主要な国際大会で勝てるかどうか
スピードや勢いをイメージしながらTV観戦

女子シングルはハイレベルな戦い

「全日本フィギュアスケート選手権2018」が行われました。
女子シングルは今年一年を締め括るにふさわしいハイレベルな戦いになりました。
とりわけ上位4選手が茶の間に最高のクリスマスプレゼントを届けてくれました。

私はたいてい仕事に追われながらデスクトップパソコンの画面の片隅でテレビ放送を流しています。
熱心なフィギュアスケートファンに叱られそうな、いい加減な視聴です。
が、できるだけ自分が会場で観戦しているつもりで、選手のスピードや勢いをイメージするように努めています。

テレビカメラはずっと選手を追いかけ、ときにクローズアップしますので、こちらも細かいところに注意を奪われがちですが、それがすべてではありません。
なかでも主要な国際大会で高得点を叩き出すには、身のこなしと一体になったスケーティングのダイナミズムが不可欠となります。

私はそれを五輪連覇の羽生結弦(けがで欠場)だけでなく宇野昌磨にも感じますし、紀平梨花にも感じます。
全日本選手権であっても世界の大舞台で勝てるかどうかという観点を大切にして眺めています。
トップ争いを演じられるのはこの3選手だと改めて思いました。

全日本フィギュア女子シングルの結果

全日本選手権の結果(順位・得点)は次のとおりです。

1位 坂本花織(24番滑走)
   228.01点(152.36点 79.11点 73.25点 0.00点 75.65点)
2位 紀平梨花(20番滑走)
   223.76点(155.01点 82.95点 72.06点 0.00点 68.75点)
3位 宮原知子(23番滑走)
   223.34点(146.58点 71.49点 75.09点 0.00点 76.76点)
4位 三原舞依(22番滑走)
   220.80点(147.92点 78.15点 69.77点 0.00点 72.88点)
※点数はFS(TES、PCS、減点、SP)です。

フリースケーティング(FS)を終えて4選手が 220点台を叩き出すという手に汗を握る展開になりました。
ご承知のとおり、幕切れはとてもドラマチックでした。
国際スケート連盟(ISU)非公認記録とはいえ、日本女子の質の高さと層の厚さが伝わってきました。

参考までにショートプログラム(SP)の結果を記します。

1位 宮原知子(29番滑走)
   76.76点(40.54点 36.22点 0.00点)
2位 坂本花織(20番滑走)
   75.65点(41.08点 34.57点 0.00点)
3位 三原舞依(19番滑走)
   72.88点(39.48点 33.40点 0.00点)
5位 紀平梨花(27番滑走)
   68.75点(36.54点 33.21点 1.00点)
※点数はSP(TES、PCS、減点)です。

スケート靴を含め、コンディションづくりで苦しんだ紀平梨花は逆転不能と思われる5位に沈みました。
シニア1年目、今シーズン前半の肉体的・精神的な疲労も限界に達していたのかもしれません。
何せ全日本選手権まで国際大会4戦4勝です。

得点は1位と2位、3位と4位が僅差

全日本選手権での女子シングルの順位はあれでいいのでしょう。

私は素人なので点数をつけられませんが、SPとFSが終わるたびにこれくらいかなと予想しています。
これも観戦の楽しみの一つです。
印象にすぎませんがまったく的外れかというと、わりと当たります。

全日本選手権の得点にはいささか違和感を覚えました。
坂本花織がだいぶ高く、紀平梨花がやや低く、宮原知子がやや高く、三原舞依はやや低いと感じました。
坂本花織と紀平梨花が 225点を挟み、宮原知子と三原舞依が 222点を挟むニュアンスです。

SPとFSを揃えたのは中野園子コーチ門下の三原舞依と坂本花織です。
それに対し、濱田美栄コーチ門下の宮原知子と紀平梨花はミスが出ています。
宮原知子はFS、紀平梨花はSPとFSです。

坂本花織はFSがこれまでで一番といえる会心の演技でしたが、あそこまでの点数が出るかというとかなり疑問に思いました。

それぞれの選手のFSの出来はどうだったのでしょう。

20番滑走紀平梨花は終盤で痛恨のミス

SP5位から大逆転を狙った紀平梨花はFS1位でしたが、順位は2位に留まっています。
結果として、大差を引っ繰り返しての勝利は全日本選手権で難しいというジンクスどおりです。

先に述べたとおり、SPでの出遅れは使い古したスケート靴の問題が関わるとされましたが疲労の蓄積に加え、爆発的に高まった期待の重圧も影響したはずです。
しかし、紀平梨花は中1日でどちらもクリアし、FSでトリプルアクセル2本を決めています。

慎重になったせいか、スケーティングにも演技にも伸びやかさがやや欠けました。
が、ほぼパーフェクトに滑り終えられそうだと思った終盤、3回転ルッツ−2回転トウループ−2回転ループの3連続ジャンプで痛恨のミスが出ました。
万事休す。

最初の着氷が乱れてステップアウトになりましたが、次をオイラーに変え、2回転サルコウをつけています。
オイラーが回転不足を取られるなどし、リカバリーに至りませんでした。
それでも冷静な「修正力」が光りました。

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23番滑走宮原知子は時間を巻き戻せず

SP1位から5連覇を狙った宮原知子はFS4位になり、順位は3位に終わりました。
演技後に振り返り、「時間を巻き戻したい」と語りました。
後半の3回転フリップ−2回転トウループ−2回転ループの3連続ジャンプで2回転フリップの単発になるという痛恨のミスです。
次をダブルアクセル−2回転トウループ−2回転ループの3連続ジャンプに変えています。
回転不足を取られがちだったジャンプの見直しを進めていますが、まだ固まっていません。
ここで、紀平梨花、三原舞依、坂本花織に大差をつけられています。
(ジャンプ構成の難度を引き上げないと来シーズンは厳しくなります。)
ただし、演技構成点はただ一人、5項目で9点台を並べました。

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24番滑走坂本花織は「総合力の勝利」

SP2位から逆転を狙った坂本花織はFS2位になり、順位は1位になりました。
昨年はSP1位から宮原知子に逆転されて2位に甘んじました。
もともと安定感のある選手ですが、SPとFSを揃えて初優勝を飾りました。

ジャンプは紀平梨花はもとより三原舞依に及びません。
いくらかですが詰まったジャンプ、ふらついたジャンプも多かった。
それでも大きなGOE(出来栄え点)を引き出しています。
スピンも1番です。
さらに、芸術性や表現力を評価する演技構成点が伸びています。
宮原知子に及ばないものの、精彩を欠いた紀平梨花を上回りました。

勝者に特有の勢いで磁場(演技世界)に引き込み、高得点を叩き出しました。
「総合力の勝利」という声は間違いでありませんが、この得点を主要な国際大会で再現できるかというと、私はイメージが湧いてきません。

category:坂本花織ブログはこちら。

22番滑走三原舞依はSPもFSも完璧

三原舞依こそ、SPもFSも破綻のない演技を揃えました。
一番クリーンな印象でしたが、実際には表彰台に届きませんでした。
また、3位に食い込んだとしても世界選手権代表に選ばれたかどうかは微妙です。
(メディアにもあまり取り上げられていません。)
三原舞依については思うところをブログにまとめています。

⇒2018年12月28日「三原舞依は好調・安定の演技、欠点がないという欠点」はこちら。

全日本選手権は表彰式も済みました。
私は順位に異論はありませんが、得点にちょっと違和感を覚えます。
また、1位が紀平梨花、2位が坂本花織、3位が三原舞依、4位が宮原知子になったとしても驚かなかったはずです。
1位と2位、3位と4位は接戦でした・・・。

category:三原舞依ブログはこちら。

紀平梨花に世界で勝利をつかめる予感

来シーズンにロシアのジュニア勢がシニアに上がってくると女子シングルの勢力図はどうなるか読めません。
(私はかならずしも悲観しているわけでありません。)
が、今シーズンに関しては全日本選手権の上位4選手がおおよそそのまま世界のトップ4に相当します。
日本女子はそれくらい強いです。
(成長期に特有の壁にぶつかり、エフゲニア・メドベージェワとアリーナ・ザギトワが得点を落としています。)
ここに本来なら、爆発力の樋口新葉とセンスの本田真凜が絡んできます。
(天性の才能に恵まれた本田真凜はどん底でもがいており、再生を果たせるかどうかは不明です。)

私は遠からず皆が横一線で並びそうだと感じており、そのなかで一人図抜けていると思うのが紀平梨花です。
不調だった全日本選手権の滑りを含め、世界で勝利をつかめるという予感に満ちています。
(すでにGPファイナルで果たしていますが・・・。)
優雅なSP「月の光」でさえも、スケーティングに迫力があります。

世界選手権は日本勢が表彰台独占の快挙

私の予想です。
日本勢と戦えるロシア勢がいませんので、表彰台を独占します。
3選手は安定感も備えています。

1位 紀平梨花  246点(84点 162点)
2位 宮原知子  228点(78点 150点)
3位 坂本花織  222点(74点 148点)

紀平梨花の得点には大きな期待を込めました。
本音をいえば、「240点(82点 158点)」で十分です。

宮原知子の得点にもそれなりの期待を込めました。
本音をいえば、「224点(76点 148点)」で十分です。
GPファイナルで取られた回転不足などはスケート靴が合わなかったことが主因のようですが、緊張の高まる今シーズン最大のイベントでどうなるでしょう。

坂本花織の得点はどうしてもクリアしてほしい最低点です。
オリンピックを経験済みですから大丈夫でしょう。
全日本選手権と同等の演技を行えたとして、どれくらいの評価を得られるか。
本人も知りたいところでしょう。

・・・と高得点を書き込むほうは気楽ですが、選手はとんでもなく大変です。
ごめんなさい。

「日の丸」3本は痛快です。
私は世界選手権の開幕が待ち遠しい。

category:紀平梨花ブログはこちら。

◆書き加え(12月31日)

全日本選手権の動画を見て改めて思う

紀平梨花はスケーティングに品格と迫力が備わっています。
突き詰めた、そして張り詰めた「美しさ」を感じます。
腰の動きと下半身の使い方にキレがあり、普通に滑っていても躍動感があります。
親から授かった身体が強くてしなやかだからでしょう。
一歩一歩に加速があり、変な言い方になりますが膝の下の伸びが他の選手と違います。
フィギュアスケートの土台となるスケーティングの要素は得点(採点)にもっと反映されていいと思います。
全日本選手権の動画を改めて見ましたが、やはり別格です。

それと三原舞依の得点は低いと思います。

◇◆◇

紀平梨花に関するブログは以下のとおり。

⇒2018年12月30日「賢い紀平梨花は4回転ジャンプを跳ばない」はこちら。

⇒2018年12月26日「紀平梨花と高橋大輔は神、全日本フィギュア視聴率」はこちら。

⇒2018年12月25日「紀平梨花と宇野昌磨はまとも、世界選手権の重圧」はこちら。

⇒2018年12月23日「なんでかな紀平梨花、トリプルアクセル赤面転倒」はこちら。

⇒2018年12月21日「プロが絶賛、紀平梨花の天性のスケーティング」はこちら。

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