勝ちたい気持ちが強すぎて冷静さを失う
ダブルアクセルならザギトワを追う展開

世界フィギュアスケート選手権女子シングル。
注目の紀平梨花は今大会の公式練習で19日を除き、初日18日と本番20日はジャンプが絶不調でした。
とくにショートプログラム(SP)本番当日は昼過ぎのサブリンクでの最終調整で代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を4度しか決められませんでした。
何度か回転が抜け、2度も転倒し、これまでの彼女からは想像できないほどの不出来です。

SP「月の光」の曲かけ練習でもトリプルアクセル、3回転フリップ−3回転トウループ、3回転ルッツのうち、コンビネーションの後ろのジャンプが抜けています。
得点源の高難度ジャンプが崩壊してしまったと感じるほど精度が落ちました。

SPが行われ、紀平梨花は冒頭のトリプルアクセルがパンクして0点になる痛恨のミスが出ました。
得点は 70.90点でまさかの7位発進です。

いまさら言っても仕方ありませんが、ダブルアクセル(2回転半ジャンプ)に落としたほうがよかった。
これならSP1位を僅差で追う展開になりました。
このジャンプが0点だと6点差で追う展開になり、トップ選手がベストコンディションで臨む世界選手権での逆転はそれほど容易でありません。

世界選手権11点差は自力で逆転できない

ところが、最終滑走のアリーナ・ザギトワがルール改定後の自己ベストの 82.08点を叩き出す想定外の展開になりました。
今シーズンは成長期の壁にぶつかってジャンプが崩壊しており、表彰台争いにも絡めないと予想されていました。
直前滑走の紀平梨花が大失敗を犯しており、プレッシャーを感じずに滑れたということも関係しているでしょう。

それでも、紀平梨花がダブルアクセルに変えていれば6点差で追う展開になり、逆転の可能性はいくらか残りました。
世界選手権SPでの 11.18点差はあまりに大きく、アリーナ・ザギトワがフリースケーティング(FS)でよほどのミスを犯さないかぎりは引っ繰り返せません。

アリーナ・ザギトワもエフゲニア・メドベージェワも公開練習で復調の気配を見せていました。
二人ともロシア国内でジュニア勢に押され、猛烈な危機感を抱いて調整に励んできました。
エフゲニア・メドベージェワも 74.23点で4位発進であり、今シーズンの成績を考えれば大健闘といえます。

持ち味の緩い性格、柔軟な判断はどこに

このブログで幾度か述べていますが、オリンピックシーズンを除けば最大のイベントとなる世界選手権前に4回転ジャンプの特訓を行うことは無謀です。
来シーズンに4回転ジャンプを跳ぶロシアのジュニア勢がシニアに上がってくることを念頭に置き、いつでも投入できるようにしておきたかったのでしょう。
早めに対策を講じたともいえますが、焦り(あせり)とも受け取れます。
そもそも彼女らは体形が少女に近く、成長期を迎えるこれからも跳べるかどうかは未知数です。

紀平梨花は今シーズン国際大会6戦6勝の快進撃を続け、初出場初優勝の期待がかかっていました。
国内でも海外でも優勝候補筆頭に挙げられていました。

演技後、本人は重圧を否定しましたが、私はそうでないと思います。
「勝たなければ」という気持ちが強すぎて、コンディション次第でダブルアクセルに落とすという「冷静さ」をすっかり失っています。
あらかじめ3本などと表明する必要はさらさらなかったのです。
重圧に負け、緩い性格、柔軟な判断という持ち味を忘れました。
公式練習で安定せず、しかも国際大会のSPで1度しか決めていないトリプルアクセルにこだわったのが不可解です。

⇒2019年3月10日「紀平梨花、世界女王へトリプルアクセルは2本か1本か」はこちら。

トリプルアクセルは構えすぎ、力みすぎ

紀平梨花は表情が硬く、滑りも動きもいつものスピードと伸びやかさがありませんでした。
とりわけトリプルアクセルは構えすぎ、力みすぎでしょう。
3回転フリップ−3回転トウループのコンビネーションと両手を上げての3回転ルッツも練習の不出来を引きずっており、彼女らしいジャンプといえません。

紀平梨花は「自分に集中しすぎていた。もっとまわりを見渡さないといけなかった」「感覚が合わなかった」と独特の言い回しをしました。
FSでトリプルアクセルを2本跳ばざるをえない状況に追い詰められました。
(ライバルは自分に数点差で続かれるのが一番嫌だということが分かっていません。)

紀平梨花は自力優勝がなくなり、表彰台に上れるかどうかも危うくなっています。
最終組で滑れないのは屈辱でしょう。
せめて自己ベストを出したいと考えています。

category:紀平梨花ブログはこちら。

◇◆◇

紀平梨花に関するブログは以下のとおり。

⇒2019年3月20日「紀平梨花はSP首位なら記録尽くめの世界選手権初制覇」はこちら。

⇒2019年3月16日「紀平梨花専属トレーナー橋本大侍が明かす強さの秘密」はこちら。

⇒2019年3月15日「世界選手権で唯一勝てるとしたらトゥクタミシェワ」はこちら。

⇒2019年3月10日「紀平梨花、世界女王へトリプルアクセルは2本か1本か」はこちら。

⇒2019年3月9日「世界選手権で紀平梨花の最大のライバルはだれか」はこちら。

Copyright (c)2019 by Sou Wada

人気ブログランキング←応援、よろしく!