「四月物語」(しがつものがたり)を観た。
1998年公開の日本映画。
監督と脚本の岩井俊二が精魂を傾けてつくった。
私は、松たか子の初の主演映画と知って驚いた。
女優としての類まれな才能がきらきらしている。
彼女の持つ意思の強さと大胆さが主人公にマッチする。
「四月物語」は、北海道・旭川の高校を卒業し、自分が望む運命を切り開こうと東京・武蔵野で一人暮らしを始める女子大生・楡野卯月(にれの・うづき)の心象を丁寧かつ繊細に描いた。
どうということもない日常の光景、淡々とした時間の流れなかに、奇跡のドラマが浮かび上がってくる。
薄暗い本屋に差し込む光、自転車の解放感、驟雨の幸福感などが利いている。
小道具の「傘」の使い方もうまい。
私は1970年、この映画の主人公に似た気持ちも一因(主因?)で、富山県立魚津高校から明治大学に進学した。
我ながら、何と純粋な動機だろう。
結果はともかくとして、想いを寄せた女の子に働きかけられたにもかかわらず、私は実際のアクションを取らなかった。
したがって、ドラマが起こりようもない。
意気地なしという後悔を今日まで引きずることになる。
「四月物語」は1時間ほどの小品である。
物語と直接関連のない描写が織り込まれ、それが心地よい世界観を醸し出している。
引越屋とのやり取りなど、笑ってしまうくらいのリアリティが、この作品のファンタジー性を際立たせる。
ぽっかりと空いた穴を埋めたくて名画座で時間をつぶした自分をありありと思い出した。
岩井俊二監督の青春時代の精神の彷徨なのかもしれない。
入学早々の学校生活や仲間への違和感もよく描けているのでなかろうか(私は結局、大学に顔を出さなかったが…)。
なお、公開当時、「武蔵野大学」は存在しなかった。
岩井俊二監督は旭川や武蔵野の土着性を消し、純粋培養の「愛」を描いた。
観念を大切にしたかったのだろう。
そのおかげで、私は半世紀近く前の記憶がみずみずしい感覚をともなってよみがえってきた。
映画の冒頭は、松本幸四郎一家のホームビデオを見るようだ。
ユーモアだけでなく、娘の旅立ちを応援する温かさも感じられる。
やはり「四月物語」は考え抜かれている。
私は傑作だと思う。
松たか子に関するブログは、以下のとおり。
◇◆◇
⇒2014年8月30日「松たか子、レリゴーのつまずき」はこちら。
⇒2014年8月22日「松たか子と神田沙也加のちぐはぐ」はこちら。
⇒2014年8月21日「松たか子、才能と歌唱…アナと雪の女王」はこちら。
Copyright (c)2014 by Sou Wada
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1998年公開の日本映画。
監督と脚本の岩井俊二が精魂を傾けてつくった。
私は、松たか子の初の主演映画と知って驚いた。
女優としての類まれな才能がきらきらしている。
彼女の持つ意思の強さと大胆さが主人公にマッチする。
「四月物語」は、北海道・旭川の高校を卒業し、自分が望む運命を切り開こうと東京・武蔵野で一人暮らしを始める女子大生・楡野卯月(にれの・うづき)の心象を丁寧かつ繊細に描いた。
どうということもない日常の光景、淡々とした時間の流れなかに、奇跡のドラマが浮かび上がってくる。
薄暗い本屋に差し込む光、自転車の解放感、驟雨の幸福感などが利いている。
小道具の「傘」の使い方もうまい。
私は1970年、この映画の主人公に似た気持ちも一因(主因?)で、富山県立魚津高校から明治大学に進学した。
我ながら、何と純粋な動機だろう。
結果はともかくとして、想いを寄せた女の子に働きかけられたにもかかわらず、私は実際のアクションを取らなかった。
したがって、ドラマが起こりようもない。
意気地なしという後悔を今日まで引きずることになる。
「四月物語」は1時間ほどの小品である。
物語と直接関連のない描写が織り込まれ、それが心地よい世界観を醸し出している。
引越屋とのやり取りなど、笑ってしまうくらいのリアリティが、この作品のファンタジー性を際立たせる。
ぽっかりと空いた穴を埋めたくて名画座で時間をつぶした自分をありありと思い出した。
岩井俊二監督の青春時代の精神の彷徨なのかもしれない。
入学早々の学校生活や仲間への違和感もよく描けているのでなかろうか(私は結局、大学に顔を出さなかったが…)。
なお、公開当時、「武蔵野大学」は存在しなかった。
岩井俊二監督は旭川や武蔵野の土着性を消し、純粋培養の「愛」を描いた。
観念を大切にしたかったのだろう。
そのおかげで、私は半世紀近く前の記憶がみずみずしい感覚をともなってよみがえってきた。
映画の冒頭は、松本幸四郎一家のホームビデオを見るようだ。
ユーモアだけでなく、娘の旅立ちを応援する温かさも感じられる。
やはり「四月物語」は考え抜かれている。
私は傑作だと思う。
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◇◆◇
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