私が2010年カナダ・バンクーバー冬季五輪(第21回冬季オリンピック)でもっとも注目した選手は、フィギュアスケート女子、19歳の浅田真央(あさだ・まお)だった。
試合後の大泣きは痛ましく、私はテレビ画面をまともに見られなかった。
同時に、心を激しく揺さぶられた。
ここまで悔しがる人は世間に滅多にいないし、ここまで悔しがることは人生で滅多にない。
自分の限界を超えた練習を続けてきた証だろう。
還暦目前の私はそうした経験を一度として味わっていない。
いつも逃げてばかりいた。

浅田真央は、女王キム・ヨナに真正面から戦いを挑み、そして散った。
恥じる必要などさらさらない。
私は、その時点の実力を存分に発揮したと思う。
立派の一言。

それにしても銀メダルを獲得し、国民の多くから「かわいそう」「金メダルを取らせてやりたかった」と心底思われる選手というのは、ホント凄い。
可憐さに加えて人柄、それゆえの“人気”があったから…。
応援は熱狂的だった。

しかし、浅田真央は2014年ロシア・ソチ冬季五輪(第22回冬季オリンピック)で金メダルを目指すなら、己を突き放し、冷静かつ客観的に振り返らなくてなるまい。
すなわち、自己対峙、自己観照、自己検証である。

私はスポーツの素人であり、フィギュアスケートについて詳しくないが、浅田真央が資質や努力でキム・ヨナに劣っているとは思えない。
にもかかわらず、得点に驚くほどの“大差”がついた。
過酷な練習を積み重ねるだけでは埋められない開きだろう。
この現実を直視し、敗因を分析しなくてならない。

⇒2010年2月28日「浅田真央敗因分析、ソチ金へ新コーチ」はこちら。

ソチ五輪では4回転を跳ぶのかなどという話題が聞こえてくるが、瑣末の問題である。
採点方法の変更への迅速な対応が不可欠なのは言うまでもないが…。
なお、私は、バンクーバー五輪では浅田真央にしかできないトリプルアクセルの配点は低すぎたと思っている。

浅田真央は周囲から可愛がられる性格であり、つねに応援や支援、助言や指導が得られる。
2006年イタリア・トリノ五輪(第20回冬季オリンピック)金メダリストの荒川静香(あらかわ・しずか)を例に引くまでもなく、自らの意思で勝てる道を切り開いていかなければならない。
浅田真央は意志が弱いということはありえないが、頂点に立つために何が必要かを“己一人”で考え抜くべきだ。
だれにも相談しないこと。
そして、それに基づいて思い切った決断を下してほしい。

私は、浅田真央が居心地のよさと決別することが急務と考える。
孤独は人を強くする。
平たく言えば、地元を離れ、コーチを含めたスタッフを入れ替える。
浅田真央は23歳で迎えるソチ五輪では、人間的にも大きく成長していなくてなるまい。

キム・ヨナは出場し、浅田真央の前に立ちはだかる可能性が高い。
ほかにもライバルになりそうな若い選手が何人か出てこよう。
ソチ五輪も非常に厳しい戦いが予想される。

浅田真央が新コーチを招へいすれば金メダルを獲得できるというわけでない。
インターネット上に次期コーチの候補者の具体的な名前が挙がっている。
内外から売り込みもあるようだ。
確かに、優れたコーチは一定のレベルに選手を引き上げる。
しかし、そこから先に行けるかどうかは本人次第であろう。

ソチ金へ、浅田真央は何より精神的な自立が条件となる。
それを担保するためにも、万全の指導体制の構築に加え、より大きな生活環境の選択が重大となる。
むしろ、カギは環境では…。
私は、雑音としがらみの多い日本から飛び出すのがベストと考える。
そうでなくては、再び悔し涙を流しかねない。
私は浅田真央が流す“嬉し涙”が見たいのだ。

                      ◇◆◇

2010年カナダ・バンクーバー冬季五輪(第21回冬季オリンピック)およびフィギュアスケート女子・浅田真央などに関するブログは以下のとおり。

⇒2010年2月13日「バンクーバー五輪開幕、日本メダル予想」はこちら。

⇒2010年2月17日「男子フィギュアSP、高橋3位、織田4位」はこちら。

⇒2010年2月19日「高橋大輔、攻めか守りかメダル予想」はこちら。

⇒2010年2月19日「高橋大輔、4回転失敗も銅メダル!」はこちら。

⇒2010年2月21日「浅田真央、金メダル極秘練習全記録…NHKスペシャル」はこちら。

⇒2010年2月24日「浅田真央と荒川静香、金メダルの苦闘」はこちら。

⇒2010年2月28日「浅田真央敗因分析、ソチ金へ新コーチ」はこちら。

⇒2010年3月4日「あきれた浅田真央と高橋大輔の言葉!」はこちら。

⇒2010年3月26日「高橋大輔、日本男子初の金メダル!」はこちら。

⇒2010年3月27日「浅田真央vs長洲未来…ソチ五輪前哨戦?」はこちら。

⇒2010年3月28日「笑顔がこわばる浅田真央…フィギュア表彰台」はこちら。

⇒2010年3月30日「銀・浅田真央は金・荒川静香より凄い!」はこちら。

⇒2010年3月31日「金荒川静香が通った道…羽生結弦」はこちら。

⇒2010年4月1日「キム・ヨナ、圧巻のエキシビション!」はこちら。

⇒2010年4月10日「石川遼と浅田真央、あふれる悔し涙」はこちら。

⇒2010年4月16日「妹真央を兄大輔が気遣う春の園遊会」はこちら。

⇒2010年4月18日「キム・ヨナ、気になる去就に決着か」はこちら。

⇒2010年5月4日「アンジェラ・アキと浅田真央の失敗」はこちら。

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