全日本フィギュアスケート選手権が行われている。
浅田真央は2年ぶりに戻った舞台だったが、トレードマークの笑顔が消えていた。
SPのプログラムの難度を下げて臨んだが、それでもジャンプにミスが相次いだのは屈辱的である。
5位と出遅れた。

浅田真央は団体戦のジャパンオープンでは次世代が主体となった日本チームの優勝を姉さん格で引っ張った。
個人戦のGPシリーズ中国杯では優勝を果たし、自身もファンも世界のトップクラスでまだやれるとはしゃいだ。
しかし、GPシリーズNHK杯ではジャンプにミスが目立ち、3位に留まった。
そして、圧倒的な強さを誇ってきたGPファイナルはまさかの最下位(6位)に沈んだ。
とくにフリーのジャンプは散々だった。

浅田真央はインタビューで「やらなきゃというのが強すぎるのかもしれない」と唇をかみ締めた。
その傾向は前からあったが、ジャンプの出来にかなりの波がある。
復帰直後は新鮮な喜びを感じながら「無欲」で滑ることができた。
あまりにスムーズな成功に落とし穴があった。
勝てるという意識、やがて勝たなければという意識が「滑る喜び」に勝り、浅田真央からしなやかさを奪っていった。
実際、わくわくした気持ちが試合を重ねるごとに薄れていったという本音を漏らしている。

完璧主義者の浅田真央は高い理想を掲げ、必要以上に自分を追い詰めたがる。
得点源のジャンプでつまずくと気持ちを切り替えらず、最後まで引きずりやすい。
ルッツの踏み切り違反の判定も堪えた。
意識が過剰になり、体の動きを委縮させ、演技そのものを硬直化させている。

このところの浅田真央の演技から伝わってくるのは楽しさより「頑張り」、頑張りより「義務感」だった。
これでは見ているほうもつらい。
上辺の表現は何とか整えているものの、内側から溢れ出る歓喜が感じられない。
平たく言えば、表現者としての「魂」をどこかに置き忘れている。

私は、全日本選手権のSP後の「気持ちが下降気味」「いいイメージを持って試合に入れない」という言葉に驚いた。
浅田真央は自分をすっかり見失い、負の連鎖に陥っている。
目から光、表情から力が消えた。
(覇気に満ちた宮原知子と対照的である。)

ひどく不安定な精神状態で臨むフリーでの巻き返しは至難だろう。
しかし、浅田真央は絶望的な状況で底力を見せてきたのも事実である。
2014年ソチオリンピックのフリーは感動的だった。

私自身は、浅田真央が復帰シーズンで世界最高難度のプログラムを組む以上は長期計画で推し進めるつもりと理解している。
したがって、世界選手権への出場にこだわることもないと思う。

なお、私の見立てでは、浅田真央は「メッセージの発信」「本番へのメンタルの持っていき方」で失敗を繰り返してきた。
この2つが大舞台での主たる敗因でなかろうか。

◆書き加え(12月27日)

いま浅田真央の全日本選手権でのフリーを見た。
SPでは5位と出遅れた。
フリーでは初めの2つのジャンプのミスを引きずらず、最後まで粘って滑った。
3位に入れば上出来である。

私は、浅田真央は世界選手権に出ても出なくてもどちらでもいいと考えていた。
ただし、選手は大会が続くと疲労が溜まるが、大会が空くと勘が鈍ってしまう。
それ以前に、大会への出場は練習の目標とモチベーションになっている。
世界選手権に出られるに越したことはない。

女子シングルの日本代表は、余裕の1位の宮原知子、3位の浅田真央、4位の本郷理華の3選手で決まり?

2位の樋口新葉(ひぐち・わかば)は14歳で出場資格がない。
この子の2百点近い高得点は立派である。
昨年も3位に入っている。
本田真凜(ほんだ・まりん)など中学生に楽しみな選手がたくさんいる。

余談。
浅田真央は、自分は追い詰められてからが強いなどと言い聞かせないことだ。
追い詰められなくても強いほうがいい。
応援していて、はらはらする。

私はフリー後半の演技を見て、浅田真央はいまだに世界一の女子フィギュアスケーターだと確信した。
安易に新旧交代などという言葉を使うべきでない。

               ◇◆◇

浅田真央に関する最近のブログは以下のとおり。

⇒2015年12月26日「浅田真央、最高難度の無謀と動揺」はこちら。

⇒2015年12月12日「浅田真央評価…努力は報われない」はこちら。

⇒2015年11月29日「浅田真央はあんなもの」はこちら。

⇒2015年10月10日「浅田真央、GPシリーズ2015へ」はこちら。

⇒2015年10月9日「浅田真央、現役続行の条件」はこちら。

⇒2015年10月7日「浅田真央はピョンと跳び、チャンと降りる」はこちら。

⇒2015年10月5日「浅田真央、勝負師の宿命」はこちら。

⇒2015年10月3日「浅田真央が帰ってきた」はこちら。

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