高橋大輔と宇野昌磨は表現力に定評
昌磨の成長とともに類似性が薄れる

フィギュアスケート男子シングル、32歳の高橋大輔、そして21歳の宇野昌磨。
高橋大輔が現役に復帰したため、全日本選手権で二人の演技をほぼ同時に楽しむことができました。
(むろん全盛期は異なります。)
熾烈な表彰台争いで高得点が飛び出した女子シングルに対して男子シングルは低調でしたが、二人の活躍は救いとなりました。

どちらも「表現力」に定評があり、宇野昌磨は当初から高橋大輔への憧れを口にしていました。
表現力が高いということは、音をとらえるのがうまいということが前提です。

高橋大輔と宇野昌磨は体格や体形が似ており、滑り方も似てきて不思議はありません。
深いエッジ使いでしっとり・ねっとり余韻を残します。
滑り方と音のとらえ方が似ており、結果としてどちらも演技に「色気」が生まれます。
そういうことも関係し、高橋大輔が引退して宇野昌磨を応援するようになったファンも少なくないはずです。
気質が穏やかであり、性格が親しみやすいところも似ています。
大半が羽生結弦のファンに流れたわけではありません。

二人の演技は「芸術性」が香ります。
しかし、この言葉はかなり曖昧であり、さまざまな捉え方や使い方がされてきました。
全日本選手権では結果として両者を比べて見ることができ、違いがはっきりしました。
それぞれ個性的なスケーターであり、類似性が薄れていると思いました。
おそらく宇野昌磨が経験を積み、成長を遂げるとともに自らにしっくりする演技世界を築いてきたからでしょう。

思い切って述べれば、同じ芸術性でも高橋大輔は感情寄り、宇野昌磨は感性寄りです。

高橋大輔は人間臭さ、ときに猥雑ささえ感じさせます。
身体の内側から表現欲求があふれ出ており、演技の訴求力が際立ちます。
自分の世界に惹き込む力が強く、こちらも感情移入をしやすい。
高橋大輔を特徴づける「エンタテイメント性」は練習で身につけられるものでありません。
「絵」になるのは天分が備わっているからであり、唯一無二の存在として私の記憶に残っています。
また、大きな意味のダンスがうまく、リズムを刻んだりステップで魅せたりするのが得意です。
この選手は人を楽しませる天才です。

category:高橋大輔ブログはこちら。

宇野昌磨は繊細さや透明性、さらに心地よい清潔さを感じさせます。
表現にあくの強さがありません。
総じてクラシカルな印象であり、鑑賞するといった気持になります。
それくらい美しい。
さらに、内省的であり、いまの選手らしく分析的な側面を持っています。
宇野昌磨は演技から真面目な意思が伝わってきて、好感を持てます。
音楽のニュアンスを流れるようなスケーティングと身のこなし、四肢の動きで伝えるのが得意です。

宇野昌磨は高橋大輔を尊敬しているはずですが、いまでは憧れの対象でなくなったと思います。
(そもそもすべての先人は超えるために存在します。)
自らの表現と技術を究めることに精一杯でしょう。
フィギュアスケートも他の競技と同様、時代につれて進化を遂げており、そうした意味において全盛期の高橋大輔を超えています。
また、そうでなければとても世界のトップクラスで戦えません。

2022年北京五輪金メダル獲得へ向け、宇野昌磨らしく突き進んでほしい。
(世界選手権で勝って当然の相手、米国のネイサン・チェンを倒さないとだめです。)

category:宇野昌磨ブログはこちら。

◇◆◇

宇野昌磨に関するブログは以下のとおり。

⇒2019年1月23日「宇野昌磨と紀平梨花はチャレンジカップで仲よしになれ」はこちら。

⇒2018年12月29日「宇野昌磨はネイサン・チェンに負け癖」はこちら。

⇒2018年12月22日「宇野昌磨は高橋大輔と全日本選手権を盛り上げる」はこちら。

⇒2018年12月20日「宇野昌磨はなぜ僅差の2位に留まるのか」はこちら。

⇒2018年12月20日「宇野昌磨ファンはすかっとした気分を味わえず」はこちら。

Copyright (c)2019 by Sou Wada

人気ブログランキング←応援、よろしく!