世界の頂点で戦うアスリートの競技観
王者のプライドと覚悟が伝わってくる

世界フィギュアスケート選手権の男子シングルで銀メダルを獲得した羽生結弦の発言がネットで物議を醸していることを知りました。
よほど暇を持て余しているのでしょうが、つまらないことを叩くものだと呆れました。

ショートプログラム(SP)で3位だった羽生結弦が「絶対に勝つ」との強い思いでフリースケーティング(FS)に臨みました。
そして、いくらかミスは出たものの、魂のこもった会心の演技を見せました。
私は感動しました。

しかし、直後に滑った米国のネイサン・チェンがそれを上回る完璧な演技を見せ、羽生結弦に圧勝を収めました。
今シーズンは無敗を誇っており、課題だったメンタルも随分強くなりました。

私は試合後、羽生結弦はけがが完治しておらず、痛み止めを服用して滑ったことを知り、やはりと思うとともに、よくぞと思いました。
日本勢は男女を通じ、試合勘を失っていた羽生結弦だけが表彰台に立っています。
昨年11月のグランプリ(GP)シリーズ「ロシア杯」での右足首負傷から約4か月ぶりの復帰戦ですので。

そして、FSの終了直後で興奮状態だったインタビューで飛び出しのが冒頭の発言でした。
「自分にとって負けは死も同然」と個人の価値観、それも世界の頂点で戦うアスリートとしての競技観を語っているだけです。
金メダルを獲れなかった選手について述べているわけでありません。
まして病気に関連づけて述べたわけでありません。

そもそも「死」という言葉は日常生活で頻繁に出てきます。
多忙だと「死にそう」と言いますし、猛暑だと「死ぬ」と言います。
おそらく「死も同然」という言葉は大昔から使われてきました。

ストレスを発散したくて、叩けそうな発言をネットで探している人たちでしょう。
しかし、その一部分を切り取り、したり顔でコメントするのは愚かです。
人の発言にはたいてい背景や文脈があり、無視できません。

確かなのは、一般論を述べていないこと。

「負けは死も同然」は決して穏やかな表現でありませんが、フィギュアスケートに命をかけている羽生結弦の内面から自然に湧き出た言葉です。
そのときの心境をストレートに吐露したにすぎません。
私もインタビューを聞きましたが、違和感は覚えませんでした。
敗北を喫した自分をばっさり切り捨てており、いかにも勝負師です。
五輪連覇を成し遂げた王者のプライドと覚悟が伝わってきます。

ところで、日本スケート連盟が4月のフィギュアスケート世界国別対抗戦を欠場する羽生結弦について、右足関節外側じん帯損傷、三角じん帯損傷、右腓骨筋腱部損傷と診断されたと発表しました。
文字どおり、「満身創痍」です。

今後も2、3か月の加療が必要とのことですが、残念ながら完治は望めないのかもしれません。
そうした状態でも羽生結弦は大会後に来季以降に世界初となる「クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)」を含めた6種類の4回転ジャンプの習得を誓いました。
やはり命がけでフィギュアスケートに向かい合っています。

羽生結弦は日本が世界に誇れる宝といえます。
一日でも、一年でも長く現役を続けてほしい。

category:羽生結弦ブログはこちら。

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羽生結弦に関するブログは以下のとおり。

⇒2019年3月28日「羽生結弦欠場で世界国別対抗戦は視聴率大幅低下」はこちら。

⇒2019年3月26日「残念、表彰台は痛み止め服用の羽生結弦ただ一人」はこちら。

⇒2019年3月24日「羽生結弦は別次元、華と存在感、演技全体の美しさが際立つ」はこちら。

⇒2019年3月19日「羽生結弦はコンディションが不明、試合勘も失う」はこちら。

⇒2019年3月17日「羽生結弦という社会現象、すべてが伝説になる」はこちら。

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