呼ぶ目的はたった一つ、呼ばなくても成果を出せるように変えることだ。
同社みたいなスタンスでは、永久にコンサルタントに依存しつづけなければならない。

なお、相談のなかで、どこでも耳にするコンサルタント会社の名前がいくつか上がった。
実質個人の私に目が向いたのも、営業分野でいくらか名が通っているためだ。
経営層が株主への“言い訳”をはじめから考えている。
ちなみに、業績不振の原因は、コンサルタントの指導が悪いことになっていた。

「私は覚悟を決めて立て直しに臨みます。ですから、そちらも覚悟を決めてください。かならず業績テコ入れは成し遂げられます」。
そう申しあげたが、先方の頭にも心にも響かなかったようだ。
私は本気だ。
しかし、当事者がコンサルタントよりも本気にならなければ、何をやってもダメである。

結局、3時間を超えた話し合いは平行線で終わった。
互いにストレスが募った。
規定どおりの「相談料」を頂戴しているので、文句を垂れる筋合いでないが・・・。

私には、同社は“じり貧”から絶対に抜け出せないという確信しか残らなかった。
数年後か十数年後か分からないが、潰れるか、飲み込まれる。
過去を振り返り、私の直感はしばしば当たる。
危ない上場企業は少なくない。
同社は消えるはずだ。

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