1958年「張込み」野村芳太郎監督 ★★★★

松本清張の推理小説が原作。
文学的な要素が色濃く感じられ、松本清張の映画作品のなかでベストでしょうか。
「強盗殺人犯の男が3年前に分かれ、いまは人妻となった女に会いに行くはず」。
そうした読みから、二人の刑事が女の自宅を張り込みます。
そして、目にしたのは、それぞれの人生のつらい性(さが)と男女の切ない愛でした。

映画の始まりがとくに秀逸です。
私はこの時代に直江津駅(新潟県)から上野駅へ向かった記憶がぼんやりと残っており、それを懐かしく思い出しました。
昔の長距離移動はとても大変でした。

映画では冒頭、二人の刑事が深夜に横浜駅から鹿児島行きの急行列車「さつま」にぎりぎりで飛び乗り、佐賀駅へ向かいます。
おそらく深夜に現地へ着き、翌日に張り込み先の真正面に宿を見つけたところで映画のタイトルが現れます。
ここまでがかなり長いのですが、飽きさせることはありません。
それどころか映画の世界に惹き込まれていきます。
全編に刑事系作品の緊迫感と愛情系作品の情念がみなぎっています。

モノクロ作品が懸命に生きる人間とその日々を浮かびあがらせ、普遍性を備える名作となりました。
この映画にかけた監督の熱が伝わってくる素晴らしい出来栄えです。
感動しました。

◇◆◇

以下は、和田創の映画評価に共通する趣旨とあらましです。

私が観てよかったと感じた映画について「★」を付します。
正確に述べれば、作品の評価というより、自分が繰り返して観るかどうかの手がかりです。
(私はすぐに忘れてしまいますので・・・。)
好き嫌いはおのずと反映されますが、といってそれだけでもありません。
作品の価値に対する感想も込めています。

実は、huluが5月17日に全面リニューアルを行った際、私が覚えのつもりで残してきた視聴作品の★がすべて消えました。
(この変更は改悪でした。)

このブログで幾度も述べていますが、仕事人間の私はパソコンの画面の片隅で流すという“ながら視聴”になります。
映画ファンに叱られてしまう接し方です。
しかし、ちゃんと観ようとしたら、おそらく永久に映画を楽しめません。

それゆえ、ストーリーが単純でないと厳しい。
また、語学がさっぱりなので邦画でないと厳しい。
★はいい加減な直観にすぎず、次に観たときには変わるかもしれません。
それでも、皆さまの鑑賞にいくらか参考になれば幸いです。

★は普通、★★★★★は最高、☆は★の半分。
(★はわりとよい。★★はかなりよい。★★★はとてもよい。★★★★はおおいによい。★★★★★は素晴らしい。)

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