私が営業活動を行ってきて、顧客にもっとも多くかけられた言葉はこれだ。
「うちに来ないか」「うちでやらないか」。
とりわけ20代後半から30代前半にかけ、大手企業から中小企業まで幅広く…。
当時は「スカウト」という言葉が定着していなかった。
この“誘い”は営業としてやっていくうえで大きな自信につながった。
その後の決して平坦でない職業人生を支えてくれた。
顧客におおいに感謝しながら、丁重にお断りした。

うれしかった。

営業職は非常に恵まれている。
スカウト会社はもちろん、顧客にじかに呼んでもらえる。
ただし、相手は「決定権者」、条件は「与える」。
私は、この気づきをわりと早く得られた。
それ以降、決定権者と面談し、「与える営業」を実践することにこだわった。
すると、猛烈に誘われた。
なかでも32〜34歳はスカウトが殺到した。



私が顧客に多くかけられた言葉は、ほかに2つある。
「変わっている」などの「変人」系。
「素っ気ない」「つっけんどん」などの「無愛想」系。
いずれも私が信頼し尊敬していた大手企業の社長など、経営幹部から面と向かって切り出された。
たいそう可愛がっていただいた。
非常に懐かしい思い出である。

この言葉から察せられること。
顧客が私に抱いた最初の印象はあまり好ましいものでなかった。
しかも、彼らはそれをずっと引きずっていた。
しかし、彼らはそれを口に出せる関係になったと感じた。



私が営業活動を通じて顧客にもっとも与えてしまったのは、おそらく「不快感」でなかろうか。
思ったことはストレートに伝えた。
相手が年上だと、怒らせたりした。
相手が年下だと、避けられたりした。
そのうえ、私は笑顔を見せられないし、世辞を言えない。
どちらも大の苦手だった。

営業はわざわざ顧客に嫌われる必要はない。
なぜなら、営業活動がとても進めにくくなる。
が、すべての顧客に好かれる必要もない。

私はフリーランスの経験が長い。
若い頃、一握りの顧客に熱心に“支持”されれば何とか食べていけると感じた。
この思いは、還暦になった現在でもたいして変わっていない。
根底にあるのは、まずは自分(家族)の生活をどう守るか、そして“職人”としてどう働くかという発想でなかろうか・・・。

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