期待の重圧に歯車が狂いはじめる
作戦ミス、負けるべくして負ける

紀平梨花が最大の目標としてきた世界フィギュアスケート選手権で歯車が狂いはじめています。
その原因はファンと国民から寄せられる大きな期待の重圧です。
かつての浅田真央も想像を絶するプレッシャーがかかった状況で滑ってきました。

まして、紀平梨花はシニア1年目の今シーズンはここまで国際大会6戦6勝の快進撃を続けてきました。
国内でも海外でも圧倒的な優勝候補に挙げられていました。
世界選手権の初制覇を成し遂げれば、女子シングルはもちろん男子シングルを含めて記録尽くめになります。
日本のライバルとなるロシアでも今大会を諦める空気が早々と流れ、だれもが「勝って当然」と考えていました。

⇒2019年3月20日「紀平梨花はSP首位なら記録尽くめの世界選手権初制覇」はこちら。

鬼門で勝負して最悪の事態を招く

きょう、世界女王が決まるフリースケーティング(FS)が行われます。
20日にショートプログラム(SP)が行われ、紀平梨花は冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を失敗し、 70.90点で7位と出遅れました。
3つしか跳べないジャンプのなかの1本が0点ではやむをえません。

いまの調子とこれまでの成功率を無視してトリプルアクセルを跳べば結果がどうなるかはおおよそ推察できます。
何せグランプリ(GP)ファイナルで1度決めただけです。
鬼門で勝負をかけると最悪の事態も招くでしょう。

私が想定外だったのはどん底に陥っていたアリーナ・ザギトワが高得点を叩き出し、紀平梨花と11点以上の大差をつけたことです。
実は、表彰台にも上れないと思っていました。

国際大会6勝のうち4勝はFSでの逆転でしたが、だからといって世界選手権でも再現できるわけでありません。
初優勝を収めるには致命的な出遅れになりました。

紀平梨花は表情が硬く、緊張が伝わってきました。
練習時からジャンプが絶不調でした。
その不安を抱えていたせいか滑りも動きもスピードがなく、トリプルアクセルは構えすぎ、力みすぎでタイミングを外しています。

紀平梨花は逆転でも褒められない

自信を喪失していたアリーナ・ザギトワはここまでの成績からは想像できないパーフェクトな演技を見せました。
SPですっかり気分をよくしており、波に乗ってFSでも高得点を記録するでしょう。
大崩れは考えにくいのですが、何が起こるか分からず、紀平梨花の優勝が百パーセントなくなったわけでありません。
しかし、ドラマチックな逆転を飾ったとしても、結果オーライではとても褒められません。

その条件は冒頭のトリプルアクセル−3回転トウループ(2回転不可)のコンビネーション、続く単発のトリプルアクセルを決めたうえで、他の高難度ジャンプもすべて予定どおりに跳ぶことです。
しかも、大きな出来栄え点(GOE)が必要です。
ステップもスピンも取りこぼしが絶対に許されません。

紀平梨花が完璧というより究極の演技を行って届くかどうかというところですが、今大会でのジャンプの調子では絶望的でしょう。

⇒2019年3月21日「3Aパンク、紀平梨花が優勝候補筆頭の重圧に負けた!」はこちら。

ハイリスク・ハイリターンは誤り

大舞台ほど心理戦の様相を呈します。
ライバルに楽に滑らせたら負けです。

紀平梨花は作戦を完全に誤りました。
「負けるべくして負ける」。
今大会は勝ちたいという気持ちに負けたように見えました。
勝ちつづけるうちに負けるのが怖くなってきたのか、シーズン前半の冷静さと柔軟性を失いました。

そもそも「ハイリスク・ハイリターン」はチャレンジャー(挑戦者)が取る戦略であり、国際大会無敗の選手が取る戦略でありません。
その意味では自分の実力を信じきれませんでした。

紀平梨花がSPで跳べないトリプルアクセルを跳んだ理由は、先に述べた敗北への恐怖心、そして勝利への守りの意識であり、どちらも後ろ向きの気持ちです。
今大会では顔が引きつり、おおらかさや余裕がまったく感じられません。
(いやな汗をかいている紀平梨花を初めて見ました。)

演技後に「トリプルアクセルの感覚をもっとつくらないとショートで決めるのは大変」「リンクに合わせたトリプルアクセルの跳び方を自分の頭に描けないと、ああいうズレが起こってしまう」と悔やみました。
ならば、ぜひとも勝ちたい試合では跳ばなければいい。
自分を苦しめ、結果を悪くするだけです。

五輪へ勝つもよし、負けるもよし

が、世界選手権で勝つもよし、負けるもよし。
結果がどちらになるにしろ、2022年北京五輪金メダル獲得へ向けてきわめて貴重な経験を積めます。
私は紀平梨花が滅多に表れない資質を備えており、長く女子シングルに君臨する選手だと考えています。

この先も多くの試合に臨みます。
大事なのはスーパースターの宿命である重圧を認め、重圧と向かい合うことです。
試練を乗り越えていってほしい。

category:紀平梨花ブログはこちら。

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紀平梨花に関するブログは以下のとおり。

⇒2019年3月21日「3Aパンク、紀平梨花が優勝候補筆頭の重圧に負けた!」はこちら。

⇒2019年3月20日「紀平梨花はSP首位なら記録尽くめの世界選手権初制覇」はこちら。

⇒2019年3月16日「紀平梨花専属トレーナー橋本大侍が明かす強さの秘密」はこちら。

⇒2019年3月15日「世界選手権で唯一勝てるとしたらトゥクタミシェワ」はこちら。

⇒2019年3月10日「紀平梨花、世界女王へトリプルアクセルは2本か1本か」はこちら。

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