以前、中堅クラスのIT企業から「営業強化」に関する相談を受けた。
業績の下落が著しいので、提案営業の「スキルアップ」を図りたいという。
何と愚かな・・・。

取締役の話を聞くと、この会社に「営業」という仕事の本質と根幹が分かっている人がだれもいないことがすぐに分かった。
同社に限らず、ベンチャー企業や技術系企業はたいてい営業が恐ろしくお粗末だ。

同社では、営業がパワーポイントできれいな資料ばかりつくっていた。
表紙に「提案書」と記しているが、そもそも販売のために作成しており、内容は単なる“推奨”。
私にはもう終わっているように思えた。

営業が資料を作成したがるのは、営業が嫌(いや)だから。
わがままで手ごわい決定権者やキーマンと相対するのと、自分の言いなりになるパソコンに向かうのでは、高学歴の若手ほど後者を選ぶ。
何せ「ストレス」がない。
営業活動でわざわざ資料をつくるかどうかの判断は、会社(社長・上司)がかならず下す。
私がそう述べただけで、取締役に目を白黒された。

この会社では、営業の“友”は顧客でなくパワポだった。
笑えない笑い話である。
トップなど経営幹部が重大な覚悟を決めないと、営業は立て直せない。
同社にはそうした気迫が感じられない。
業績の回復は絶対に不可能。

                       ◇

営業が「提案営業」と称して「提案書」をつくると、数字はどこまでも落ちていく。
資料作成に傾斜したら、お仕舞い。
そうした会社は「営業嫌い」が集まっている。
いや、「人間嫌い」かもしれない。
営業が顧客との踏み込んだ“接触”を避ける。
決定権者やキーマンに対して懐に飛び込まない、ひざを交えない。

私が知る範囲でも、提案営業が営業をダメにし、会社を潰した例は珍しくない。
同社も同じ道をたどるのでは・・・。

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