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おやじは老いてから、迫りくるボケの恐怖と闘っていた。
陸軍中野学校の出身であり、プライドが高い。
姿勢は抜群、頭脳は明晰!
私が上京してから受け取った何通かの手紙は、それは立派な文章と内容だった。
ワープロのない時代で、手書きは修正や練磨ができない。

私が20代半ば、おやじが55歳を過ぎた頃から少しずつ頭が衰えてきた。
そして60歳に達した頃から明らかにボケが始まった。
自分でもそれをとても気にしていた。

私はその60歳が2年後に迫る。
現時点でボケの治療薬は開発されていないので、間に合わないだろう。

私は今秋、昭和大学横浜市北部病院で脳を診てもらう。
両親が痴呆なので、時間の問題なのだ。
それも恐らくアルツハイマー。
私はおやじにそっくりであり、そのおやじは亡くなったおふくろのことも、私と妹のことも何一つ分からない。
悲しい。

私は子どもが小さいうえ、老後の蓄えがないため、まだまだ働きつづけなければならない。
本来なら、毎年検査を受けたほうがよいらしい。

私が暮らす団地でも、頭の真っ白なお父さんが小学生の子どもと歩いている。
授業参観でも、おじいさんのようなお父さんを見かける。
晩婚化が進み、いまや40代での第一子は珍しくない。
私と同様、迫りくるボケの恐怖と闘っている父親は大勢いるのでないか。

Copyright ©2008 by Sou Wada