私がユーチューブの動画で偶然見つけた華原朋美の「夢やぶれて」。
日本のポップス界にこの曲をこんなにうまく歌える女性がいると知り、びっくりした。
例のスーザン・ボイルが歌い、一段と有名になったミュージカル「レ・ミゼラブル」の劇中曲である。
華原朋美は、凄絶な熱唱を縦糸に、絶妙な情感を横糸に、孤高の世界を紡いでみせた。

逆光のなかのたたずまいは、息を飲むほど美しい。
歌唱もさることながら存在が光り輝いている。
オーラをまとい、すでに「歌姫」の風格さえ漂う・・・。



華原朋美は地獄から這い上がった直後だった。
心底、歌いたかったのだろう。
自らの生きざまをさらけ出し、吹っ切れたかのよう。
深い「情念」と突き抜けた「潔さ」が何の違和感もなく溶け合う。

声質は個性的な魅力に溢れている。
歌唱は聴く者の魂を激しく揺さぶる。

甘く切なく歌うのだが、同時に猛々しい。
伸びやかでありながら、きわめて力強い。
オーケストラをバックにどこまでも響き渡る。

私には、過去と現実の世界に足を踏ん張りながら、未来と希望の世界に何かを託そうとしているふうに聞こえた。
根ざしの決意と飛翔への思い。

華原朋美は、この曲はこう歌うというミュージカルの常識にとらわれていない。
彼女の「夢やぶれて」はとても自由でダイナミックである。
それでも前を向き、夢を追いつづけているからだ。

以下に、「華原朋美・夢やぶれて…天性の歌唱と存在感」と題する7月15日のブログをそのまま収める。

                      ◇◆◇

私は、ルーシー・ヘンシャルが歌う「I Dreamed A Dream」が好きで、ときどき思い出したようにユーチューブの動画を探す。
「レ・ミゼラブル」の劇中歌である。
そのときに、華原朋美が歌う「夢やぶれて」を知った。



プロデューサー・小室哲哉の楽曲を歌う一人というほかに、私は彼女のことをほとんど知らない。
実際のヒット曲さえも・・・。

しかし、ユーチューブの動画でたまたま聴き、華原朋美の突出した才能に驚いた。
編集・加工が施されたプロモーションビデオとはいえ、素晴らしい出来である。

華原朋美の「夢やぶれて」は全体を通し、歌謡曲を歌ってきた人の経験がおのずと生きており、プラスに働いている。
分かりやすく親しみやすいのだ。
通俗的な歌唱は説得力があり、聴く側の感情移入を容易にする。
自分の思いを伝え、大衆の心をつかむ天性のようなものを備えている。
一時代を築いた人気歌手は実力も十分だった。

華原朋美はかなり力を入れ、声を張りあげて歌っている。
が、甘く切ない声質で、しかも引きずる歌い方のため、情感があふれ出る。
細い体に似合わず、中音は迫力に富む。

また、華原朋美は演技者としての存在感も際立っていた。
振付などの指示を出している裏方がいるのだろうが、立ち位置や姿勢、そして表情や仕草が巧みである。

私は彼女についてインターネットで少し調べてみた。

華原朋美は小室哲哉との破局をきっかけに、スターの座を転げ落ちていった。
精神の疾患、薬物への依存、仕事の放棄など、いろいろな問題を引き起こしたようだ。
そして、所属していたプロダクションから契約を打ち切られた。
芸能活動の事実上の引退は2007年。

華原朋美は、家族と周囲の協力に支えられ、一番の難題だった薬物依存から抜け出した。
そして、ようやく人間としての再起、歌手としての復帰への道を歩みはじめた。

華原朋美が半生と重ね合わせ、自らを奮い立たせようと選んだ楽曲が「夢やぶれて −I DREAMED A DREAM−」だった。
とことん歌い込んだのだろう。
万感を体ごとぶつけながらも、感性を研ぎ澄まし、破たんのない音楽世界を築いている。

彼女の熱唱には、過去のさまざまな苦悩と困難が詰まっている。
同時に、それを乗り越え、未来へ生きようとする意志が込められている。
その強く深い魂の叫びが、大きな感銘を与える。
が、こうした背景を知らなくとも、聴くものを激しく揺さぶる。

ただし、私個人は、甘さと感情をもうちょっと抑えてほしかった。
どこかに危うさともろさが感じられる才能である。
それが華原朋美の魅力につながっているのは確かだが・・・。

余談。
40歳に近いと知り、もう一度驚いた。
スタイルが抜群!
スレンダーなのにグラマラス、とてもセクシー・・・。

華原朋美は、愛を歌える。
女の弱さと背中合わせに生きてきたからかもしれない。
私は、一世を風靡した「中森明菜」がちらっと思い浮かんだ。

Copyright (c)2013 by Sou Wada

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