FS「ビューティフル・ストーム」
ジェニファー・トーマス作曲
トム・ディクソン振付

私は紀平梨花がシニア1年目で滑るフリースケーティング(FS)「ビューティフル・ストーム」が大好きです。
この「振付」を手がけたのが米国のコーチ・振付師のトム・ディクソンです。
紀平梨花の身体能力と運動神経を限界まで引き出すとともに、美しさを際立たせています。
選手と切り離して語れませんが名作のプログラムだと思います。

それ以前に「選曲」がよかった。
紀平梨花は美的センスも優れ、どのような曲がマッチするかを知っています。
「A Beautiful Storm」は米国の音楽家、ジェニファー・トーマスが「地球の誕生」をテーマに作曲しています。
私は動画で彼女がピアノもバイオリンも弾ける作曲家と知りました。
ダイナミックでありながら、繊細で静謐な美しさを湛えたピアノ曲です。

⇒2019年2月13日「紀平梨花、慈愛が息づく深くて静かな華」はこちら。

明快で心地いい旋律のなかに荒々しさと知性が融合しています。
これまでのいかなるスターとも異なったタイプの「華」を持つ紀平梨花にふさわしい。

ジェニファー・トーマスは紀平梨花が優勝を収めたグランプリ(GP)ファイナルの会場で応援していたそうで、目の前であれほど芸術的に滑ってくれたら、さぞかしうれしかったことでしょう。
冒頭に跳び、高く鋭く回転するトリプルアクセルは「竜巻」を思い起こさせます。
世界中のファンが注視するなか、センセーショナルな演技となりました。

バランスの取りにくい動きや姿勢を詰め込み

話を戻し、FSのプログラムはよくぞここまでバランスの取りにくい動きや姿勢を詰め込んだと感心します。
私には「罰ゲーム」みたいな振付に見えます。

トム・ディクソンは試したかった振付を紀平梨花に託したのかもしれません。
並の選手だと、体が分解しそうな無理が盛りだくさんです。
振付師の意図どおりに滑るには、「瞬発力」と「持久力」に加え、フィギュアスケートの「技術力」と「表現力」が不可欠になります。

振付が素晴らしいのは確かですが、より素晴らしいのはむろん紀平梨花です。

私が驚くのが、そんな過酷なプログラムを紀平梨花はしなやかでのびやかな身のこなしで滑り切ります。
彼女の最大の魅力である「ナチュラルスケーティング」はいささかも乱れることがありません。

⇒2018年12月21日「プロが絶賛、紀平梨花の天性のスケーティング」はこちら。

最後の3回転サルコウからフィニッシュポーズまでの十数秒の動きは美しさに感嘆させられますが、選手は滅茶苦茶大変そうです。

ビューティフル・ストームの生命力は弱まる

四大陸選手権のFSではトリプルアクセルが1本だったにもかかわらず、2本跳んだGPシリーズ第4戦「NHK杯」での自己ベスト154.72点(TES 87.17点/PCS 67.55点)に迫る153.14点( 82.74点/ 70.40点)という高得点でした。

大会前に紀平梨花はコロラドで10日間の強化合宿を行い、トム・ディクソンの指導を仰ぎながら表現のブラッシュアップに努めました。
顔の表情や向け方、目線の使い方など、演技の完成度がかなり高まりました。
私がとくに感じたのは腕の動きに明確な意味が込められたことです。

⇒2019年1月28日「紀平梨花は視線がうつろに泳ぐ瞬間がある」はこちら。

ただし、演技の熟成と引き換えにシーズン当初の「ビューティフル・ストーム」のいくらか粗っぽさの残った奔放な「生命力」は若干弱まりました。
やむをえないことです。

⇒2018年12月9日「紀平梨花、ビューティフル・ストームの生命力」はこちら。

紀平梨花は今月末にオランダで行われる「チャレンジカップ」を経て、3月にさいたまで行われる「世界選手権」へ挑みます。
今シーズンは全7試合でFSは1位の得点を記録してきました。
つまずくことの多かったSPをクリアしたうえで最高のパフォーマンスで最終戦を締めくくってくれるでしょう。

category:紀平梨花ブログはこちら。

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紀平梨花に関するブログは以下のとおり。

⇒2019年2月14日「紀平梨花はそれでもSPでトリプルアクセルを跳ぶのか」はこちら。

⇒2019年2月13日「紀平梨花、慈愛が息づく深くて静かな華」はこちら。

⇒2019年2月11日「紀平梨花がやばい、リングを嵌める左手薬指関節が腫れる」はこちら。

⇒2019年2月11日「紀平梨花と宇野昌磨はけがも金メダルも仲よし」はこちら。

⇒2019年2月10日「逆転優勝の紀平梨花、結果オーライで喜べない」はこちら。

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