紀平梨花の魅力が引き立つ曲調と振付
リンクに吹き荒れる美しい躍動感
ザギトワと比べてGOEと演技点が低すぎ

フィギュアスケート・グランプリ(GP)シリーズ第4戦「NHK杯」女子シングル、フリースケーティング(FS)。
紀平梨花の滑りは豊かな才能に恵まれた超新星の誕生を鮮明に印象づけるものでした。

紀平梨花の3回転半、濱田美栄の0回転

NHKの映像(動画)は繰り返して見ても飽きません。
魂を揺さぶられるような感動を覚えます。
紀平梨花の演技を見守った濱田美栄コーチの細い目が潤んでいるようでした。
(紀平梨花が単独のトリプルアクセルを決めると同時に濱田美栄コーチも0回転ジャンプをきれいに決めています。)

流れるようなナチュラルなスケーティング

力感、スピード、ダイナミズム、のびやかさ、しなやかさ、躍動、生命力・・・。
紀平梨花は体幹が強いのでしょう、全身が一本(一枚)のバネです。
それが、流れるようなナチュラルなスケーティングを支えています。

FSは地球の誕生をテーマとしたジェニファー・トーマス「ビューティフル・ストーム」です。
(Jennifer Thomas「A Beautiful Storm」。)
曲調がよくマッチし、しかも振付がシンプルで大きく、どこかユーモラスな要素も織り込まれています。
紀平梨花の身体能力の高さを際立たせるとともに魅力をいかんなく引き出しています。

⇒2018年11月27日「紀平梨花、音を筋肉で感じ取り再現する才能」はこちら。

紀平梨花がリンクで放つオーラがまぶしい

彼女はひたむきで着実な努力を重んじる濱田美栄コーチの門下生であり、全日本選手権4連覇を遂げた「練習の虫」宮原知子と身近に接しています。
紀平梨花も頑張り屋ということは承知していますが、それでも最後の最後は才能が決め手になるということを、この選手の滑りを見て改めて思いました。

この選手がリンクで放つ輝きはまぶしい。

⇒2018年11月12日「紀平梨花はエキシビションで女王のオーラ」はこちら。

(2018年11月30日執筆)

category:紀平梨花ブログはこちら。

◆書き加え(12月7日)

「RIKA劇場」など海外メディアも絶賛

フィギュアスケート・グランプリ(GP)ファイナル女子シングル、ショートプログラム(SP)。
海外メディアが紀平梨花の圧巻の舞いに絶賛の声を送りました。
「RIKA劇場」「ショーの主役を盗んだ」「完全無欠」など、大興奮とともに伝えています。

ドビュッシー「月の光」の調べに合わせて滑り出し、冒頭のトリプルアクセルをクリーンに決めると波に乗りました。
3回転フリップ―3回転トウループのコンビネーション、後半の3回転ルッツを決めています。

演技全体から立ち昇るかのような質感!

優雅な情感も込められ、演技全体から立ち昇るかのような質感が素晴らしい。
観客席では日の丸が掲げられ、割れんばかりの大歓声と拍手が起こりました。
アリーナ・ザギトワが「ロステレコム杯」で記録した 80.78点を上回る世界最高得点を叩き出しました。

FSでトリプルアクセルを2度跳ぶ予定です。
私は 230点を余裕で超えると思っていましたが、 240点に届きそうな勢いを感じます。

◆書き加え(12月8日)

GPファイナルはFS2本で 240点超え

紀平梨花はSPとFSの中間日の公式練習で本番衣装を着て調整に当たりました。
トリプルアクセルに10度挑みました。
最初の1本で転倒しましたが、それ以降は9本連続で着氷し、好調を維持しています。
練習とはいえ、手応えをつかんでいます。

主要大会のSPでは今シーズンで初めてトリプルアクセルを決めました。
FSでは、会場を熱狂させたNHK杯を上回る滑りを見せてくれることでしょう。
私は2本のトリプルアクセルを組み込んだプログラムを予定どおりこなせば 160点超えもあると考えており、そうなるとやはり合計 240点超えです。

紀平梨花は表現力でもザギトワより優れる

紀平梨花は試合ごとに表現力が増し、演技構成点(PCS)が伸びています。
最初から最後まで途切れない滑りと動きが心地よく、ジャンプはもちろんステップやスピンが見事に融和しています。
私は今大会のSPでもアリーナ・ザギトワより優れると思いました。
(6選手で一番です。)
また、紀平梨花の高難度ジャンプのGOEが低いと感じました。

紀平梨花の 82.51点が低すぎるか、アリーナ・ザギトワの 77.93点が高すぎるかどちらかです。
おそらくオリンピックの金メダリストということで採点がちょっと甘くなっています。

二人の演技の「完成度」はだいぶ違いますので、採点ルール改定の趣旨をきちんと反映するならば、点差がもっと開かないとおかしい。

◆書き加え(12月9日)

気負いのない清々しい芸術性が素晴らしい

濱田美栄コーチはSPで紀平梨花をリンクに送り出す際に「トリプルアクセルだけじゃない。ほかもうまくなっている」と声をかけたそうです。
選手の緊張と不安を和らげながら自信を持たせており、さすがです。
しかし、私はごく短期間で著しく実力を高めたと思います。
とくに表現面の洗練度に目を見張ります。
この選手は気負いのない清々しい「芸術性」が素晴らしい。

GPシリーズ2戦からGPファイナルSPまでを振り返ると、紀平梨花が負ける要素が見つかりません。
それでも、心身のかすかな変化で演技、なかでも高難度ジャンプが壊れます。
本番では何が起こるか分かりませんし、フィギュアスケートの魅力でもあります。

ただいま午前1時半を回っています。
日本時間の朝にFSが行われはずで、数時間後に結果が出ます。
はたしてどうなるでしょう。
私の祈りが現地に届きますように・・・。

◆書き加え(12月9日)

シニア1年目GPファイナルは余裕の勝利

おめでとう、紀平梨花!
2005年の浅田真央以来13年振りとなるシニアデビューシーズンGPファイナルで優勝を飾りました。
また、日本勢としては2013年の浅田真央以来5年振りとなるGPファイナル優勝を飾りました。
FSも1位の150.61点、合計233.12点でした。

本人は試合後の会見で「緊張していなかった」と語っています。
どうでしょう、私は演技全体にいくらか硬さを感じました。

しかし、4番滑走のアリーナ・ザギトワの得点が伸び悩みましたので、たいしたプレッシャーはかかりませんでした。
(多少のミスを犯したところで負けることはありません。)
この選手は頭がとてもいい。

⇒2018年11月26日「紀平梨花は頭もいい、超新星は超クール、GP連勝は当然」はこちら。

それと、演技中も恐ろしく冷静です。
冒頭のトリプルアクセルのコンビネーションで両手をつき、単発に留まりました。
しかも、回転不足(ダウングレード判定)で減点です。
最悪の出だしにも紀平梨花は慌てることなく失点をリカバーしていきました。
(私の勝手な推測ですが、リカバーできるように紀平梨花と名づけられたはずです。)
NHK杯のFSに及びませんが、 150点台はまあまあかな。
伸び代が相当あります。

「楽勝」というと語弊がありますが、世界選手権では 240点台に確実に乗せます。

◆書き加え(12月9日)

作曲者が紀平梨花の世界一美しい嵐に感謝

紀平梨花が「ビューティフル・ストーム」のピアノの調べに乗せ、世界一美しいスケーティングで世界中のファンを魅了しました。
16歳とは思えない表現力と芸術性を備えています。
それは意図するというよりも、筋肉と対話する内面の発露です。
だから、とてもナチュラルなのです。

⇒2018年11月27日「紀平梨花、音を筋肉で感じ取り再現する才能」はこちら。

「私の音楽を見事に表現してくれた」と作曲者のジェニファー・トーマスが称賛しました。
この女性ピアニストは、最新アルバム「The Fire Within」がビルボードのクラシックアルバム部門で発売1週目にベスト3に入った人気アーティストだそうです。

◇◆◇

紀平梨花に関するブログは以下のとおり。

⇒2018年12月8日「紀平梨花、メンタルとGOEであっさりと世界最高得点」はこちら。

⇒2018年12月7日「紀平梨花とザギトワ、GPファイナル2018直接対決」はこちら。

⇒2018年12月6日「紀平梨花はGPファイナルでザギトワに勝てるのか」はこちら。

⇒2018年12月5日「紀平梨花、シニア1年目のブレーク、逆転劇の理由」はこちら。

⇒2018年12月4日「紀平梨花にのしかかる「ポスト浅田真央」の重圧」はこちら。

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