テレビ東京「カンブリア宮殿」。
ゲストは、アサヒビール荻田伍社長、2週連続登場。
経営と人生の名言0029ホストは、村上龍。
“変革対談”となった。

番組のホームページに今回の金言が載っていた。
金言1:「問題解決能力の時代」
金言2:「現状不満足集団であれ」
1は営業社員を、2は全社員を意識した言葉か。

経営教本0495私が番組でとくに興味深かったのは、荻田伍社長が営業について語ったくだり。
「提案型でなく、問題解決型」(うろ覚え)。
素晴らしく明確だ。

私は、ながら視聴につき、あやふやで申し訳ない。
カンブリア宮殿の収録スタジオに詰めかけた人は、アサヒビールの社員だろうか?
若い世代に営業職が嫌われる今日、村上龍の問いかけに対して大勢が営業の仕事への意欲を示した。
経営教本0496NPO法人営業実践大学を主宰してきた私は、営業の社会地位・社内地位の向上に執念を燃やしてきたが、同社の社員は営業志向を持っている。
とても嬉しかった。
それは企業文化や組織風土としての「顧客志向」の強さの反映であろう。
スタジオの方は、同社の社員というわけでなく、営業に関心を寄せる人が多かったのかもしれない。

私は社長や取締役に向けた講演などで繰り返し述べている。
経営トップの指示は明確でなくてならない」。
経営教本0497実は、営業関係者に普及した「提案」という概念は非常に曖昧であり、かつ曲者である。
それは、顧客に対して「課題解決策」を投げかけること。
私が「提案営業」に関する公開セミナー企業研修で説いている急所を、荻田伍社長はさらっと語った。

瀬戸雄三そして、「課題解決策の提示」で最重要なのは、顧客の抱える課題をつかむこと。
アサヒビールでは、相手は流通になるだろう。
したがって、営業パーソンはマーチャンダイジングやマーケティングにおける課題を突き止めていく。
例えば、売り場づくりや品揃え、販売や集客のあり方だ。

私が営業講師や営業コンサルタントとして行く先々で目の当たりにした「提案営業」とは結局のところ、「推奨営業」にすぎなかった。
この程度では業績など上がるはずがない。
経営教本0498悲しいかな、社長や営業幹部の大半は、提案営業をまったく理解できていない。
誤解を恐れずに言えば、商品を売る「提案営業」はそもそもありえない。
いまやハードはほぼ横並びであり、競争優位の源泉は「ソフト(ノウハウ)」へシフトした。
流通に課題解決の知恵を売るのだ(厳密には異なるが、課題を「問題」と置き換えてもよかろう)。
そのキモは、「課題の明確化」。

営業関係者が使いたがる「お役立ち」という言葉。
これは、顧客の課題解決への貢献が明らかに認めらる場合に限って用いることが許される。

経営教本0499ところで、私がアサヒビールで思い出すのは「瀬戸雄三」である。
スーパードライ発売後の奇跡の復活劇を営業本部長として陣頭指揮し、社長に就任した。
沈みかけたアサヒビールを一番高く輝かせた立役者。
私は瀬戸雄三について語ったことがある。
経営教本05003分4秒の講話映像、ユーチューブの動画。
和田創講演TV賢人編「瀬戸雄三」はこちら。
気迫に満ちた“名言”を取りあげている。

荻田伍(おぎた・ひとし)は、1942年に福岡県で生まれ、九州大学経済学部を卒業。
アサヒビール一筋。
途中、3期連続の赤字に陥っていたアサヒ飲料の社長に就任し、「三ツ矢サイダー」など主力商品を“顧客目線”で蘇らせて即座に黒字に転換、V字回復を成し遂げた。
経営教本0501子会社再建の劇的な実績を買われ、2006年にアサヒビールの社長に就任した。
カンブリア宮殿では、「逆境の指揮官」と紹介された。
本人は、「スーパードライ」の一本足打法からの脱却を目指すとの決意を披露した。
テレビ画面に67歳とは思えぬバイタリティがあふれる。
表情から厳しさと同時に温かさが伝わってきた。

ホストの村上龍は番組のホームページの編集後記で、ゲストの荻田伍社長との出会いを振り返っている。
経営教本0502趣旨は以下のとおり。
荻田さんがやってこられたことは、人と人の真摯で誠実なコミュニケーションだった。
自分が用いた、営業の鬼や神様といった表現は間違い。
こうしたリーダーとともに働く人は、きっと幸福だろう。
名言好きのあなたへ
私は「カンブリア宮殿」が好きだ。
“ながら視聴”にもかかわらず毎回、何かしら考えるきっかけを与えてくれる。
いまどき珍しい番組。

                  ◇

余談だが、私は日本人の名言好きに呆れ返る。
呑気な信奉者が多すぎよう。
4分41秒の講話映像、ユーチューブの動画。
和田創講演TV人生編「名言好きなあなたへ」はこちら。
経営教本0503名言は、それに安易に触れれば大やけどを負うほどの辛辣な真理を含んでいる。

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