ソチオリンピック、スキージャンプ男子ラージヒル個人が終わった。
私は、レジェンド葛西紀明を応援したく、実況で見た(伝説という意味)。
世界のジャンパーから尊敬を集める。

葛西紀明は絶好調という手応えを感じたのか、練習を思い切って抑えていた。
自信の表れといえる。

1回目、48番目。
葛西紀明は向かい風を受けて 139.0m、ほぼヒルサイズのビッグジャンプを見せた。
特有のきれいな飛形姿勢で 140.6点。
ポーランドのカミル・ストッフとわずか 2.8点差の2位につけた。
彼はノーマルヒルで金メダルを獲得している。
もちろん、逆転可能。

ただし、風がきわめて不安定な状態であり、運・不運にメダル争いが左右されそうである。
気まぐれな風に恵まれるかどうか。

「石の上にも三年」という言葉がある。
私自身の半生を振り返った実感では、「崖の縁にも三年」であり、「石の上なら七年」である。
3年程度で努力が報われるのか、はなはだ疑わしい。

人生、おそらく何事も努力を超えた執念が物を言う。
織田信長は、「人間(じんかん)五十年」という一節をとくに好んだ。
葛西紀明は16歳から、冬季五輪史上最多7度目の出場となる41歳である。

2回目、29番目。
風のコンディションが悪く、ゲートが2段下がっていた。
葛西紀明は、最後の勝負はテレマークになるかもしれないと語っていた。
カミソリサッツの鋭い飛び出し、そして体を目一杯使ったV字飛行。
「神風葛西」は、私には“空飛ぶカエル”みたいな飛行姿勢に見える。
本人によれば、モモンガ。
飛行機をイメージしている。

葛西紀明は大ジャンプで、テレマークをほぼ完璧に入れた。
133.5m、136.8点で、277.4点。
この時点で1位に立ち、銀メダル以上が確定した。
日本の3選手が即座に駆け寄って祝福!

しかし、恐ろしく冷静なライバル、カミル・ストッフは葛西紀明と同等のジャンプを見せた。
得点がなかなか出ない。

かなり間があり、カミル・ストッフはソチ2冠を成し遂げた。
葛西紀明はわずか 1.3点差で銀メダルに留まった。
長野オリンピック、ラージヒルの船木和喜の金メダル以来、日本に16年振りとなる個人メダルをもたらした。

私は悔しい。
が、おめでとう。
素晴らしかった!!!
悲運のエース、葛西紀明はすべてを乗り越え、初の個人メダルをつかんだ。

不撓不屈の葛西紀明は当然、平昌オリンピックを目指すのでないか。
五輪代表から漏れたときが引退だろう。
これほど分かりやすい男はいない。
私は、単純明快な人が好きだ。
まだ現役でやれるかもしれないのに、急いで引退することはない。

銀メダルを獲った葛西紀明は直後のインタビューで、金メダルという目標ができたと喜んだ。
すごすぎるといえばそのとおりだが、ソチの日本代表にもぜひ考えてほしい。
私は、素晴らしくかっこいい生きざまだと思う。

◆書き加え1(2月16日)

おそらく二人の勝負に風はほとんど影響しなかった。

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