プロ野球はキャンプ真っ盛り。
ルーキーのなかで目を引くのは、菅野智之(すがの・ともゆき)の落ち着きだ。
1年間のブランクを埋めようと入れ込んで当然なのに、そうした様子がみじんも感じられない。
同学年のなかに1軍でそれなりの成績を残した選手がいる。
しかし、菅野智之は焦っておらず、いたって冷静に自分と向かい合う。
決して簡単なことでない。

⇒2013年2月3日「プロ野球12球団キャンプ地巡り…人気は大谷翔平」はこちら。

⇒2013年1月31日「小笠原道大という生き方」はこちら。

対照的なのは澤村拓一(さわむら・ひろかず)。
素晴らしい力を持ちながら、生かし切れていない。
ストレートに対する考え方を間違えている。
直球、それも剛速球を投げることが目的となっている。
今シーズン、原辰徳監督が抑え転向を臭わせ、澤村拓一を揺さぶった。
頭を冷やして2シーズンを振り返り、ストレートに対する考え方を改めなさいということだろう。
実際、澤村拓一は21勝21敗と、貯金はゼロである。
先発投手としての貢献はそれほど大きくない。

子どもの澤村拓一に対し、大人の菅野智之。
澤村拓一は菅野智之の教育係でなかったか(不確か)。

菅野智之は東海大3年生、世界大学野球選手権のキューバ戦で自己最速の 157キロマークした。
それ以来、この記録とともに紹介されてきた。
しかし、本人はスピードにこだわっていない。
それは、両リーグを通じて最高の投手陣を誇る巨人キャンプでの投球練習にはっきりと表れている。
WBC出場メンバーなど仕上がりの早い周囲に惑わされず、あくまでも自分の流儀とペースで着実に階段を上っている。

本格派投手と、大きな期待が寄せられる即戦力ルーキーが最初につまずく主因がスピードへの過剰意識である。
澤村拓一も一貫して直球の速さにこだわり、出来がきわめて不安定だった。

菅野智之は、ゆったりとした動きから腕をしっかりと振り、力のあるボールを低めに投げ込む。
阿部慎之助が初めてボールを受けた後で報道陣に語ったのは、「軸になるピッチャーになってほしい」だった。
最高のほめ言葉だ。
菅野智之は主戦級の雰囲気、それも大物の風格さえ漂わせる。
川口和久投手総合コーチもべたぼめ。
多くの野球評論家が二けた勝利を予想する。

私は、菅野智之はケガがなければ新人王は固いと思う。
ひょっとして15〜20勝。
同じ背番号「19」をつけていた上原浩治のように新人で巨人の勝ち頭となり、セ・リーグで最多勝に輝くかもしれない。
ちなみに、上原浩治は新人の1999年、20勝4敗で最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率を制し、史上10人目、新人としては史上3人目の投手4冠を達成した。
また、新人王と沢村賞を獲得した。

菅野智之はブランクとされた1年間にメジャーを含めた野球を見つづけ、ストレートはボールのキレ、ピッチングは低めへのコントロールが決定的に重要との結論を得た。
実は、上原浩治がそうだった。
菅野智之は変化球を織り交ぜたブルペンでの投球練習そのものがクレバーである。
柳ブルペン捕手が「球が速くて何でも投げるのはダルビッシュ有くらい」「抜ける球が1球もない」と絶賛した。

原辰徳監督はドラフト会議で1位指名が確定した夜、菅野智之に背番号19のユニフォームを着せた。
「迷わずこの番号に決めました」。
上原浩治の姿と重なって見えたのか。
菅野智之は1年目から巨人のエースとして活躍する可能性がある。

                       ◇

私は先日、澤村拓一が今シーズン、「脱力投球」をテーマに掲げていると知った。
力んで棒球になり、幾度も痛い目を見た昨シーズンの反省を踏まえてのものだろう。
澤村拓一もよく考えていたのだ!
今シーズンは先発としての価値と適性を問われる。
結果を出せないと自分の希望を押し通せず、中継ぎや抑えに回らざるをえない。

澤村拓一は1年下の菅野智之の存在がとてもいい刺激になっている。
二人が巨人の投手陣を引っ張っていきそうだ。

◆書き加え1(2月7日)

菅野智之は「カーブが好不調のバロメーター」と語った。
カーブは全身を使い、下半身が粘れないと、うまく抜くことができない。

桑田真澄のような大きく縦に割れるドロップカーブが持ち味だ。
かつては堀内恒夫や江川卓など、カーブを決め球にするエースがいた。

菅野智之は多彩な球種を持つが、150キロ前後の直球と110キロ前後のカーブの緩急差がピッチングの生命線なのだとか。
カーブをうまく投げられるときは、他の球も調子がいいらしい。

ブルペンでの投球練習で直球の後にカーブを投げているのもそのせいだ。

                      ◇◆◇

澤村拓一と菅野智之に関するブログは以下のとおり。

⇒2012年11月6日「澤村拓一MVP、やせがえる久保田千寿」はこちら。

⇒2012年10月26日「菅野智之、晴れて読売巨人軍入団…ドラフト単独指名」はこちら。

⇒2011年12月4日「沢村拓一、山口鉄也・松本哲也・長野久義に続く新人王」はこちら。

⇒2011年11月21日「菅野智之、入団拒否…勇気ある決断を擁護する」はこちら。

⇒2011年11月5日「横浜DeNAベイスターズ、原辰徳監督就任、菅野智之1位指名なら人気回復!」はこちら。

⇒2011年10月29日「菅野智之…巨人油断、ドラフト一本釣り詰め甘く大失態」はこちら。

⇒2011年10月27日「菅野智之、巨人を逆指名…長野久義、澤村拓一に続け!」はこちら。

⇒2011年10月23日「菅野智之は横浜と巨人が指名…ドラフト会議12球団1位予想」はこちら。

⇒2011年6月7日「澤村拓一の面構えとオーラ…真っ向勝負の魅力!」はこちら。

⇒2011年4月21日「澤村拓一、巨人黄金伝説の扉を開ける」はこちら。

⇒2011年2月12日「沢村拓一は伝説の投手になれ…城之内邦雄」はこちら。

⇒2011年2月11日「沢村拓一に開幕投手テスト…巨人原辰徳監督」はこちら。

⇒2011年2月7日「沢村拓一が宮崎牛に舌鼓…巨人1軍キャンプ」はこちら。

⇒2011年2月4日「沢村拓一15番、斎藤佑樹18番…実力はどちら?」はこちら。

⇒2011年2月3日「勝ち星予想…沢村拓一・斎藤佑樹・大石達也」はこちら。

⇒2010年11月14日「東海大・菅野智之は巨人、興南・島袋洋奨は中央大」はこちら。

⇒2010年11月12日「沢村拓一は巨人の開幕投手、即沢村賞も…」はこちら。

⇒2010年11月6日「公家の斎藤佑樹と武士の沢村拓一…セ・パ交流戦対決」はこちら。

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