私は以前、グーグルマップで自分がかつて住んだ場所を調べていて、たまたまストリートビューを知った。
それは衝撃的だった。
わざわざ足を運ばなくても現地の様子がつかめる。

私が初めて下宿生活を送った小金井市東町2丁目(アパート)、前妻と同棲生活を送った杉並区松庵1丁目(アパート)、結婚後の武蔵野市関前1丁目(間借り)、家族が増えて転居した三鷹市上連雀9丁目(借家)と跡をたどった。
40年以上前の学生時代を含め、結婚を挟んだ前後の時代が手に取るように思い出され、懐かしさがこみ上げてきた。
すっかり時間を忘れてしまい、朝を迎えたのだった・・・。

私がグーグルマップストリートビューでもっとも驚いたのは、小金井市東町のアパートだった。
43年前にすでに古かった建物がほとんどそのまま残っていたのだ。
ここは大家の自宅に間借りするスタイルである。
私だけは屋根に後から増設された独立部屋であり、皆が用いる玄関の脇の狭い門扉を出入りした。
当時と同じで、錆びたままだった。
ブロック塀も汚れたまま・・・。

結局、杉並区松庵を除き、場所を特定できた。
「番」「号」の数字の入力を繰り返し、昔の住所も突き止められた。
これらの建物はいくらか手が入れられているかもしれないが、おそらく当時のものである。
三鷹市上連雀のマッチ箱みたいな借家は手さえ入れられていないようだ。

私は、自分の昔の写真を一枚も持っていない。
数え切れないくらい引っ越しを重ねるうちになくしてしまった。
卒業証書や卒業アルバム、通知表、表彰状、文集なども残っていない。
人生を回想する手がかりはまったくなし。
しかも、老いとともに記憶がどんどん薄れている。

グーグルマップストリートビューは単に昔の場所や住所を探るだけでなく、自分の人生をたどることができる。
思い出は、そのときに暮らした土地や建物と結びついているからだろう。

私はパソコンの画面を、自宅の写真として撮りたいとの衝動に駆られた。
それなりに鮮明である。
どの建物も古く、いつ取り壊されても不思議でない。
私にとり貴重な記録を保存しておきたかった。
が、いまは他人が住んでいる。
それはやるまい・・・。

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