本気で北京五輪出場を目指している証左
宮原知子は今シーズンの位置づけが明確

フィギュアスケート女子シングルの宮原知子。
5年振りの日本開催となる世界選手権で滑ることをとても楽しみにしていました。
紀平梨花や坂本花織もそうでしょうが、家族や大勢の友だちが会場に駆けつけてくれます。

宮原知子は2015年に銀メダル、2018年に銅メダルと2度の表彰台を経験しており、ウェブ記事では「悲願の初優勝」という言葉も見かけました。
しかし、本人は優勝を諦めていたというと語弊がありますが、あまり眼中になかったはずです。
点数や順位という結果でなく練習の成果を本番で精一杯出すことを心がけていました。
後で述べますが、オリンピック明けのシーズンの位置づけをきちんと定めていたからです。

宮原知子は日本女王の冠がかかる全日本選手権で4連覇を成し遂げ、国際大会を含めて演技の「安定感」が際立っていました。
躍動感は乏しいのですが、機械のように精密に回転する低く速いジャンプが印象に残りました。
そして、ついに「ミス・パーフェクト」の異名を取っています。
この選手の演技は滅多に崩れることがなく、安心して見られました。

世界選手権SPは回転不足で8位出遅れ

世界選手権の公式練習で宮原知子はジャンプが決まっており、調子はまずまずでした。
が、大会前の記者会見では表彰台にこだわらず、平常心で本番に臨む姿勢を強調しました。

直前の合宿などではフリースケーティング(FS)のブラッシュアップなどに努めました。
ジャンプのほか、ステップや表現の手直しを図っています。

ショートプログラム(SP)が行われ、宮原知子は 70.60点で8位と大きく出遅れました。
冒頭の3回転ルッツ−3回転トウループのコンビネーションジャンプの前で軸(着氷)が揺らぎ、後ろで回転不足を取られました。
ダブルアクセル(2回転半ジャンプ)、3回転ループは決めました。
課題のステップで最高評価のレベル4を得ました。

本人は最初のルッツジャンプがうまく入らなかったと無念さをにじませています。
練習のときのようなスピードと思い切りがありません。
緊張からか不安からか、演技全般が硬かった。

ジャンプ改革で演技に集中できていない

宮原知子は今シーズン、かねてより得点の低迷の主因となった「回転不足」の解消など、ジャンプ改革に取り組みました。
採点ルールの改定でジャンプの判定も厳格化されています。
そこが試合でどうしても気になり、演技に集中できていないという印象を受けました。
滑りの慎重さが表れ、四肢を目一杯に使った動きの大きさや伸びやかさも薄れました。

それによりミス・パーフェクトにふさわしい演技の安定感が消えました。
しかし、裏を返せば、宮原知子が本気で2022年北京五輪への出場を目指している証左です。
2020年シーズンまでに回転不足の克服は当然ながら、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の組み込みなどでジャンプ構成の基礎点の引き上げを果たさないかぎり、日本代表に選ばれることもありません。
それをもっともよく知り、強烈な危機感を抱いているのは本人です。

FSは別人のパフォーマンスで持ち直し

フリースケーティング(FS)が行われ、宮原知子は145.35点、合計215.95点で6位と若干持ち直しました。
冒頭の3回転サルコウ、続く3回転ルッツ−3回転トウループのコンビネーションをきれいに決め、勢いに乗りました。
終盤の3回転フリップ−2回転トウループ−2回転ループのコンビネーションでバランスを崩して手をつきましたが、最後のダブルアクセル(2回転半)もしっかりと決めました。

回転不足を取られず、これまでの成果を示しています。
ステップもスピンもよく、手応えを感じたのか、演技後に左拳を握りしめました。
私は久し振りの笑顔を見た気がしました。

宮原知子はSPとは別人のパフォーマンスでした。
さいたまスーパーアリーナを埋め尽くした観客に大胆な表情と繊細な表現を届けています。
とてもよかったと思います。

演技のほころびは来シーズンも続くはず

挑戦なくしてオリンピック出場なし。

おそらく演技のほころびは来シーズンも続くはずです。
それでもいい。

宮原知子は練習と鍛錬でここまで上り詰めた努力家であり、才能や器用さがあるといえません。
強固な意志と緻密な計画に従い、一歩ずつ着実に前進していくほかにないのです。

それを小さい頃から温かく粘り強く見守るのが濱田美栄コーチです。
二人は共通点の多いコンビなのでしょう。

⇒2017年12月10日「ハマちゃんとサーさんコンビ、GPファイナルの感動」はこちら。

category:宮原知子ブログはこちら。

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宮原知子に関するブログは以下のとおり。

⇒2019年3月13日「看板が外れた宮原知子は世界選手権を楽しむ」はこちら。

⇒2019年2月12日「来季は世界と戦えない、コロラド合宿は宮原知子にこそ必要」はこちら。

⇒2019年1月18日「20歳の宮原知子はもうババリアンなのか?」はこちら。

⇒2018年12月14日「濱田美栄コーチ、同門対決の心労とプライド」はこちら。

⇒2018年12月13日「宮原知子、全日本選手権4連覇は勝ちすぎ」はこちら。

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