メンタルコンディションづくり
大舞台へ独自の流儀を編み出す
フィギュアスケート女子シングルの紀平梨花。
いわゆる「心技体」が揃わなくては主要な国際大会で勝利を収めることはできません。
フィギュアスケートではグランプリ(GP)ファイナル、世界選手権、そしてオリンピックが大舞台と呼べます。
心技体のうち、技術と身体についてはわりと把握しやすい。
もっとも難しいのは心理(精神)を把握することです。
技術や身体が優れているのに大舞台で勝利を収められない選手は珍しくなく、おおよそ「メンタルが弱い」とされてきました。
しかし、そう表現しても何の解決にもなりません。
「メンタルコンディションづくり」ができなかったと考えるのが実践的です。
私がシニアデビュー1年目、16歳の紀平梨花について感じたのは、このメンタルコンディションを整える能力の高さです。
それをどのように習得していったのでしょう。
勝つべくして勝つことが可能に
不思議な気がしますが、紀平梨花はジュニア時代に順位の変動がかなり激しい選手でした。
得点源の「トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)」が不安定だったことが主因です。
成功したときの精神状態や心理状態。
失敗したときの精神状態や心理状態。
紀平梨花は試合経験を積むなかで、その「事実」を踏まえ、高難度ジャンプを跳ぶコツをつかんでいったのでしょう。
失敗にとらわれず、あくまで成功と対比しつつ、自分にとっての理想的な精神状態や心理状態を導き出しました。
それにより、勝つべくして勝つことが可能になります。
そして、そのためには事実を正確に記憶することが前提となります。
実際には難しいので、紀平梨花はノートなどに記録します。
(若い世代ですから、紙媒体を使っていないかもしれません。)
なるべく時間を置かずに書き留め、かならず振り返る。
紀平梨花はこの地道な作業を通じ、試合に臨むメンタルコンディションを整える独自の流儀を編み出していきました。
そのタイミングがジュニアからシニアへの移行期、つまり今シーズンに当たりました。
濱田美栄コーチでさえ読めなかった大ブレイクでした。
「失敗から学ぶ」とよくいいますが、失敗の経験を成功へ反映させられる人は一握りです。
私を含め、たいてい似たような失敗を繰り返して一生が終わります。
反省より内省、自己分析が深い
反省より内省。
紀平梨花は「自己分析」が的確で深いように思います。
それが緊張の高まる試合でのミスを冷静にリカバーする「修正力」にもつながります。
そもそも反省などサルでもできるわけで、私は反省を繰り返すうちに70歳を迎えようとしています。
世界の大舞台で頂点に立つには「頭のよさ」が必須になります。
紀平梨花はこの点においても際立っています。
だれかに教わるのでなく、自ら粘り強く考える力が突出しています。
おそらく「自問自答」が習慣になっているのです。
さらに、この子は勝負師にふさわしいシビアな「リアリスト」の側面も持っているように感じます。
願うだけ、追うだけでは「夢」は叶えられません。
世界選手権など大舞台ほど強い
先に挙げた大舞台のうち、オリンピックだけは4年に1回の開催になります。
わずかな体形変化や体重増加などで得点源のジャンプに狂いが生じる繊細なフィギュアスケーターにとって長いスパンといえます。
オリンピックの金メダルはピークが重なった選手が獲得するという運の要素が大きい。
とくに女子選手はそうです。
したがって、成長期を迎えている紀平梨花については先行きがどうなるかを見通せません。
(このブログで述べていますが、私は壁にぶつかっても乗り越えられると思っています。)
しかし、毎年開催のGPファイナルや世界選手権は勝つべくして勝つことのできる紀平梨花が得意とする大会のはずです。
いまではジャンプを中心とした技術要素点(TES)に加え、表現力などによる演技構成点(PCS)でも世界トップクラスになりました。
私は期待せずにはいられません。
ファンは応援している選手が優勝を収めるとうれしいものです。
が、点数と順位がすべてと思っているわけではありません。
重圧のかかる本番で至難でしょうが、何より選手が演技を楽しんでほしいと望んでいます。
紀平梨花はそれができる選手と私は考えています。
(1月16日執筆)
category:紀平梨花ブログはこちら。
◆書き加え(1月20日)
本田真凜と紀平梨花に大きな差
「反省」という言葉はとても使うのが難しい。
その気になってしまうところが怖い!
反省は、多分に情緒的です。
したがって、まま「涙」がともないます。
人は涙を流すといくらか気持ちが晴れ、再びやる気が湧いてきます。
しかし、何かが変わるわけでありません。
同じ失敗を繰り返して涙を流します。
内省は、多分に分析的です。
敗北(失敗)と向かい合い、その原因を自らの言葉で明確に表そうとします。
目に見えた成長(進化)は内省によってしかもたらされません。
私は16歳の紀平梨花が失敗後に語る自己分析がきわめて「具体的」であることに驚かされます。
表情にあどけなさを残しているのに、この子はとんでもなくすごい。
私は戦後生まれの男ですから涙を流しませんが、反省を繰り返してもほとんど何も変えられずに70歳を迎えようとしています。
このザマです。
ともに素晴らしい才能に恵まれながら、本田真凜と紀平梨花に大きな差がついた原因もこの辺りにありそうです。
反省は、私みたいな凡人がやることです。
上に立つ、まして頂点に立とうとする人がやることではありません。
◇◆◇
紀平梨花に関するブログは以下のとおり。
⇒2019年1月19日「魂が救済される滑り・・・紀平梨花は美しい」はこちら。
⇒2019年1月13日「紀平梨花は4回転ジャンプ競争元年に笑顔」はこちら。
⇒2019年1月9日「紀平梨花は米国合宿へ、ブラッシュアップと滑り込み」はこちら。
⇒2019年1月8日「紀平梨花は期待の重圧に寝つかれず」はこちら。
⇒2019年1月6日「紀平梨花はコスチュームにセンスとこだわり」はこちら。
Copyright (c)2019 by Sou Wada
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大舞台へ独自の流儀を編み出す
フィギュアスケート女子シングルの紀平梨花。
いわゆる「心技体」が揃わなくては主要な国際大会で勝利を収めることはできません。
フィギュアスケートではグランプリ(GP)ファイナル、世界選手権、そしてオリンピックが大舞台と呼べます。
心技体のうち、技術と身体についてはわりと把握しやすい。
もっとも難しいのは心理(精神)を把握することです。
技術や身体が優れているのに大舞台で勝利を収められない選手は珍しくなく、おおよそ「メンタルが弱い」とされてきました。
しかし、そう表現しても何の解決にもなりません。
「メンタルコンディションづくり」ができなかったと考えるのが実践的です。
私がシニアデビュー1年目、16歳の紀平梨花について感じたのは、このメンタルコンディションを整える能力の高さです。
それをどのように習得していったのでしょう。
勝つべくして勝つことが可能に
不思議な気がしますが、紀平梨花はジュニア時代に順位の変動がかなり激しい選手でした。
得点源の「トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)」が不安定だったことが主因です。
成功したときの精神状態や心理状態。
失敗したときの精神状態や心理状態。
紀平梨花は試合経験を積むなかで、その「事実」を踏まえ、高難度ジャンプを跳ぶコツをつかんでいったのでしょう。
失敗にとらわれず、あくまで成功と対比しつつ、自分にとっての理想的な精神状態や心理状態を導き出しました。
それにより、勝つべくして勝つことが可能になります。
そして、そのためには事実を正確に記憶することが前提となります。
実際には難しいので、紀平梨花はノートなどに記録します。
(若い世代ですから、紙媒体を使っていないかもしれません。)
なるべく時間を置かずに書き留め、かならず振り返る。
紀平梨花はこの地道な作業を通じ、試合に臨むメンタルコンディションを整える独自の流儀を編み出していきました。
そのタイミングがジュニアからシニアへの移行期、つまり今シーズンに当たりました。
濱田美栄コーチでさえ読めなかった大ブレイクでした。
「失敗から学ぶ」とよくいいますが、失敗の経験を成功へ反映させられる人は一握りです。
私を含め、たいてい似たような失敗を繰り返して一生が終わります。
反省より内省、自己分析が深い
反省より内省。
紀平梨花は「自己分析」が的確で深いように思います。
それが緊張の高まる試合でのミスを冷静にリカバーする「修正力」にもつながります。
そもそも反省などサルでもできるわけで、私は反省を繰り返すうちに70歳を迎えようとしています。
世界の大舞台で頂点に立つには「頭のよさ」が必須になります。
紀平梨花はこの点においても際立っています。
だれかに教わるのでなく、自ら粘り強く考える力が突出しています。
おそらく「自問自答」が習慣になっているのです。
さらに、この子は勝負師にふさわしいシビアな「リアリスト」の側面も持っているように感じます。
願うだけ、追うだけでは「夢」は叶えられません。
世界選手権など大舞台ほど強い
先に挙げた大舞台のうち、オリンピックだけは4年に1回の開催になります。
わずかな体形変化や体重増加などで得点源のジャンプに狂いが生じる繊細なフィギュアスケーターにとって長いスパンといえます。
オリンピックの金メダルはピークが重なった選手が獲得するという運の要素が大きい。
とくに女子選手はそうです。
したがって、成長期を迎えている紀平梨花については先行きがどうなるかを見通せません。
(このブログで述べていますが、私は壁にぶつかっても乗り越えられると思っています。)
しかし、毎年開催のGPファイナルや世界選手権は勝つべくして勝つことのできる紀平梨花が得意とする大会のはずです。
いまではジャンプを中心とした技術要素点(TES)に加え、表現力などによる演技構成点(PCS)でも世界トップクラスになりました。
私は期待せずにはいられません。
ファンは応援している選手が優勝を収めるとうれしいものです。
が、点数と順位がすべてと思っているわけではありません。
重圧のかかる本番で至難でしょうが、何より選手が演技を楽しんでほしいと望んでいます。
紀平梨花はそれができる選手と私は考えています。
(1月16日執筆)
category:紀平梨花ブログはこちら。
◆書き加え(1月20日)
本田真凜と紀平梨花に大きな差
「反省」という言葉はとても使うのが難しい。
その気になってしまうところが怖い!
反省は、多分に情緒的です。
したがって、まま「涙」がともないます。
人は涙を流すといくらか気持ちが晴れ、再びやる気が湧いてきます。
しかし、何かが変わるわけでありません。
同じ失敗を繰り返して涙を流します。
内省は、多分に分析的です。
敗北(失敗)と向かい合い、その原因を自らの言葉で明確に表そうとします。
目に見えた成長(進化)は内省によってしかもたらされません。
私は16歳の紀平梨花が失敗後に語る自己分析がきわめて「具体的」であることに驚かされます。
表情にあどけなさを残しているのに、この子はとんでもなくすごい。
私は戦後生まれの男ですから涙を流しませんが、反省を繰り返してもほとんど何も変えられずに70歳を迎えようとしています。
このザマです。
ともに素晴らしい才能に恵まれながら、本田真凜と紀平梨花に大きな差がついた原因もこの辺りにありそうです。
反省は、私みたいな凡人がやることです。
上に立つ、まして頂点に立とうとする人がやることではありません。
◇◆◇
紀平梨花に関するブログは以下のとおり。
⇒2019年1月19日「魂が救済される滑り・・・紀平梨花は美しい」はこちら。
⇒2019年1月13日「紀平梨花は4回転ジャンプ競争元年に笑顔」はこちら。
⇒2019年1月9日「紀平梨花は米国合宿へ、ブラッシュアップと滑り込み」はこちら。
⇒2019年1月8日「紀平梨花は期待の重圧に寝つかれず」はこちら。
⇒2019年1月6日「紀平梨花はコスチュームにセンスとこだわり」はこちら。
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