私は講演やセミナー、研修が続く。
講師は重労働だが、その準備はもっと大変である。
疲労が溜まり、頭が働かない。
霞がかかったみたいで、コンテンツの作成がはかどらない。
焦る、焦る、焦る…。
このところ書き溜め記事をアップしているが、残りわずかになった。
しかし、ブログにエネルギーを割けない。
例えば、福島第一原子力発電所の事故にともなう問題に触れたいと思いながら、考える時間を取れないのだ。
それ以前に、世事にうとい。
新聞からもニュースからも遠ざかっている。
東京電力は社長を筆頭に、事故の対応があまりにひどかった。
猛烈な批判にさらされて当然だろう。
このブログで述べたとおり、私は呆れ返った。
しかし、彼らだけが悪者になる図式に強い違和感を覚える。
原子力発電所の建設は戦後、政・官・学・民が一体となり、地方自治体を巻き込むかたちで、国策として推進された。
それをマスコミと有権者(国民、住民)が後押しした。
関係者の利権の増殖と地元への利益の誘導が絡まりながら建設が加速していった。
福島第一原発事故のすべての責任を同社に負わせることは不当である。
結果がすべてなので、仮の話はできない。
それでも大震災により他の電力会社の原子力発電所でも何らかの不都合が生じていたなら、責任論の行方はまったく違っていただろう。
だれも想定しなかった大地震・大津波が起こった。
だからこそ、あれだけの死者が出たのだ。
自然の猛威は残念ながら読み切れない。
人間の頭はちっぽけである。
福島第一原発事故。
今後、地元の救済を急ぎつつ、全体の損失を最小限に抑えなくてならない。
日本航空(日航。JAL)問題は、いよいよのときには会社をつぶしても、国内や海外の航空会社が多くの路線を引き継ぐので、ユーザーにたいして影響が及ばない。
東京電力問題は大規模かつ複雑であり、解決は非常に困難である。
電力供給が止まらないまでも一気に減ることがあれば、国民の暮らしも一国の経済も滅茶苦茶になる。
日本は凋落が決定的だ。
はっきりしているのは、今回の損害賠償は東京電力だけで賄えないこと。
結局、だれがどれくらい泣くか、「負担の枠組み」が焦点になる。
平たく言えば、「責任の分担」のこと。
これまで電子力発電の恩恵に浴しておきながら、「支援のスキーム」という他人事(ひとごと)のような表現はピンと来ない。
東京電力が一義的な責任を負い、国(国民)が最終的な責任を負う。
そして、地元(住民)を含めたすべての関係者が責任の一端を負う。
そもそもエリア独占体制の堅持がすべての関係者に甘さと緩みをもたらした。
被害の深刻化・巨額化の誘因となった。
電力供給の劇的な規制緩和は必須かつ急務として、エネルギー政策の抜本見直しと一大転換も不可欠だろう。
「禍(わざわい)を転じて福となす」。
クリーンで安全な自然エネルギーなどの分野で技術革新や産業育成が活発化し、日本が世界の最先端を突っ走るきっかけにすることができるか。
福島第一原子力発電所の事故にともなう問題はどのような収束が図られるのだろうか・・・。
以下に、「東京電力は実質経営破綻…福島第一原発事故」と題する2011年4月15日のブログを収める。
◇◆◇
東北地方太平洋沖地震。
マグニチュード 9.0は、国内観測史上最大。
アメリカ地質調査所によれば1900年以降、世界で4番目の巨大地震だった。
しかも震源が三陸沖だったため、巨大津波を招いた。
福島第一原子力発電所も深刻なダメージを受けた。
いまや最悪のレベル7の事故へ・・・。
私はテレビで幾度も目にした原発事故を巡る東京電力の対応に愕然とし、呆れ果てた。
周辺住民の健康や生命、地域経済の死活に直結する重大な報告や発表を経営トップが行わない。
公の場に姿を見せないのだ。
しかも、事故の影響は一国の経済、国民の暮らしに及んだ。
日本全体が甚大な損害を被っている。
なのに、東京電力は上が下に嫌な役回りを押し付けてしまった。
実際には取締役が行ったのかもしれないが、私には中間管理職クラスにやらせているように思えた。
著名企業でここまでひどいのは見たことがない。
国策のもと、エリア独占で守られるうちに危機感を失い、“官僚体質”が染み付いた。
社内の調整力(根回し力)くらいで出世街道を歩んできたのだろう。
人材がほとんど育っていなかった・・・。
どこか、経営破綻を招いた日本航空(JAL)の上層部とイメージが重なる。
社長は震災後ほぼ不眠不休で対応に追われ、過労により体調を崩したようだ。
東電本店で医師の治療を受けながら情報収集に当たり、指示を出していたとのこと。
原発事故の対応と計画停電の運用は、それぞれ副社長が指揮を執った。
社長は寝たきりで、トップ不在の状態が続いた。
それで会長が現れ、代わりに詫びた。
社長は先日、記者会見に臨んだが、事故収束の見通しや損害賠償の具体策は示さなかった。
難問が山積の東京電力で指導力の発揮はまったく望めない。
私が企業存亡に関わる事故対応で思い浮かべたのは、トヨタ自動車だった。
創業家出身の豊田章男社長が矢面に立ち、ごく短期間で世界的規模の欠陥・リコール問題を収束した。
いけいけどんどんの前3代の社長を引っ張り出さず、一身に責任を負った。
初動はやや遅れたが、その後は見事だった。
この男は印象よりキモが据わっている。
⇒2010年3月2日「豊田章男社長…独り矢面に立つ創業家」はこちら。
⇒2010年6月21日「豊田章男と奥田碩…トヨタ社長評価」はこちら。
福島第一原発事故は、収束にかなりの歳月を要するのは避けられそうにない。
東京電力は、主立った記者会見に関してはすべて社長など取締役が行うように改めるべきだ。
その際、社内地位(肩書)を明らかにせよ。
現場で放射能を浴びながら復旧作業に当たっている社員、そして関連・協力会社の社員が非常に気の毒である。
彼らは命がけだ。
東京電力は上にいくほど覚悟ができていないと、世間に思われても仕方ない。
未曽有の自然災害に見舞われたことは確かだが、東京電力の事故発生後の一連の対応は、直接の被害者の周辺地域・住民はもとより、国民の不信感と怒りを募らせた。
また、東京電力はテレビで謝罪広告を流しているが、これも遅すぎた。
私は松下電器産業の「FF式石油温風機」の欠陥事故を思い出した。
同社は、お詫びとお知らせ(回収告知)のナレーションだけのCMをひたすら流しつづけた。
おそらく前例のない規模と頻度。
犠牲をもう増やさないとの社長の意思がはっきりと伝わってきた。
この対応により、ナショナル製品に対する消費者の信頼が逆に高まった。
それに比べ、瞬間湯沸かし器による事故を製品の欠陥によるものでないと退けたパロマの対応は消費者の信頼を損ねた。
同社は結局、謝罪会見に追い込まれ、責任を認めた。
東京電力は巨額の賠償問題を抱える。
単独で賄える金額は1割にも満たない?
膨大な国費が投入される。
実質、経営破綻。
事態がいくらか落ち着いた段階で、国民(納税者)の監視のもとに企業そのものの再生に取り組むことになろう。
◆書き加え1(4月15日)
政府は先ほど「経済被害対応本部」の初会合を開き、福島第一原発事故の避難住民らに対する東京電力の損害賠償の仮払いを決めた。
原発から30キロメートル圏内で避難や屋内退避を強いられている住民を対象に、当面の生活支援として一世帯当たり百万円、単身世帯は75万円。
今月中にも支給開始。
本部長は、海江田万里原子力経済被害担当相。
風評被害や出荷制限で受けた農家や漁師に対する損害賠償は今後検討される。
営業・操業の制約が及んだり停止に追い込まれたりした中小企業経営者についても同様。
社会、経済、生活など、あらゆる面において電力供給を止めることができず、東京電力は国有化が避けられない。
◆書き加え2(4月16日)
国有化が避けられないとは、東京電力を国有化するという意味でない。
どのような形であれ、また一時的にしろ、国が巨額を肩代わりせざるをえず、国有に近い状態に陥る。
民間企業に対しておかしな言い方になるが、経営層は民間人で固めたらよい。
Copyright (c)2011 by Sou Wada
←応援、よろしく!
講師は重労働だが、その準備はもっと大変である。
疲労が溜まり、頭が働かない。
霞がかかったみたいで、コンテンツの作成がはかどらない。
焦る、焦る、焦る…。
このところ書き溜め記事をアップしているが、残りわずかになった。
しかし、ブログにエネルギーを割けない。
例えば、福島第一原子力発電所の事故にともなう問題に触れたいと思いながら、考える時間を取れないのだ。
それ以前に、世事にうとい。
新聞からもニュースからも遠ざかっている。
東京電力は社長を筆頭に、事故の対応があまりにひどかった。
猛烈な批判にさらされて当然だろう。
このブログで述べたとおり、私は呆れ返った。
しかし、彼らだけが悪者になる図式に強い違和感を覚える。
原子力発電所の建設は戦後、政・官・学・民が一体となり、地方自治体を巻き込むかたちで、国策として推進された。
それをマスコミと有権者(国民、住民)が後押しした。
関係者の利権の増殖と地元への利益の誘導が絡まりながら建設が加速していった。
福島第一原発事故のすべての責任を同社に負わせることは不当である。
結果がすべてなので、仮の話はできない。
それでも大震災により他の電力会社の原子力発電所でも何らかの不都合が生じていたなら、責任論の行方はまったく違っていただろう。
だれも想定しなかった大地震・大津波が起こった。
だからこそ、あれだけの死者が出たのだ。
自然の猛威は残念ながら読み切れない。
人間の頭はちっぽけである。
福島第一原発事故。
今後、地元の救済を急ぎつつ、全体の損失を最小限に抑えなくてならない。
日本航空(日航。JAL)問題は、いよいよのときには会社をつぶしても、国内や海外の航空会社が多くの路線を引き継ぐので、ユーザーにたいして影響が及ばない。
東京電力問題は大規模かつ複雑であり、解決は非常に困難である。
電力供給が止まらないまでも一気に減ることがあれば、国民の暮らしも一国の経済も滅茶苦茶になる。
日本は凋落が決定的だ。
はっきりしているのは、今回の損害賠償は東京電力だけで賄えないこと。
結局、だれがどれくらい泣くか、「負担の枠組み」が焦点になる。
平たく言えば、「責任の分担」のこと。
これまで電子力発電の恩恵に浴しておきながら、「支援のスキーム」という他人事(ひとごと)のような表現はピンと来ない。
東京電力が一義的な責任を負い、国(国民)が最終的な責任を負う。
そして、地元(住民)を含めたすべての関係者が責任の一端を負う。
そもそもエリア独占体制の堅持がすべての関係者に甘さと緩みをもたらした。
被害の深刻化・巨額化の誘因となった。
電力供給の劇的な規制緩和は必須かつ急務として、エネルギー政策の抜本見直しと一大転換も不可欠だろう。
「禍(わざわい)を転じて福となす」。
クリーンで安全な自然エネルギーなどの分野で技術革新や産業育成が活発化し、日本が世界の最先端を突っ走るきっかけにすることができるか。
福島第一原子力発電所の事故にともなう問題はどのような収束が図られるのだろうか・・・。
以下に、「東京電力は実質経営破綻…福島第一原発事故」と題する2011年4月15日のブログを収める。
◇◆◇
東北地方太平洋沖地震。
マグニチュード 9.0は、国内観測史上最大。
アメリカ地質調査所によれば1900年以降、世界で4番目の巨大地震だった。
しかも震源が三陸沖だったため、巨大津波を招いた。
福島第一原子力発電所も深刻なダメージを受けた。
いまや最悪のレベル7の事故へ・・・。
私はテレビで幾度も目にした原発事故を巡る東京電力の対応に愕然とし、呆れ果てた。
周辺住民の健康や生命、地域経済の死活に直結する重大な報告や発表を経営トップが行わない。
公の場に姿を見せないのだ。
しかも、事故の影響は一国の経済、国民の暮らしに及んだ。
日本全体が甚大な損害を被っている。
なのに、東京電力は上が下に嫌な役回りを押し付けてしまった。
実際には取締役が行ったのかもしれないが、私には中間管理職クラスにやらせているように思えた。
著名企業でここまでひどいのは見たことがない。
国策のもと、エリア独占で守られるうちに危機感を失い、“官僚体質”が染み付いた。
社内の調整力(根回し力)くらいで出世街道を歩んできたのだろう。
人材がほとんど育っていなかった・・・。
どこか、経営破綻を招いた日本航空(JAL)の上層部とイメージが重なる。
社長は震災後ほぼ不眠不休で対応に追われ、過労により体調を崩したようだ。
東電本店で医師の治療を受けながら情報収集に当たり、指示を出していたとのこと。
原発事故の対応と計画停電の運用は、それぞれ副社長が指揮を執った。
社長は寝たきりで、トップ不在の状態が続いた。
それで会長が現れ、代わりに詫びた。
社長は先日、記者会見に臨んだが、事故収束の見通しや損害賠償の具体策は示さなかった。
難問が山積の東京電力で指導力の発揮はまったく望めない。
私が企業存亡に関わる事故対応で思い浮かべたのは、トヨタ自動車だった。
創業家出身の豊田章男社長が矢面に立ち、ごく短期間で世界的規模の欠陥・リコール問題を収束した。
いけいけどんどんの前3代の社長を引っ張り出さず、一身に責任を負った。
初動はやや遅れたが、その後は見事だった。
この男は印象よりキモが据わっている。
⇒2010年3月2日「豊田章男社長…独り矢面に立つ創業家」はこちら。
⇒2010年6月21日「豊田章男と奥田碩…トヨタ社長評価」はこちら。
福島第一原発事故は、収束にかなりの歳月を要するのは避けられそうにない。
東京電力は、主立った記者会見に関してはすべて社長など取締役が行うように改めるべきだ。
その際、社内地位(肩書)を明らかにせよ。
現場で放射能を浴びながら復旧作業に当たっている社員、そして関連・協力会社の社員が非常に気の毒である。
彼らは命がけだ。
東京電力は上にいくほど覚悟ができていないと、世間に思われても仕方ない。
未曽有の自然災害に見舞われたことは確かだが、東京電力の事故発生後の一連の対応は、直接の被害者の周辺地域・住民はもとより、国民の不信感と怒りを募らせた。
また、東京電力はテレビで謝罪広告を流しているが、これも遅すぎた。
私は松下電器産業の「FF式石油温風機」の欠陥事故を思い出した。
同社は、お詫びとお知らせ(回収告知)のナレーションだけのCMをひたすら流しつづけた。
おそらく前例のない規模と頻度。
犠牲をもう増やさないとの社長の意思がはっきりと伝わってきた。
この対応により、ナショナル製品に対する消費者の信頼が逆に高まった。
それに比べ、瞬間湯沸かし器による事故を製品の欠陥によるものでないと退けたパロマの対応は消費者の信頼を損ねた。
同社は結局、謝罪会見に追い込まれ、責任を認めた。
東京電力は巨額の賠償問題を抱える。
単独で賄える金額は1割にも満たない?
膨大な国費が投入される。
実質、経営破綻。
事態がいくらか落ち着いた段階で、国民(納税者)の監視のもとに企業そのものの再生に取り組むことになろう。
◆書き加え1(4月15日)
政府は先ほど「経済被害対応本部」の初会合を開き、福島第一原発事故の避難住民らに対する東京電力の損害賠償の仮払いを決めた。
原発から30キロメートル圏内で避難や屋内退避を強いられている住民を対象に、当面の生活支援として一世帯当たり百万円、単身世帯は75万円。
今月中にも支給開始。
本部長は、海江田万里原子力経済被害担当相。
風評被害や出荷制限で受けた農家や漁師に対する損害賠償は今後検討される。
営業・操業の制約が及んだり停止に追い込まれたりした中小企業経営者についても同様。
社会、経済、生活など、あらゆる面において電力供給を止めることができず、東京電力は国有化が避けられない。
◆書き加え2(4月16日)
国有化が避けられないとは、東京電力を国有化するという意味でない。
どのような形であれ、また一時的にしろ、国が巨額を肩代わりせざるをえず、国有に近い状態に陥る。
民間企業に対しておかしな言い方になるが、経営層は民間人で固めたらよい。
Copyright (c)2011 by Sou Wada
←応援、よろしく!