4位と、表彰台にあと一歩届かず
三原舞依は何かが足りない・・・

全日本選手権でSPとFSを揃える

「全日本フィギュアスケート選手権2018」の女子シングル。
三原舞依は表情や表現、質のいいジャンプを跳ぶなどの充実した練習を積むことができたので、本番では楽しんで滑りたいと抱負を語っていました。

ショートプログラム(SP)で「イッツ・マジック」を滑りました。
緊張が感じられません。
冒頭の3回転ルッツ―3回転トウループのコンビネーションを決めています。
回転不足は取られませんでした。
ダブルアクセル、3回転フリップも決めています。
今シーズンの自己ベスト 72.88点の高得点で3位につけました。
1位の宮原知子と3.88点差です。

フリースケーティング(FS)で2年連続の「ガブリエルのオーボエ」を滑りました。
(今シーズンは結果を求めたのかもしれませんが、曲を変えてほしかった。)
冒頭の3回転ルッツ―3回転トウループのコンビネーションから最後の3回転サルコウまで見事に決めています。
7本すべてのジャンプに1点以上のGOE(出来栄え点)がつきました。
「天使のイメージで滑り切れたら」と話していたとおり、伸びやかに流れるように舞いました。
そして演技後に両手を突き上げています。
147.92点、合計220.80点といずれも国際大会の自己ベストを大きく上回り、4位になりました。
ちなみに自身初となる 220点台です。

平昌五輪の代表最終選考会を兼ねた昨年の全日本選手権は5位に沈みました。
夢を逃した悔しさを踏み台にし、この1年間を懸命に過ごしてきました。
今大会では何よりSPとFSをノーミスで揃えました。

三原舞依は長年の課題だった「体力強化」に取り組んでいます。
地道なトレーニングの成果が表れ、今シーズンの演技の好調と安定につながりました。
が、それでも全日本選手権で表彰台に届いていません。
紀平梨花がいきなりブレイクしなければ3番手になっていたはずであり、世界選手権に出場を果たしました。
勝負の世界はとても厳しい。

審判員にアピールする力がやや弱い

仮に3位以内(トップスリー)に入ることを「勝つ」と呼ぶとして、三原舞依は何かが足りない・・・。
私は全日本選手権で破たんのない演技に魅せられたのですが、それはなぜだろうと考えました。
しいていえば、欠点がないということが欠点でなかろうか。
平たく言えば、品よくまとまりすぎているのかもしれません・・・。

無難な人生を送りたいと願いつつ、波乱万丈の人生しか送れなかった私には、無難すぎる演技です。
彼女の演技にどこかしらつきまとう「退屈さ」もそこに起因しています。

三原舞依は大舞台でアピールする力がやや弱く、観客や審判員を突き刺せません。
細分化された採点基準が厳格に適用されるといっても、所詮は人が判断することです。
なかでもPCS(演技構成点)はTES(技術要素点)に比べ、その傾向が強い。
ここで上積みを図れません。
(全日本選手権ではもうちょっと得点が高く出てもいいと思いました。)

選手はそれぞれに資質や個性などの持ち味があり、それを大切にすべきです。
三原舞依は「きよらか」で「やわらか」な演技で観客を包み、癒し、幸せにしてくれます。
ひらがなの形容が似合うのですが、見終わった途端に印象が薄れやすい。
それと、前に見たような錯覚に陥ります。
かなり損をしています。
例えば、SPとFSで曲調や振付を明確に切り分け、全体的な印象や雰囲気を変えるなどの工夫が必要でしょう。
(昨シーズンに失敗した「大人の女性への変身」をなぜやめたのか不思議です。)

スケーティングの速さと強さが大事

それと一番大事なのは「スケーティング」のダイナミズムだと思います。
パフォーマンスの土台は滑りの速さと強さのメリハリです。
観客が緩急や強弱に身を委ねられる感覚が乏しい。
(こちらが受動的に味わえても能動的に関われない。)
芸術性を重んじた演技といっても「切れ」がないと心をえぐるような、あるいは魂を揺さぶるような感動が得られません。

しかし、それは体自体の強靭性やコンディションと深く関わるのかもしれません。
坂本花織や紀平梨花と単純に比べられないのは承知しています。

三原舞依はシニア1年目の2016年、前年12月に発症した全身の関節が痛む「若年性特発性関節炎」を乗り越えて復帰しました。
今大会と同一会場で行われた全日本選手権でいきなり3位と表彰台に食い込み、世界選手権代表を射止めました。
翌年2月に初出場の四大陸選手権で金メダルを獲得し、ファンの期待が高まりました。
が、五輪切符をつかもうと難度を高めた演技に挑んだ昨シーズンは苦しみました。
(判断が難しいところですが、挑戦はオリンピックシーズン以外のほうが結果がいいように思います。)

完治しない難病らしく、三原舞依がどれくらい追い込んだ練習を積めているかは分かりません。
薬の副作用もまま出るようで、見た目は優雅でも実際には過酷なフィギュアスケートを行うにはハンディを負っています。

だからなおさら、私は三原舞依に全日本選手権の表彰台に立ち、世界選手権に出てほしい。
あとちょっとで一流選手の仲間入りができるところまできていると思うのですが。
いま必要なのは、調和より破壊です。
おそらく自らの限界を突き破らないと大舞台で勝てません。

2月の四大陸選手権はゲンのいい大会のはずですから、表彰台の頂点に再び立ってほしい。
勝負事ですから、演技者の勢いが大切になります。

category:三原舞依ブログはこちら。

◇◆◇

三原舞依に関するブログは以下のとおり。

⇒2018年11月29日「三原舞依はGPシリーズ自己最高2位にうれしさと悔しさ」はこちら。

⇒2018年11月15日「三原舞依は地力があり演技が安定している」はこちら。

⇒2018年11月15日「三原舞依の幸福感に満ちた演技世界を楽しむ」はこちら。

⇒2018年11月10日「三原舞依はGPシリーズNHK杯で遅れを取り戻す」はこちら。

⇒2018年1月13日「三原舞依は四大陸選手権で今年も勝てるか」はこちら。

Copyright (c)2018 by Sou Wada

人気ブログランキング←応援、よろしく!