来季は世界初の高難度プログラムを予定
FSで4回転サルコウを前半に組み込む

世界選手権の女子シングルで無念の4位に留まった紀平梨花が来シーズンのフリースケーティング(FS)で世界初となる高難度プログラムを予定しているとのことです。

紀平梨花は習得中の「4回転サルコウ」を演技の前半に入れ、今シーズンは頭と次に組み込んできたトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の1本を後半に移します。
これはきわめて大胆な決断です。

女子シングルで4回転ジャンプとトリプルアクセルを同一プログラムで成功させた選手は存在しません。
また、演技後半にトリプルアクセルを決めるのは、1992年アルベールビル五輪の伊藤みどりまでさかのぼります。
現行の採点方式では初の快挙となります。
逆に言えば、それくらい至難ということです。

トリプルアクセル1本は後半で1割増し

4回転ジャンプを除いてトリプルアクセルの基礎点が一番高く、それを点数が1割増しになる演技後半で跳ぶなら、大きなアドバンテージを得られるだけでなく、ライバルに大きなプレッシャーをかけられます。
フィギュアスケートは格闘技のような神経戦の様相も帯びます。
大会にジャンプ構成の基礎点が高い選手が出場していることは頂点を目指す選手ほど気になります。
ショートプログラム(SP)でリードしても、FSで逆転される可能性に怯えながら滑ります。

トリプルアクセルの成功率がさらに悪化

濱田美栄コーチもこの構想を記者会見で明かしました。
体力がある演技前半、それも冒頭に一番難しいジャンプを跳ぶのがセオリーです。
にもかかわらず、紀平梨花はトリプルアクセルをまま失敗してきました。
最初に4回転サルコウを跳ぶのはいいとして、体力がない後半にトリプルアクセルを持っていくと成功率がさらに悪化します。
大舞台での勝利の条件はノーミスのはずですが、望むべくもありません。

来シーズンは4回転ジャンプを跳べるロシアのジュニア勢がシニアに上がってきます。
紀平梨花が高難度のジャンプ構成に挑みたがる気持ちが分からないわけでありません。
しかし、練習段階からけがのリスクがおおいに高まります。
3回転ジャンプの調子を崩すかもしれません。
代名詞のトリプルアクセルを自分のものにしてからでも遅くないと思います。
男子シングルに遅れ、女子シングルも「4回転ジャンプ競争」に突入するのは必然の流れですが、シニアに上がったジュニアが成長期でも成功させられるとは限りません。
紀平梨花は焦りすぎでしょう・・・。

羽生結弦の応援でインスピレーション!

紀平梨花は世界選手権終了後の記者会見で、前夜の男子シングルのFSを客席から応援し、五輪2連覇の羽生結弦から4回転サルコウを跳ぶインスピレーションを得たと声を弾ませました。
「力が抜けて軽いジャンプをしていた。無駄な力が入らないお手本のようなジャンプだった」。
イメージがだいぶ固まってきました。

不確かですが、1月のコロラド合宿でそこそこ跳んでいるようです。
また、練習でもすでに着氷しているようです。

ちなみに、紀平梨花は四大陸選手権で左手薬指を負傷し、世界選手権直前のコロラド合宿で4回転ジャンプの特訓を行わなかったことを知りました。
プログラムのブラッシュアップに努めたようで、世界選手権でのジャンプの不調は特訓に起因したものでありません。

シニア2年目はあたふたを愛嬌と呼べず

この実質的なシーズン最終戦で4位に終わった紀平梨花は「目標はもっと高いところにある」と語りました。
私もその通りだと思います。
トップクラスの選手は出場するからには優勝を狙うとしても、全試合に勝つことは不可能です(男子シングルのネイサン・チェンは全勝です)。
それでは精神的にも持ちません。
だから負けることもありますし、不本意な負け方をすることもあります。
しかし、勝ちにいった試合で惨敗を喫するようだと、オリンピックでの金メダル獲得は難しいでしょう。

今シーズンを振り返れば、トリプルアクセルを3本揃えたことがなく、試合のたびにあたふたを繰り返しました。
紀平梨花はシニア2年目の来シーズン、そうした醜態を「愛嬌」と呼べなくなります。
安易に4回転ジャンプを投入すると、ばたばたになるのは目に見えています。
美しいプログラムそのものが壊れかねず、私は慎重に進めてほしい。

裏目に出ると、一転してまったく勝てなくなる恐れもあります。

category:紀平梨花ブログはこちら。

◇◆◇

紀平梨花に関するブログは以下のとおり。

⇒2019年4月1日「濱田美栄コーチは使いっぱしり、怒りが収まらず愚痴が止まらない」はこちら。

⇒2019年3月30日「紀平梨花の新エキシビションはシーア「ザ・グレイテスト」」はこちら。

⇒2019年3月26日「紀平梨花に致命的弱点、五輪金メダル獲得は絶望的か」はこちら。

⇒2019年3月25日「世界選手権惨敗の紀平梨花に一番大事なこと」はこちら。

⇒2019年3月23日「紀平梨花、プレッシャーとの戦いは始まったばかり」はこちら。

Copyright (c)2019 by Sou Wada

人気ブログランキング←応援、よろしく!