四大陸の内容は悪いとは思えない

宇野昌磨の苛立ちがピークに達しているように見えた四大陸フィギュアスケート選手権でした。
何に腹を立てているのかというと、自分の「不甲斐なさ」に対してです。

宇野昌磨は自分に勝つことが先決

宇野昌磨はGPシリーズ「フランス杯」、GPファイナル、全日本選手権と不安定な演技が続いていました。
全日本選手権で連覇を果たして初の五輪代表を決めたものの悔しさから眠れず、「自分に勝てていない。人に勝つ前に自分に勝ちたい」ともやもやをぶちまけました。

SPで今シーズン4度目の百点台

ところが、ショートプログラム(SP)を目前に不思議な心境になりました。
「ずっと失敗してきたので、いい演技をさせてあげたいという他人事のような・・・」と語っています。
苦悩で気持ちが弱くなったときにこうした精神状態に陥ります。
自分と闘うことに疲れ、耐えられなくなってしまうのでしょう。

SPが終わり、予想どおり宇野昌磨が今シーズン4度目の百点台で1位に立ちました。
意外だったのは中国の金博洋(きん・はくよう。ボーヤン・ジン)が自己ベストを更新し、自身初の百点超えを果たしたことです。
宇野昌磨は100.49点、金博洋は100.17点、両者の得点差はわずか0.32点。
宇野昌磨はまずまずでしたので、金博洋が大健闘です。

宇野昌磨は縮こまった自分に失望

ヴィヴァルディの「四季」の「冬」に乗せて冒頭の4回転フリップを決めました。
しかし、演技後半の4回転トウループ−3回転トウループのコンビネーションジャンプの3回転を2回転に切り替えています。

五輪王者の羽生結弦や前回覇者の米国のネイサン・チェンが出場せず、ライバルとなるのは金博洋くらいでした。
「自分の気持ちを小さくしすぎた」「攻めるという気持ちもなくて、体が動いていない」。
反省の言葉が次々と口を衝きました。
縮こまって堅実策に逃げた自分に失望したのでしょう。
滑りにスピードとキレを欠き、ステップでもレベル2と取りこぼしています。

フリースケーティング(FS)では、サルコウを抜いた3種類4本の4回転ジャンプという平昌五輪を戦うプログラムで臨みます。
「ジャンプは攻めているといえる構成ではないので、ジャンプ以外を攻めたい」と誓いました。

FSで転倒、金博洋に逆転される

そのFSではSP1位の宇野昌磨がFS197.45点、297.94点で初優勝を逃すという、まさかの展開になりました。
中国の金博洋がFS200.78点、300.95点で逆転優勝を飾っています。
(SP4位の米国のジェイソン・ブラウンが3位に入っています。)

宇野昌磨は冒頭の4回転ループをきれいに決めたように見えましたが、回転不足を取られています。
そして、続く4回転フリップで転倒しました。

ミスを引きずらず演技を立て直す

しかし、その後はミスを引きずらずにまとめています。
トリプルアクセルで2.29点のGOE(出来栄え点)を得ました。
4回転トウループ−2回転トウループのコンビネーションジャンプ、単独の4回転トウループ、トリプルアクセル−1回転ループ−3回転フリップの3連続ジャンプでもやはりGOEを得ています。

ステップシークエンスがレベル3に留まりましたが、スピンはレベル4を得ています。
鬼門になっていた4回転トウループを2本そろえられたことは収穫になりました。
また、「フリップに失敗しても立て直す練習をしてきた」と語ったとおり、後半に挽回できたことも自信になります。

金博洋はGPファイナルを足首の故障で欠場しましたが、今大会ではその影響を感じさせない滑りを見せました。
冒頭の4回転ルッツは素晴らしい出来で、2.71点のGOEを得ています。
完全復活といえますが、私は本番で日本勢のライバルにならないと思います。

ネイサン・チェンとの三つどもえ

宇野昌磨はオリンピックの金メダルを意識したTシャツをつくったり、金色の新衣装に変えたり、それ以前にFSで「トゥーランドット」を選んだり・・・。
勝負のシーズンに得点を伸ばそうと焦り、ジャンプ構成が揺らぎました。
4年に一度の大舞台への欲と不安がせめぎ合った結果でしょう。
(本番のFSは荒川静香などの金メダリストに多い青色の衣装で滑るようです。)

宇野昌磨としては勝った勢いで平昌五輪へ乗り込みたかったはずですが、それが叶いませんでした。
とはいえ四大陸選手権の内容は決して悪くなく、むしろ希望が持てると思います。
復帰戦の羽生結弦、今シーズン5戦負けなしの米国のネイサン・チェンとの三つどもえになります。
(正直に述べれば、私は宇野昌磨と羽生結弦の2強対決になるといまだに考えています。)

⇒2018年1月26日「四大陸フィギュア選手権女子シングル結果」はこちら。

◇◆◇

宇野昌磨に関するブログは以下のとおり。

⇒2018年1月26日「宇野昌磨は四大陸選手権で五輪プログラムを滑る」はこちら。

⇒2018年1月11日「四大陸フィギュア2018へ、宇野昌磨は立て直し」はこちら。

⇒2018年1月5日「宇野昌磨、平昌五輪へ調子が急降下」はこちら。

⇒2017年12月22日「宇野昌磨が全日本選手権でピリッとしないわけ」はこちら。

⇒2017年12月17日「宇野昌磨はそろそろ羽生結弦から独り立ちせよ」はこちら。

Copyright (c)2018 by Sou Wada

人気ブログランキング←応援、よろしく!