食事が最大の売りだった名門旅館が「素泊まり歓迎」を打ち出しはじめた。
客が押し寄せているなら、こうしたプランは必要ない。
やはり不況が響いているのだろう。
“料理自慢”の放棄である。
名門旅館といえども経営がぎりぎりの状態になり、生き残るためにプライドを捨てた。

こうした旅館は1泊3〜5万円程(一人当たり)の価格設定がなされている。
夕食は豪華な会席コースがお決まりだ。
朝食もクオリティが高い。
むろん、部屋食。
ゆったりとくつろげるよう、客室は落ち着いていて立派なのが普通だ。

名門旅館がこの環境を素泊まりプランとして3分の1程度の値段で提供する。
食事はつかないが、豪華な雰囲気は堪能できよう。

大丈夫、観光地には特産物を用いた食事処があり、名店も含まれる。
そうしたグルメ情報がパソコンやケータイを通じて容易に手に入る。
散策ついでに足を運べば、自分が食べたい料理だけを選べる。
しかもトータル金額が断然安い。

私は何も名門旅館での食事を否定しているわけでない。
家族やカップル、仲間での部屋食は格別である。
日常とかけ離れた素晴らしい思い出になろう。

料理旅館は土地の特色を踏まえ、さらにそれぞれがメニューに工夫を凝らしている。
しかし、旅行好きの人は次第に飽きてくる。
「う〜ん、どこか似通っている…」。
また、フルコースの料理は食べ切れないことがあり、旅館にも世間にも申し訳なく思う。
昭和26年生まれの私などは食べ物を残すことに罪悪感を持つ。

素泊まり客の受け入れは、生活者の節約志向の延長にあるのは確かだが、それがすべてでない。
日本人のレジャーに関する意識が成熟して変化しているためだ。
旅行の大きな楽しみである食事についても“お仕着せ”を嫌いはじめている。

                       ◇

余談。
日本海に面した小都市、新潟県直江津市(現上越市)生まれの私は鮮魚が好きだ。
が、どこに行っても「刺身(お造り)」が出てくるので閉口する。
とくにマグロ。

その刺身が一番おいしいと悲しくなる。
ここは山合いの温泉地だぞ。

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