リオデジャネイロ五輪、レスリング女子フリースタイルの決勝。
53キロ級で五輪個人種目3連覇、33歳の吉田沙保里(よしだ・さおり)が米国のヘレン・マルーリスに1−4で敗れました。
五輪4連覇をかけて金メダルを目指しましたが、銀メダルに留まりました。
その場で泣き崩れ、うずくまったまま動けませんでした。
3連覇は55キロ級でしたが、リオ五輪から階級変更が行われました。

実は、前日に58キロ級で32歳の伊調馨(いちょう・かおり)が女子で初となる個人種目の五輪4連覇を成し遂げていました。
格闘技なのでその凄さが際立ちます。
私はとてもうれしかったのですが、同時にとても困りました。
それにより吉田沙保里に一段と大きなプレッシャーがかかるのでないかと案じました。

私自身はどちらかというと吉田沙保里よりも伊調馨のほうが好きです。
しかし、吉田沙保里が女子レスリング界で積みあげてきた実績、担ってきた役割、とくに果たしてきた貢献は絶大でした。
今日の興隆を中心になって築き、そして支えてきました。
文字どおり偉大な選手と断言できます。
だから、吉田沙保里にどうしても金メダルを獲らせてあげたかった・・・。
私が獲らせてあげられるわけでないのは承知ですが、そう強く念じていました。

吉田沙保里は年齢的な衰え、精神的な負担や疲労などで調子が上がっていないという噂(真偽は不明)も聞こえてきました。
私は試合が気になって仕方がありませんでしたが、もしも負けたらどうしよう、それどころか初戦敗退もありうるのでないかと嫌なことばかりが頭をよぎりました。
というわけで、私は怖くて吉田沙保里の試合を実況放送で見ることができませんでした。

午前5時半頃に結果がニュース速報で流れた後で映像を見ましたが、初戦から顔面が蒼白です。
まったく眠れなかったのか、それとも体調不良なのか・・・。

私の心配をよそに吉田沙保里は決勝まで1ポイントも与えず、順当に勝ちあがりました。
格の違いを見せつけたのは確かですが、相手を圧倒したわけでありません。
競技人生の総括になるかもしれない決勝では持ち前の爆発的な攻撃力を出せずに終わりました。
五輪4連覇に手が届くという緊張からなのか力みからなのか、スピードとキレも鈍っていました。

また、マルーリスは2015年世界選手権で55キロ級を制しており、たやすく勝てる相手でありません。
彼女は警告を与えられないために攻めの姿勢をつくりながら、守りを固めてポイントを奪われないようにしました。
とくに高速タックルの得意技を封じました。
吉田沙保里がじれて無理な攻めを仕かけてくるのを待っていたのでしょう。
対戦相手の徹底した研究と対策を踏まえ、巧みにポイントを奪いました。

スタンドでは吉田沙保里を姉のように慕う48キロ級優勝の登坂絵莉(とうさか・えり)が号泣していました。
選手としての成長は吉田沙保里なくしてありえず、二人揃って金メダルを獲ることを夢にしていました。
敗北を自分のことのように悔しがっています(この子はやさしい)。
あるいは、吉田沙保里の心中が痛いほど分かったのでしょうか。

勝者と敗者の対比は試合終了後のマットでも、表彰台でも、あまりに残酷でした。
涙が枯れるほど泣いたら、今後の身の振り方を考えてください。
お疲れさまでした。

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