NHK朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」。
水木しげる(村井茂。向井理)の壮絶な働き振りを見て、私が気づかされたのが締め切りの大切さだ。
それは絶対の外圧である。
水木しげるは意志が強いから、注文が来なくても自分の作品を残したかもしれない。
が、私はそうでない。

大手出版社は、売れっ子漫画家など著名な作家に担当者を張り付かせる。
作品(原稿)を確実に受け取るためだ。
私も仕事は殺到したがフリーランスのプランナーにすぎず、アシスタントに走って届けさせた。
たいてい滑り込みセーフ。
締め切りに遅れたら作品(企画)を受け取ってもらえず、報酬を支払ってもらえない。
クライアントと縁が切れ、仕事は二度と舞い込まない。

当時はつねに極限状態に置かれていた。
何が何でも間に合わせる!
研ぎ澄まされる神経、凄まじい集中力。
それは知的生産にとり最重要だった。
だから、仕事の効率と効果は断然高い。
とりわけ納品直前は忘我。
余計なことは一切考えられない。

つきあいの浅いクライアントが待ちくたびれ、仕事場にやってくることがときどきあった。
そして、戦場に紛れ込んだような困惑の表情を浮かべる。
村井藍子(長女)の担任教師は家庭訪問で水木しげるの仕事場に入り、立ちすくんだ。
こちらは切羽詰まっており、クライアントに構っていられない。
狭い空間は殺気立っている。
彼らは足を運んだことを後悔する。
そうした職場だったので、アシスタントがすぐにやめてしまった…。

私は40歳を過ぎてコンサルタントに商売替えし、締め切り仕事から解き放たれた。
しかし、本質的に怠け者なので、そうなると何一つ成し遂げられない。
いつしか、デッドラインに急き立てられながら頑張っていた時代を忘れてしまった。
ゲゲゲの女房は、私の原点を思い出させてくれたのだ。

私が携わる知的生産ではゴールがぼんやり見えるようになり、“胸突き八丁”が始まる。
とても苦しい期間が長く続く。
ここで踏ん張り切れないと、著作などを完成させられない。

言い訳はいろいろできる。
長年の体の酷使による体力の衰弱、体調の悪化。
また、老化の進行による頭の衰え(思考回路のほころび、思考速度の鈍化)。
さらに、視力、とくに効き目の右目の視力の低下。

が、これらのハンディを克服できなければ、私はこの先やっていけない。

案外、地獄の締め切りが人の能力を最大限に引き出し、立派な仕事をさせる。
その意味において、締め切りは天国である。
新聞小説から文学史上に残る名作が多く生まれているのも、それと無関係であるまい。

続きは、あさってのブログで…。

                      ◇◆◇

「ゲゲゲの女房」に関するブログは以下のとおり。

⇒2010年5月8日「ゲゲゲの女房…蘇る前妻との初デート」はこちら。

⇒2010年5月19日「松下奈緒、ゲゲゲの女房を好演する」はこちら。

⇒2010年5月20日「ゲゲゲの女房、小銭入れが空っぽの極貧」はこちら。

⇒2010年5月30日「ふすま一枚の地獄…ゲゲゲの女房」はこちら。

⇒2010年6月6日「ゲゲゲ原稿料を払ってもらえない」はこちら。

⇒2010年6月8日「松下奈緒と向井理が好演…ゲゲゲの女房」はこちら。

⇒2010年6月12日「松下奈緒 ゲゲゲの女房 人気シーン」はこちら。

⇒2010年6月14日「ゲゲゲゲラが出た…私は初校で校了」はこちら。

⇒2010年6月17日「ゲゲゲ、人気ラーメン店の行列が消えた」はこちら。

⇒2010年7月5日「向井理の好演、村井茂の名言…ゲゲゲの女房」はこちら。

⇒2010年7月15日「ゲゲゲ水木しげる、少年マガジンデビュー」はこちら。

⇒2010年7月17日「ゲゲゲ水木しげる、テレビくん児童漫画賞受賞」はこちら。

⇒2010年7月24日「水木プロダクション旗揚げ…ゲゲゲの女房」はこちら。

⇒2010年7月31日「ボチェッリが歌う吉岡聖恵・ありがとう」はこちら。

⇒2010年8月5日「水木プロダクション異様な活気…ゲゲゲの女房」はこちら。

⇒2010年8月9日「ゲゲゲの鬼太郎へ題名変更…主題歌もヒット」はこちら。

⇒2010年8月11日「水木プロダクション…アシスタント人件費」はこちら。

⇒2010年8月12日「いじめ…有名人の子の苦悩(ゲゲゲの女房)」はこちら。

⇒2010年8月14日「妖怪いそがし、家庭を顧みない水木しげる」はこちら。

◆書き加え1(8月17日)

余談…。
水木しげるの漫画に特徴的な「濃密な点描」。
背景にこだわり、精緻に仕上げる。
それを支えているのがアシスタントである。

朝ドラでは、おもに点々を担当して6年というベテランがユーモラスに描かれている。
株式会社水木プロダクションの設立前、水木しげるが脚光を浴びて仕事が増えた頃に手伝っていた3人のうちの1人である。
2人はだいぶ前に離れた。

彼は一番の古株にもかかわらず、水木プロダクションのアシスタントのまとめ役にはなっていないようだ。
こうした人(社員)も貴重である。

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